目指せエルフの里!
第六十三話
ユキマルのまさかの散財によって、ルクスはカヒューゼム国民からのバッシングを回避した。
しかし、これにて全て一件落着!!!...ともいかなかった。
結局、ユキマルがお金を出した後も、引く奴は引いたが、ごねるやつはごね続けたのだ。
それでも、最終的にはユキマルが勢いで勝ったのである。
ということで『魔王狂信派』、『西方奴隷商』、『英傑団』との全面対決から数日が経った。
「もお~!こんなのいちいちやってらんないわよ!!!」
フリエナがいつにもましてプンスカとご立腹だ。
それもそのはず、ユキマルたちは街の復旧作業を手伝っていたのだ。
瓦礫の撤去などの肉体労働系はユキマルとルクスがほぼほぼ担当した。
フリエナたちが担当したのは荷運びだ。
「おーもーいー!!」
両手で持ち上げようとしても、木の板材は持ち上がらない。
フリエナのか細い両椀には文字通り手に余るのだ。
「しょーがねーぇな。」
仕方なく手伝ってあげることにしたユキマル。
「ふん、たまには役に立つじゃない。」
相変わらず、ツンデレらしく返すフリエナなのだった。
・・・・
・・
「ユキマル!」
しばらくして休憩をしていると、ルクスが話しかけてきた。
「いやあ、大変だね。あれだけ派手に戦っちゃったからしょうがないのかもしれないけど....。」
「まあ、もとはといえば、俺がギルティアの攻撃を避けまくったせいだしな....。」
「はは、でも、俺も本当はもっと早くに止めに入るべきだった。まさか、あんなことになるとは予想もつかなかったよ。」
あんなこと、とはギルティアが暴走したことだ。
そしてギルティアの暴走の原因である『エリクサー』もまた気になるところだ。
「なあルクス、『西方奴隷商』ってなんなんだ?お前が乗り込んでつぶせるような相手じゃないのか?」
「う~ん、少し難しいね。」
ん?と疑問に思う。
ルクスほどの強者であれば、大抵の相手は敵にならないはずだ。
それなのに”難しい”とは一体....?
「実はこれまでに何度か『西方奴隷商』の攻略が行われたことがあるんだ。もちろん俺も参加した。でもいくらしっぽを掴んでも、掴めるのはしっぽのみ。多分、俺がうまく躱されてるんだよね。」
「なるほどな。」
つまり、ルクスは勝てないのではなく、そもそも戦わせてもらえないのだ。
「それほどまでに隠れるのがうまいのか....。」
「うん、でもそれだけじゃない。」
「?」
「向こうにはアモンがいる。」
「アモン?」
「そう、『西方奴隷商』のボスだよ。」
「ふ~ん。」
『西方奴隷商』のボス。
恐らくは相当な強者なのだろう。
しかし、それを理解してもなお、ルクスが負ける未来は見えない。
「まあまた何か情報を掴んだら、俺たちに教えてくれ!」
「もちろん!君たちにはまた恩ができちゃったからね!」
ふっと笑うユキマルなのだった。
・・・・
・・
一方そのころ、ちょうど話題に上がっていた『西方奴隷商』では、幹部二名とボスであるアモンがそろっていた。
場所はいつもの洋館の食堂だ。
「それで?報告を聞こうか。」
「はい。」
静かに席を立ちあがったのはエタニタだ。
「以前より依頼を受けていた例の少女と、白い鱗を持つドラゴンの件ですが、今回の戦いの中『魔王狂信派』より依頼のキャンセルが入りました。それにより捕獲は中断し、その場で引き上げてきたしだいでございます。」
「わかった。」
アモンの重々しい声が食堂に響く。
「しかし、収穫はございます。我々が幾度となく実験を繰り返し、開発してきた強制強化剤である『エリクサー』の、これまでにないほど有益なデータが取れました。これにより、『エリクサー』は試作品から、商品化へと移行できるかと思われます。」
「ご苦労。」
「へぇ、アレやっと使えるとこまでたどり着いたのかよ!」
乏しい語彙力で反応したのは、エタニタと同じく『西方奴隷商』の幹部であるオセウスだ。
「それでは引き続き、開発に着手しろ。」
「御心のままに。」
そう言って着席するエタニタ。
「それと、ユキマルとやらの情報が知りたい。」
思いもよらぬ質問の追撃に動揺するエタニタ。
「あ、あの青年のことですか?」
「そうだ。立場上やつの情報を知っておきたい。」
「お言葉ですがアモン様。あのような小物、アモン様の足元にも及びません。」
「それでもだ。」
アモンの意外な押しに困惑するエタニタ。
あの青年のなにが主の興味をこうも引いているのだろうか。
少しばかり考えてみたが、わからない。
「たしかに、あの青年は紛れもない強者でした。」
「お前にそこまで言わしめるやつなのか...?!」
バッと立ち上がり驚くオセウス。
しかし、間髪を入れずに続けるエタニタ。
「しかし彼はまだ、アモン様の領域に達していない。結局はその程度の人物です。」
「ほう....。」
少しばかり眉が上がるアモン。
それはほとんどの人が気づけないほどの表情の変化であった。
食堂が沈黙に包まれる。
「.....ひとまずはこの辺にしておこう。」
このアモンの一言によって、その日の話し合いは幕を閉じたのだった。
・・・・
・・
さて、時間は一週間たち、ある程度復興も進んだところで、ユキマルたちは『カヒューゼム教国』を発つことにした。
「悪いなルクス、見送りに来てもらって。」
「はは、これぐらいはさせてくれ。」
城壁の門の前で会話を交わす。
もうこの国とはお別れだ。
大変なことも多かったが、なんだかんだ言ってしばらく滞在してしまった。
少しは愛着が湧くというものである。
「あ、そういえば、『魔王狂信派』のことはもう気にしなくていいからね。いろいろと話しあって、ユキマルたちからは手を引いてもらったから。」
話し合った...ね。
ルクスの性格上穏便にことは済ませたのだろうが、それでも相手からしたらほとんど脅しと変わりないだろう。
まあ、『魔王狂信派』のことを心配しなくてよくなったのは素直に感謝だ。
「それじゃあ、また『ラーテルン共和国』の武闘大会でな!」
さよならの代わりに、次会う約束を告げる。
なんだかルクスとは長い付き合いになりそうだと、なんとなく感じたのだ。
「覚えてくれてたんだ。じゃあそこで会えるのを楽しみにしてるよ!」
ルクスはユキマルと初めて会った時のことを思い出した。
まさか、あの時ポロっと口にしたことを、覚えていてくれたとは思いもしなかったのである。
「ああ。」
こうして、ユキマルたちはしばらくの間ルクスと別れを告げたのであった。
・・・・
・・
「よし、じゃあいざこざも片付いたことだし、やっと目指せるな!」
『カヒューゼム教国』をでて、しばらく道を歩いたのちに、次の目的地の話をするユキマル。
「目指せるってどこに?」
先頭を歩いていたフリエナが立ち止まって、聞く。
どうやら本人に自覚は無いようだ。
「そりゃ、お前の家だろ。」
「あ。」
すっかり自身の旅の目的を忘れていたフリエナ。
そう、次の目的地は──
「帰るぞフリエナ!お前の故郷、エルフの里『フェアドラド』に.....!!!」
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次章、お楽しみに~!




