称号と肩書
「ほ、本当か?ふるピョンは俺のこと、すごいって思ってくれるのか?」
ちょっと驚いたような、それでいて不安そうな顔をサファルさんがしました。
……ああ、これって、周りの人に「プロゲーマーなんて仕事じゃない」とか「大人がゲームばっかりして」だのいろいろ馬鹿にするようなこと言われたんで、すごいって言われることに疑ってる?
「職業に貴賤はないって言葉は知りませんか?それに、肩書には意味がないと思っています」
大企業の専務だった父を尊敬できると思ったことは一度もなかった。休みの日に遊んでくれる平社員のお父さんの友達がうらやましかった。
婚約者はIT企業を立ち上げ、肩書は社長だったけれど……。
「肩書……には意味がない……、そうだな。S級冒険者といっても……ギルドランク1位といっても……」
あれ?なんか落ち込ませてしまった?私、何を間違えた?立派な肩書がサファルさんにはあるのか。
「サファルさん、人に迷惑かける仕事ですか?私、人に迷惑をかけたり、立場が上だからと高圧的な態度で人に接する人は、人間ランクが低いって思うんです。人としてダメです。留さんも社長……えーっと、有玖さんも、社長だとか会長だとか確かに職場では意味のある肩書かもしれませんが、ここでは、同じお客さんの一人です。小さな子供だって一人のお客さん。肩書なんて意味はないです」
サファルさんが目を丸くした。
それから大きな声で笑いだす。
「ははははっ。そうだ。確かに、俺は……ちょっと有名になったからって、どこか思い上がりがあったのかもしれないな。たしかに、客、ただの一人の客だ……」
「そうです。お客様ランキングでいえば、こうして気を使って手伝ってくださるサファルさんは、称号持ち以上ですよ」
にこっと笑う。
喫茶店だから。
息抜きをする場所。仕事を全部忘れろとは言わないけれど、せめて、ほっと一息つける場所になればいい……。そう思うから。
サファルさんがなんの仕事をしていて、そのランキングを維持することや称号を得ることがどれほどのプレッシャーになっているかとか、どれくらいプライドを持っていたり傷ついたりしているのかは分からないけれど……。
「はは、これくらいの手伝いで、称号持ちを出し抜けるとは。くふふっ、さすが伝説の錬金術師様の言うことは違う」
はい?
錬金術師?伝説?
いや、喫茶店の店長ですよ。オーナーですよ。経営者ですよ。喫茶店のおばさん……えーっと、お姉さんですよ。お姉さんでいいよね?
「しかし、これもまたずいぶん高価な物でしょう」
サファルさんが、シュガーポットを指さす。
「ああ、砂糖ですか?」
たしか、砂糖が高級な異世界設定だったっけ?サファルさん。これは、会話に付き合った方がいいのかな。
どうしようかと、首を傾げると、サファルさんがスプーンを持ち上げた。
「ここに埋め込まれた魔石……。模様が刻まれた魔石など初めて見ました」
と、サファルさんがスプーンの頭についてる七宝焼きを見つめる。
「あ、それ私が作ったんですよ」
と、魔石設定すっ飛ばしてつい答えてしまった。
「七宝焼きっていうんですけど、七宝焼知りません?」
サファルさんが口をあんぐりしてスプーンを凝視している。
いつもありがとうございます。
今日の後書きは、何がいいかな。
そう、ツイッターで過去写真眺めていて思ったこと。
「観光地はいつまでも存在するわけじゃない」
いや、観光地だけじゃないけど。
けっこう写真とった場所で、今はもう存在しないところ多くて、あああってなった。
例えば、昔いった、岐阜県瑞浪市、旧大湫小学校。
2018年に取り壊されたようです。何かのイベント、展示会か販売会かあったときに、展示会や販売会の内容には興味がなかったんですが、会場となっている旧大湫小学校が見てみたくて行きました。
木造の古い校舎。
なんと、明治の建物。
明治、大正、昭和、平成と……4つの時代に小学校として使われてきた建物。
もう、それだけで見てみたくないですか?
明治っていっても、明治後半じゃないんですよ。明治6年!
明治維新で活躍した人たちがまだ生きてた時代ですよ。
っていうか、江戸時代生まれの人が建てた校舎!平成まで使ってたんですよ!で、使ってた人は令和の時代を生きてるんですよ!
2018年老朽化で惜しまれながら取り壊されたわけですが……。
観光地や常設の観光施設じゃないって場所。今でこそSNSを通じて知る機会も多いと思うんですけど、やっぱり知らないまま、知っていたら行きたかったのに、もうすでに行けなくなってから後悔するみたいなこともあるんで。
皆さんも、派手な旅行じゃなくて、本当にちょっとした観光地として紹介できるほどでもない場所だったとしても、ふらりと行ってみると楽しいですよ。写真いっぱいとって残しておくのおすすめ。
というわけで、小さなおすすめ観光スポットとかも教えてくださいね!
うん、今はもうない喫茶店の話もそのうちしましょうか……




