31 問題です。なんか問題しかしない気がするのは何故でしょうか?
「ううう……痛みは無いのに斬られた感触がありありと残ってる……気持ち悪い……」
「別にいいじゃない。次の試合にも問題なく出られるらしいし」
「出られるらしいし。じゃねえよ!それ出られない決まりだったらどうするつもりだったんだよ!てか実際そうだったからってあんな事していい理由にはならないよな!?」
「そんなの捕まったあなたが悪いんじゃない」
「う……」
凜にきっぱり言われて言葉を失う。確かにそうだ。人質にされたのはあくまで俺のミスで、第一にこの大会を勝ち進むのが目的なわけだから、凜がやったことは少なくとも間違いではないだろう。
だが……だが……
頼むから他の方法を使って欲しかった。あの後全身を鋭く走る痛みはこの会場に転送されるまで続き、その間俺はずっと身悶えていたのだから。
「椎名、お前からも何か凜に言ってくれよぉ」
「確かに軽減されているとはいっても、相当蘭次君は痛かったんだろうし、もうちょっと他の方法を探ってみてもよかったかもね」
「おおそうだ言ってやれ椎名!……待って、俺が人質に取られているとき先に相手撃ったの椎名じゃなかった?」
そうだ、そもそも椎名が敵を撃たなかったら、凜もあんなことはしなかったんじゃ……?
「まあ、あれは撃っても蘭次君に危害が加わることは無かったと思うけどね」
「え?どゆこと?」
「さっきも言ったけど、戦闘になれてなさそうな敵だったから、自分に危機が迫らない限り、人質の蘭次君の事は攻撃しないと思ったんだ」
「は、はぁ……。ってか椎名、お前が戦闘慣れしすぎなだけじゃないか?」
俺なんかは目の前のことで一杯だが、椎名はいつも先を見据えてるような気がする。何度も死地をくぐり抜けて来たニオイがするような……そんな感じの雰囲気が。
「慣れてなんかないよ。もし僕と蘭次君が戦ったら、間違いなく僕の負けだろうからね」
「んなわけないだろ。お前が俺に負けるわけ――」
「負けるよ。力の差がありすぎる」
――ゾクッと、そんな感覚が背中を通っていった。今、『力の差がありすぎる』と椎名は言ったが、その後に『まともに戦ったらの話だけどね』って、そう言ってくるような予感がしたからだ。本能が伝えてくる。俺はこいつを敵に回してはいけない。
「そんな事より、蘭次は何で人質にされたのよ」
凜の言葉が入ってきたことに安心した。次の言葉を聞かずに済んだ。
「え?い、いやそれは……な、何でだったかな~。確か、不意に後ろから攻撃を仕掛けられてしまったんだよな。うん!そうだったに違いない!」
「――嘘くさいわね。どうせあんたの事だから何かに躓いたりしたんでしょ」
「ふぁぁぁ!!!??」
「図星みたいね」
「そ、そんなわけないだろ!俺がバカみたいなこと――」
「わかったから、次の試合はマヌケを晒さないでよ」
クソォォォ!!凜と言い合いになるといつもこうだ!凜に言いたいことを散々言われた挙句俺は何も言い返せないであしらわれる。凜に口で勝てる気がしない……戦っても勝てないだろうけど。
「ほら、もうすぐ三回戦が始まる。それが終わったら準決勝よ」
おお、もうそんな所まで来てるのか、なら頑張らないとな。
勇気をまた振り絞ろうとした所で場内にアナウンスが流れる。
『ピンポンパンポーン……三回戦の第四試合目ですが、ワイルドボックスチームの棄権により、チーム・タクティクスの不戦勝となります!』
――へ?
おーい、主人公頑張れー




