32 犯人は……あなたです!
『――チーム・タクティクスの不戦勝となります!』
「――へ?」
「――え?」
俺と同じような声を出したのは……魔崎か。てかいつの間にいたんだ。
「不戦勝……棄権……まさか!」
魔崎は何か焦ったような顔で自分の腕時計をいじり始めた。
俺達と同じような時計の針を魔崎は『10』の位置に揃えて何かのボタンを押した。
そして大きく息を吸い……
「す~み~か~さーーーーん!!!!!今度は何をやらかしたんですか!?」
大声で腕時計に怒鳴りつけた。
すみかさん……?ああ、中谷さんの事か。しかし、『やらかした』とは……?
「何だ、やかましい」
うわっ、腕時計が喋った!
「どういうことですか!今回の棄権!!」
どうやら、あの時計は小型電話機みたいになってんだな。んな洒落たデザインにしなくてもよかろうに。
「どうもなにも、魔崎たちと対戦するチームが、メンバーの一人が怪我したから棄権させてほしいって言ってきたからだ」
ふーん。棄権の理由は怪我だったのか。ん?待て、俺は凜に斬られたのに、こっちの会場に戻ってきたら傷は無くなってたぞ?それで怪我っておかしくないか?
「待ってくださいよ!対戦中の傷は戻れば治るのに、怪我っておかしいでしょ!」
魔崎も俺と同じような感想を抱いたのか、そんなことを言っていた。
「落ち着け、傷は傷でもこの会場内で出来た傷らしい。詳細は不明だが、後ろから次々ハサミなどの刃物を投げつけ、犯人は逃走したらしい」
「逃走……それって、まずいんじゃないんですか!?」
刃物を投げつけ逃走って、それこそ通り魔か何かじゃないか?なら、放っておくのは確かによくないな……
「安心しろ、こっちで監視カメラを確認しておいた。犯人は既に拘束している」
いや、何かおかしいような……ハサミなどの刃物を投げて、すぐに逃げた。ついさっきそんな奴を見たような……
――いや、まさかな。
いやいや、確かに投げつけてたのはそうだったけど、そんな偶然が有り得るわけ……。
「そうですか……私、また澄香さんがまたやらかしたのかと……」
「そんなわけないだろう。ホラ、仕事に戻れ」
まさか……犯人って……
ハサミなどを投げつけ、走り回ってた奴……。
(――中谷さんじゃねえかあああ!!!!!)
「いや、そんなことは無いよな。アハハハハハハッハッハッハッ……」
「何よいきなり笑いだして。傷の影響が脳にまで来ちゃった?」
「何でもないよ凜!ほら!気にしない!」
「はあ?一体どうしたのよ……」
『ピンポンパンポーン……間もなく、準決勝が始まります。チーム・タクティクス、犬。二つのチームは、転送装置に行ってください!』
「ほら!行くよ凜、椎名!!」
「わ、わかったから押さないでよ」
「もうすっかり元気だね蘭次君」
忘れよう。忘れよう。
何も無かったのさ。そう、何も……




