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TS少女の異世界のんびりクラフト日記  作者: 月夜るな
3章:金属の時代(メタル・エイジ)

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028『”衣”食住』

「ふぅ……」


 地下採掘場から戻った私は、リビングの椅子に深く腰掛けた。

 銃弾が作れるようになり、鉄へのモチベーションは爆上がり中だが、今日はあえて休日にしようと思う。

 根詰めすぎは良くない。それに、地下ばかり見ていると地上の変化に疎くなる。


「小麦畑の収穫もしなきゃいけないし、綿コットンもだいぶ溜まってるんだよな」


 やはり、生活基盤というものはガッチガチに固めるべきだ。

 これ以上の水準――電化製品や自動化ライン――を求めるなら鉄が必要だが、その前にやるべきことがある。


「銀が手に入ったんだ。アレを作らないと」


 私はインベントリから銀のインゴットを取り出した。

 銀といえば、装飾品や硬貨のイメージが強いが、工業的には「鏡」の材料として重要だ。ガラスの裏に銀メッキを施すことで、鮮明な反射面が作れる。


 今までは手鏡や水桶の水面でしか確認できなかったが、ちゃんとした鏡で自分の健康状態(と、ビジュアル)をチェックするのは大事だ。

 クラフトテーブルを操作し、銅のフレームに銀加工のガラスをはめ込んだ『銅のアンティーク姿見』を作成する。


 カシャン、という音と共に、私の背丈よりも大きな立派な鏡が現れた。


◇◇◇


「……うわぁ」


 設置した鏡の前に立ち、私は思わず声を漏らした。

 そこに映っていたのは、ファンタジー映画から飛び出してきたような美少女だった。

 月明かりのような白銀の髪、宝石のようなオッドアイ、透き通るような白い肌。


「改めて見ると、とんでもない美少女だよなぁ、私」


 中身がアラサー手前のゲーマー男だとは誰も信じないだろう。ポーズを取ってみる。鏡の中の美少女も同じ動きをする。

 うん、可愛い。客観的に見て素材が良すぎる。


 だが、その完璧な容姿に対して、身につけている物が残念すぎた。


「……服、ボロボロだな」


 最初から着ていた麻のチュニックと、予備のもう一着。この二着をひたすら着回して、森を開拓し、地下を掘り進めてきたのだ。

 裾はほつれ、泥汚れが染み付き、全体的に薄汚れている。

 せっかくの美少女アバターが台無しだ。


「流石に生活が安定してきたとはいえ、衣食住の”衣”を疎かにし過ぎたかもしれない」


 今は畑で収穫したコットン(綿花)が倉庫に溢れている。これを使えば、まともな服が作れるはずだ。


 私は鏡から離れ、クラフトテーブルの【衣服・防具】カテゴリーを開いた。


「おお、あるある。シャツ、ズボン、スカート、ワンピース……」


 流石は万能テーブルくん。型紙なしで、素材を入れるだけで服が作れるとは。

 まずは何を作るか?


「まあ、これだよな……」


 男の尊厳はあるが、これがないとダメな気がする。

 コットン製の下着セット。正直、今の今まで気にしてなかったが……ぺったんこだしな。美少女とはいえぺったんこ。

 あったほうがいいだろうと思い、作ることにした。


「結構いい感じだな」


 自分の身体の裸は見てももう何も思わない。姿見の前で下着を付けてみれば、中々いい感じの肌触りだ。


「よし、心機一転……というのもなんか違うな」


 さて、次はアウター(外着)だ。

 中身が男である以上、機能的なシャツとズボンでいいと思っていたのだが……。


「……うーん」


 プレビュー画面で試着してみると、どうにも地味だ。

 いや、悪くはないのだが、鏡で見たあの美少女ボディには、もう少し華やかなものが似合う気がする。


「この身体だと、スカートの方が動きやすいのか?」


 股関節の可動域とか、通気性とかを考えると、スカートやワンピースの方が理にかなっている気もする。

 私は葛藤の末、いくつかのパターンを作ってみることにした。


 一つは、丈夫な厚手コットンの『作業用つなぎ(茶色)』。

 もう一つは、動きやすさを重視した『キュロットスカート』と『白いブラウス』。

 そして魔が差して作った、フリルのついた『エプロンドレス』。


 鏡の前でファッションショーを開催する。

 つなぎは安心感があるが、今の私には少しブカブカだ。エプロンドレスは……似合いすぎてて直視できない。誰かに見られたら爆発する。


「結局、これに落ち着くか」


 選んだのは、キュロットスカートとブラウスのセットだ。

 見た目はスカートっぽいが、構造はズボンなので下着が見える心配もないし、動きやすい。それに、冒険者っぽくて格好いい。


「どうだポチ、似合うか?」

「わんっ! わふぅ!」


 ポチが尻尾をブンブン振りながら、私の周りをくるくると回る。どうやらお気に召したようだ。


「よしよし。じゃあ、明日はこの新しい服で地下へ行くぞ」


 新しい装備(服)に身を包み、私は鏡の中の自分に向かってニッと笑いかけた。

 たまにはこういう、のんびりとした休日も悪くない。

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