018『金属の発見』
「……またこいつかぁ」
「わふ?」
「いや、このフォレストボアだよ。完全に味を占めて突っ込んできてるな」
拠点のフェンス前で、デジャヴを感じる光景を見ながら俺は呟いた。
棘付き石フェンスには、先日と同じ魔物『フォレストボア』が突き刺さって絶命していた。前回より少し小柄だが、間違いない。
どうやらウチの拠点の防衛力が高すぎて、勝手に食材が飛び込んでくるボーナスステージ状態になっているらしい。
「よしよし、ポチのご飯が増えたな」
「……くぅ~ん(ジト目)」
俺の足元で、傷が癒えた銀色の狼が「その名前、本気か?」と言いたげな顔で見上げてくる。
ちなみに、この子の名前は『ポチ』に決定した。
最初は『タマ』と呼んでみたのだが、牙を剥いて威嚇された。どうやらオスっぽい名前は嫌らしい。
そこで「お前、メスか?」と聞いたら肯定するように尻尾を振ったので、女の子らしい可愛い名前を考えた結果……俺の脳内辞書から出てきたのが『ポチ』だったのだ。
まあ、本人は不服そうだが、差し出した干し肉には勝てなかったようで、渋々受け入れている。
「文句言うなよポチ。俺のネーミングセンスは万能ノコギリくんの時点で察してくれ」
「わふっ」
俺は手慣れた手つきでボアを回収し、クラフトテーブルで解体処理を行った。
「さて。俺はちょっと地下で仕事してくるから、ポチは庭で留守番だ。畑を荒らす鳥が来たら追い払ってくれよ」
「わん!」
賢く返事をしたポチの頭をひと撫でしてから、俺は地下採掘場へと向かった。
◇◇◇
地下深く、採掘場の第4区画。
ポチの世話や地上の整備で中断していた採掘作業を再開する。
「ほいほいほいっと」
万能スコップくんを振るい、カステラを切り分けるような軽さで岩盤を掘り進めていく。
第3区画までは石と土ばかりの「ハズレ」だった。そろそろ何かしらの「アタリ」が出てくれないと、モチベーションが維持できない。
「ん?」
無心で掘り進めていた俺の手が止まる。
灰色の岩肌の中に、キラリと鈍く光る赤茶色の鉱脈が混じっていた。
「……これ、銅鉱石か?」
慌てて掘り出し、ポーチのインベントリを確認する。表示されたアイテム名は間違いなく【銅鉱石】だった。
「よっしゃあ! ついに第一金属発見!!」
ガッツポーズをする。
欲を言えば鉄が欲しかったが、それでもようやく石器時代を脱出できる素材が手に入ったのだ。これは大きな進歩だ。
「ええと、流石に鉱石のままじゃ使えないよな」
ポーチに入れても、不純物が取り除かれて純度の高い鉱石になるだけで、インゴット(延べ棒)にはならないらしい。
俺は鉱石を抱えて地上に戻り、クラフトテーブルの前へ立った。
「さて、銅鉱石を置いてみるか」
なれたようにクラフトテーブルの画面に銅鉱石が表示される。そこから作れるものは”銅インゴット”である。
いや本当にクラフトテーブルくんは便利すぎるな……面倒な工程を全てすっ飛ばして作れるし。本来なら錬成というか製錬の必要はあるはずのインゴットも作れちゃうわけだし。
まあ、便利なので何も言わないが。
「おお……美しい……」
初めて見る金属の輝きにうっとりする。
さて、銅といえば鉄に比べて強度は劣る。剣や鎧にするには少し頼りないが、加工のしやすさと熱伝導率はピカイチだ。
「使い道としては……」
各道具の銅へのアップグレードだな。
銅があれば『バケツ』や『鍋』もアップグレードできる。
今は木のバケツだから熱湯や油は運べないが、銅のバケツなら可能だ。銅のフライパンを作れば、石板焼き止まりだった料理も、本格的な炒め物や煮込み料理に進化する。
油をどう取るかはまた別だが。
まあ、それに別に熱湯は木のバケツでも運べる。ただし、バケツのまま加熱は出来ないから別の容器で加熱してから入れるという一手間が必要だ。
「あと、この先を見越すなら……」
俺の視線が【建築】カテゴリーに止まる。
そこには『銅のパイプ』や『蛇口』といった配管パーツが並んでいた。
「これだ。これがあれば、川から引いた水を家の中に引き込んで、キッチンやお風呂に直結できる!」
夢の水道ライフへの第一歩だ。
まだまだ銅は掘れるだろうから、俺は早速スコップを手に再度採掘場へと駆けていくのだった。




