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5.現場

サマリはジンの現場に到着すると、道の舗装がほとんど終わっている様子に少し安心した。


周囲で働いている人々に挨拶を交わしながら、彼女は目を細めて現場の様子を見渡してジンの姿を探しました。



「予算が足りないと言ってたけど、この調子なら大丈夫そうに見えるわね。でも、詳しい話をジンから聞かないと。」 



現場のあちこちで作業が進んでおり、労働者たちは汗を流しながら黙々と仕事をしていた。


サマリは彼らに感謝の言葉をかけつつ、奥の方で指示を出しているジンを見つけました。



「ジン、お疲れ様。ちょっと話せる?」



ジンは振り返りサマリの姿を確認すると一瞬驚いた表情を見せた。


「サマリ様、お疲れ様です。もちろん、少し時間をいただけますか?」


サマリはうなずき、ジンと一緒に少し離れた場所へ移動しました。二人が立ち止まるとサマリは真剣な表情で話を切り出しました。



「予算が足りないって聞いたけど、この調子なら問題なさそうに見えるわ。具体的に何が起こっているのか教えてくれる?」


ジンは少し困ったような表情を浮かべ、説明を始めました。


「はい、実は材料費が予想以上にかかってしまって…特に舗装材の価格が上がっているんです。それに、労働者の数も増やさないと作業が間に合わなくて…」



サマリは眉をひそめながら聞いていましたが、すぐに思案にふけりました。


「なるほどね。でも、これならまだ何とかできそうね。もう少し詳しい見積もりを見せてくれる?」



サマリはジンが見せた見積もりを見て、思わず声を荒げた。



「この値段、どういうこと?アルヴァニカからの購入だけど、これじゃあ足元を見られてるようにしか思えないわ。戦争でもするつもりで軍資金のために税を上げたのかしら?どちらにせよ、文句を言いに行かなきゃならないわね。」


ジンは困ったような表情で頷いてサマリの言葉に応えた。


「私も一度掛け合ったんですが、聞き入れてもらえなかったんです。」


サマリは腕を組んで少し考え込んだ。


「それなら、アルヴァニカからの購入を三分の一にして、他の街から材料を調達することも考えないといけないわね。ただ、アルヴァニカとの付き合いを完全に切るわけにはいかないし…そうなると送料がかさむのも問題ね。」



ジンは黙ってサマリの考えを聞いていましたが神妙な面持ちで口を開いた。


「もう少し交渉の余地があるかもしれません。アルヴァニカの人たちも、こちらとの関係を完全に切りたくはないはずです。もしかしたら、直接話をすれば、もう少し柔軟に対応してくれるかもしれません。」



「そうね、確かに直接話をすれば何か変わるかもしれないわ。まずは、アルヴァニカの商人たちともう一度話をしてみるわ。それで解決しなければ、次の手を考えましょう。」


ジンは安心したように微笑みました。


「ありがとうございます、サマリ様。それが最善かと。私もできる限りのサポートをします。」


サマリは深呼吸をしてから、もう一度ジンに向き直?。


「じゃあ、ジン。材料の再見積もりと他の街からの調達ルートの確認をお願いするわ。私はアルヴァニカの商人たちと話をしてくる。」


ジンはうなずき、手元のメモに書き込みました。


「了解しました、サマリ様。すぐに手配します。」


サマリは一息つき、再び現場を見渡しました。


「これで少しでも改善すればいいんだけどね…。」



サマリはカリの情報について考えながら歩いていた。給仕たちの持ってきた情報の少なさに呆れつつ、顔がわかれば少しは助かるのにと思いながら、心当たりのある人物を思案した。


そして、ふと思い浮かんだのは情報屋だった。



彼はあることないことを言ったり、信用に欠けるが、それでも情報を得るためには彼に頼るしかない。

仕方なく彼のもとへ向かうことにした。



市場の裏通りに足を運ぶと、薄暗い路地に情報屋の姿が見えた。彼は金さえ払えば何でも話してくれるが、有益な情報を得るためにはそれなりの額が必要だろう。



「よ、サマリさん。今日はどんな風の吹き回しだい?」


情報屋はにやりと笑った。



「カリという名前の人物を探しているの。給仕たちから聞いたけど、あまり情報がなくてね。何か知ってる?」



情報屋はしばらく考え込むような素振りを見せ、やがて口を開いた。


「カリね…。でも、その名前だけじゃ何とも言えないな。もっと詳しい情報が欲しいところだ。見た目や行動パターン、何でもいいから。」



サマリは少し考えた。


「見た目や行動は聞いてないけど、失踪する前の日記には『お母さんに会える』と書かれていた。そのお母さんに会うためにここに来てると思うんだけど」



サマリはカバンから日記を取り出して情報屋に手渡した。


「ふむ…それだけか。まあ、それでも手がかりにはなるかもしれない。でも、知っての通り、情報を掘り下げるにはそれなりの金がいる。」



「金がないと有益な情報は得られないってわけね。」



「まあ、そういうことさ。追加料金を払ってくれれば、もう少し詳しい情報を探してくるよ。」



サマリはため息をつきながら言った。


「本当に商売上手ね。でも、仕方ない。頼むわ。」



「了解。すぐに調べてくるから、また後で来てくれ。」




「さて」

サマリは呟きながら、情報屋を見送りその場を後にした。裏通りを抜けて表通りに出ると人混みが広がっている。サマリはその中を掻き分けるように進み、アルヴァニカに向かうための足を探すべく馬車の予約をすることにした。


広場に向かうと馬車の手配をする場所がある。予約窓口には数人の人が並んでおり、サマリもその列に加わった。少しの間待った後、窓口の順番が来た。


「アルヴァニカ行きの馬車を予約したいんだけど、明日の最短で出発できるのはいつ?」


係員は手元の帳簿を確認しながら答えた。


「アルヴァニカ行きですか?最短で出発できるのは明日の朝になりますね」 



「それでいいわ。明日の朝の便でお願い。」



係員は予約手続きを進めながら、サマリに尋ねた。「お名前と人数をお願いします。」



「サマリ。人数は一人。」



「はい、サマリ様、一名様ですね。では、明日の朝にこちらの広場にお越しください。出発は早朝の鐘が鳴り終わった後になりますので、遅れないようにお願いします。」



「ありがとう。じゃあ、明日の朝に。」



窓口を離れたサマリは、予約票を確認しながら次の行動を考えた。


アルヴァニカに向かう準備は整ったが、まだ時間があった。今のうちにできることを片付けておこうと、サマリは自宅に戻ることにした。


帰り道、彼女は町の様子を見ながら歩いた。市場の喧騒、人々の活気、そして港町特有の潮風が今日は心地よかった。




サマリは頭を振り、次々と浮かんでくるやらなければならないことを整理しようとした。港の広場で予定されている大漁祭の準備状況も確認しておく必要がある。孤児院の寄付金の書類もまだ未処理だし、考え始めたらきりがないように思えた。


彼女は重いため息をつき、手持ちの書類を確認した。祭の書類、寄付金の書類、そして次の事業に関する資料が山のように積まれている。サマリは書類を抱え、役場へ向かうことにした。


役場に到着すると、サマリは受付に名前を告げた。


役場の職員は彼女を見て一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに慣れた様子で彼女を案内した。


「サマリ様、いつもご苦労様です。こちらへどうぞ。」


サマリは職員に従って会議室へと向かった。

デスクには広げられた書類が積まれており、彼女は一つ一つ確認していった。大漁祭の準備状況についての報告書、孤児院への寄付金手続きの進捗、そして新たな事業計画についての資料が含まれていた。



「大漁祭の準備状況はどうなの?こんな簡単な仕事、まさか手こずってるなんて言わないわよね?」


サマリは報告書を手渡された担当者に鋭い視線を送る。



担当者が報告書を手渡し、サマリはそれに目を通す。


「まあ、これくらいはできるわよね。でも、船の模型が完成間近だって?いいわね。しっかり最後まで気を抜かないこと。あんたたち、ちゃんとできるんだから。」



次に、孤児院への寄付金手続きの書類を確認する。


「この寄付金の手続き、もう少し詳細な情報が必要よ。何してるの?孤児院の運営状況や今後の計画についての報告書、すぐに出して。まったく…まあ、手続きを進めるのは大変なのは分かるけど、これも重要な仕事だからね。」


職員が「はい、すぐに用意いたします」と答えると、サマリは少し和らいだ表情で続ける。


「ええ、それでいいわ。あなたたちも頑張ってるんだから、協力してやりましょう。」



新たな事業計画について話が移る。


「この新しい市場の建設計画だけど、予算の見積もりが甘すぎるわ。こんな数字じゃ話にならない。もう一度、詳細な見積もりを出しなさい。時間を無駄にしないで。」


担当者が「わかりました、すぐに見直します」と答えると、サマリは少し微笑みを見せる。


「そう、それでいいの。しっかりやれば、あなたたちの努力は必ず実を結ぶわ。」



「港の拡張計画についても、環境への影響をもっと考慮しなさい。漁業への影響や海洋生物の保護についても対策を講じること。これもあなたたちの仕事だからね。」


「その通りです。専門家と協議し、環境影響評価を徹底的に行います」


「それでいいわ。ちゃんとやれば、町のみんなが喜ぶわ。あなたたちも自信を持ちなさい。」



すべての指示を出し終えると、サマリは深く息をつく。


「これでひとまず片付いたわね。でも、まだまだやることは山積みだわ。あんたたちも気を引き締めて、頑張りなさいよ。」



サマリは役場を出る前に、重要書類を提出するのをふと思い出した。役場の偉いさんであるエドワードのドアをコンコンと叩き、名を名乗る。


「エドワード、私よ、サマリ。ちょっといい?」


「おお、サマリか。入ってくれ。」



サマリは砕けた口調で話しながら部屋に入る。


「さて、これが私が確認のサインをした様々な事業や施設の資料よ。」

彼女は書類を手渡す。


エドワードは書類を受け取り、目を通し始めた。


「なるほど、これで一通りの事業が進められるな。」



「それと、作業現場の状況だけど、順調に進んでるわ。でも、アルヴァニカからの材料購入の高騰が問題ね。どうやら足元を見られてるみたい。」


エドワードは眉をひそめる。

「アルヴァニカか。やつらは商売上手だからな。価格の高騰が続くようなら、他の供給先も探さなければならないかもしれない。」



サマリはうなずきながら続ける。

「別の街から材料を調達するとなると、送料がかかるし、関係を切るわけにはいかないのよね。でも、なんとかしないとこのままじゃ予算が持たないわ。」



エドワードはしばらく考え込んだ。

「他の街と交渉する際には、アルヴァニカとの取引量を一部減らすことで、価格の引き下げを交渉材料にするのも手かもしれない。それに、地元の資源をもっと活用することも考えてみてはどうだろうか?」



「地元の資源か…。それも一つの方法ね。でも、品質を確保できるかが問題よ。」



「そうだな。品質を保つためには、地元の職人や業者との協力が必要だ。彼らと密に連携を取って、必要な材料を確保するための計画を立てよう。」



サマリはいつも通りのペースで話しながら、ふと思ったことを口に出した。


「最近、自分がこんなに多くの役割を担っているのが不思議でならないわ。最初はただの小さな仕事だったのに、いつの間にか町の運営に深く関わるようになってる。」


「サマリ、この町は君で回っているんだよ。君の努力と献身がなければ、ここまでうまくいかなかっただろう。皆、君に感謝しているよ。」



サマリはため息をつきながら笑う。

「まあ、ありがとう、エドワード。そう言ってもらえると少しは救われるわ。でも、今はまず、この山積みの仕事を片付けないと。」


「その通りだ。君の力が必要だ。さあ、次は何から手をつける?」


サマリは書類を手に取り、考え込む。

「まずは大漁祭の準備状況をもう一度確認してから他の件を進めるわ。もちろんアルヴァニカの件もね。」


「了解だ、サマリ。君がしっかりしてくれているおかげで、私たちも安心して仕事ができる。」




部屋を出ようとしたところでサマリは足を止めた。「そうだ、エドワード、カリについて何か知ってる?」



エドワードは眉をひそめた。「カリ?ああ、聞いたことないな。何かあったのか?」



「カリという使用人が失踪したの。フューチャー家からの依頼で探してるんだけど、手がかりが少なくてね。」



「わかった。こちらでも情報を集めてみるよ。何かわかったらすぐに知らせる。」


「ありがとう、助かるわ。」


サマリは軽く頭を下げて部屋を後にした。


サマリは役場を出て、港広場に向かった。



大漁祭の準備の様子を見に行くためだ。広場には多くの人々が忙しそうに動き回り、設営作業が進んでいた。


遠目で設営の様子を見つつ、大きな船の模型が目に入った。



その時、背後から声をかけられた。

「サマリさん、ちょっといいですか?」



振り返ると、漁港会長の補佐役が立っていた。


「実は当日の祭りの挨拶をお願いしたいのですが、会長が歳のせいで少し体調が優れなくて…」



「仕方ないわね。わかった、私がやるわ。」


補佐役はほっとした様子で頭を下げる。

「ありがとうございます、サマリさん。皆も喜ぶと思います。」




サマリは再び港広場の準備の様子に目を戻しながら、(何だかんだで、やることが増えていくわね)と心の中でつぶやいた。



サマリは補佐役と世間話をしながら広場を見て回った。大漁祭の準備は着々と進んでおり、どこも忙しそうだった。


「そういえば、会長は元気だった?」


「ええ、体調は少し良くないですが、気持ちは元気ですよ。祭りの準備には心から参加したかったようです。」


「それは良かった。」



歩きながら、サマリと補佐役は様々な準備風景を見て回った。やがて、捕れたての魚を捌いている漁師たちのところに差し掛かった。新鮮な魚の香りが漂い、その光景は活気に満ちていた。



「サマリさん、お疲れさまです!」


一人の漁師が声をかけてきた。



「お疲れさま。準備は順調?」


「ええ、おかげさまで。ところで、よかったら新鮮な魚を食べていきませんか?今、ちょうど捌いているところです。」


サマリは一瞬ためらったが、すぐに笑顔で答えた。「いいの?じゃあ、ぜひ、いただくわ。」



漁師たちは手早く魚を捌き、新鮮な刺身をサマリと補佐役に振る舞った。サマリはその味に舌鼓を打ち、少しだけ心がほぐれた。


「やっぱり、現地で食べる魚は格別ね。」


漁師たちは誇らしげに笑う。


「それが我々の誇りですからね。サマリさんも頑張ってください!」


賑やかな時間はあっという間に過ぎていった。


サマリは広場をもう一通り見回った後、漁師たちとの会話を楽しみながら、新鮮な魚を堪能した。その後もいくつかの準備を確認し、現場のスタッフに軽く指示を出しながら歩いた。



夕方になり、サマリはそろそろ帰路につくことにした。

広場からの帰り道は、日が沈みかけて空が赤く染まっていた。

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