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6.アルヴァニカへ



翌朝、サマリは早朝の広場に向かい、アルヴァニカへ行くための馬車に乗り込んだ。しかし、予想外の同伴者が待っていた。


「まさかアルヴァニカに行くだなんてね。それならそうと一声掛けてくれてもよかったのに」

と隣に座るビスマスが気さくに声をかけてきた。



「遊びに行くわけじゃないし、あんたは港町の観光をしに来たんじゃなかったの?」


サマリは軽くため息をつきながら応えた。



「もちろん、観光には変わりないさ。一度行ってみたかったんだよ。アルヴァニカの市場にはどんなものがあるのか、興味が尽きないよ」



「ピンキリよ。」


「高級な品もあれば、見るも無残な粗悪品もある。でも、気をつけなさい。アルヴァニカは一見華やかだけど、その裏は闇深い場所。」



「闇深いって?」



「貧民街や孤児、奴隷市場もあるし、異種族の奴隷まで売られている。治安も悪いから、あまり深入りしないほうがいいわ。」


「なるほど。それにしても、そんな場所に行くなんて、ちょっと怖いね。」


ビスマスはますます興味津々な様子で、サマリの話に聞き入った。


「何があっても、事を荒立てないように。何を見ても心に抑えなさい。手を出すな、特に人助けであってもね。」


サマリは少し声を荒げながら、ビスマスに忠告した。



「人助けでもね?」


「そう。人助けでも。」


少し声を荒らげそうになるサマリに気づいて、ビスマスはすぐに謝った。


「わかった、わかったよ。君のそばにいるだけにするよ。」


サマリはアルヴァニカの裏をよく知っていた。


「サマリは本当に心配性だね。だからこそ、ここまでやってこれたんだろうけど。」


「それはどういう意味?」


「君がこの町を支えているってことさ。君がいなければ、もっとひどい状況になっていたかもしれない。」



「そんなこと言っても、今の状況が完璧とは言えないけど。」


「完璧なんてないさ。でも、君がいるからこそ、この町は回っている。そうだろう?」



馬車は揺れながら進み続けた。



サマリは深くため息をついた。

アルヴァニカの物価高騰について商談…いや、文句をつけに行くだけだったけれど、ビスマスも観光気分でついて来ちゃったし、アルヴァニカの市場なり喫茶店とかも回ってあげようかな。



「それで、何を見に行きたいの?」サマリはビスマスに問いかけた。


ビスマスは頬を緩ませて悩むような素振りをした。「珍しいものや、ちょっと怪しげな店、奴隷市場…異国の文化や生活、普段目にしない光景かな。」


サマリはその答えに苦笑いしながら返した。「悪趣味ね。」


しかし、心の中では普段見れないものが見れるというのも刺激的だと思っていた。ビスマスの好奇心は時に厄介だが、同時にビスマスの視点で見る新しい発見も悪くないと思う自分がいた。



「アルヴァニカの市場って本当に色んなものがあるんだろうね。昔からの工芸品とか、珍しい薬草とか、どんな物でも手に入るって聞いたことがあるよ。」


「あんまり変なところには近づかないでよ。特に奴隷市場なんか、見るだけでも心が痛むわ。」


「分かったよ、サマリ。でも、そういうところも見ておきたいんだ。現実を知るって大事だからさ。」



「本当に好奇心旺盛なんだから…」


サマリは呆れつつも、ビスマスの真剣な表情に少し心を動かされた。


「まぁ、私も少しは付き合ってあげるわ。でも、何があっても騒ぎを起こさないでね。」







揺れる馬車の中で、私はうとうとと次第に眠っていた。




ガタン



大きく揺れた衝撃で目が覚めた。自分が眠っていたことに気がついて慌てた。



「今、ここはどこ…」


「おはよう、よく眠れたみたいだね」


ビスマスはにやりと笑みを見せた。


 

「うるさい。何が起きたの?」


私は寝ぼけた顔を手で押さえる。



「どうやら少し道が悪かったみたいだ。でも大丈夫、もうすぐアルヴァニカに着くかな。」



「そう…」


「眠ってる間にもうこんなに進んでたのね。」

外を見つめながら呟いた。



私はビスマスに向かって話を続けた。


「ここらの道中で襲われる心配はないけど、アルヴァニカの下層街の連中がこっちに流れ込んでくるせいで、港町の治安が悪化してる」



「そんなにひどいの?」


「そうよ。アルヴァニカの下層街は無法地帯で、犯罪の温床。けど、アルヴァニカは何もしない。自分たちの都合のいいように見て見ぬふりをしてるだけ。」



「それは、どうしようもないじゃないか。」



「そっ。下手に首を突っ込むとこっちが何をされるかわからない。だから私たちで自衛するしかない。でも、私の顔はアルヴァニカの上層部の連中にも知られてるし、あまり深く関わりたくないっていうのが本音よ。」


ビスマスは頷きながら、「それじゃあ、こっちに流れてきた人々はどうしてるんだい?」と聞いてきた。



「彼らは教会を建てろって申し立ててくるのよ。よくもわからない神を信仰して何がいいのか、私は皮肉を言いたくなるけどね。アルヴァニカの教会内の金と欲望にまみれた有り様を見てるから、なおさら。」


私は顔をしかめて続けた。


「人が良さそうな見た目で簡単に人を騙す連中ばかり。彼らの教会なんて、信仰の名の下に欲望を正当化してるようなもんだわ。」



ビスマスは黙って聞いていたが、やがて口を開いた。



「でも、サマリ。もし教会が建ったとしても、そこに監視の目をつけて、違法や不法行為を徹底的に洗い出して潰すことができれば、少しは改善できるかもしれない。」


「監視の目、ね…」


私は少し考え込んだ。

「確かに、それは一つの手かもしれない。でも、それだけで本当に変わると思う?」


「サマリ、領主として私は慎重に考えることが求められてきた。時には、敵の中に味方を作ることで逆に内部から変革を起こすこともできるだろう。教会が建てば、それを利用して彼らの動きを監視し、適切な対応を取ることができるはずだ。」



私はビスマスの言葉に耳を傾け、深く考え込んだ。彼の言うことには一理ある。港町の安全を守りつつ、アルヴァニカからの流入者たちにも対応する方法を見つける必要がある。


「ん〜、はぁ、分かった、ビスマス。考えてみる価値はあるかもしれない。でもまずは、アルヴァニカに着いたらしっかり商談して、あの足元を見てくる連中に一泡吹かせてやる。それから観光もして、息抜きしましょ。」



ビスマスは笑顔を返し、

「うん、それがいいね。」



馬車はさらに進み、いよいよアルヴァニカの城塞が見えてきた。


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