第22話 アースドラゴン①
お久しぶりです。
女神に頼まれて、異世界へ魔王を倒しに行くーーーーいや、ほぼ無理矢理に異世界へ送られた器用貧乏な男、テツヤが異世界で生きていくことになる。
異世界へ送られた先に、様々な仲間に出会ったり魔王の娘に襲われたり、珍しいスキルを手に入れたりと波乱な生き方をしていた。
そして、街へアースドラゴンが向かっていると聞かされ…………と、続きになります。
さぁ、どうぞ!
2時間後に下位といえ、ドラゴンが街へ攻めてくる。斥候の調べによると、レベルは50もあり、始まりの街にいる冒険者は1番高い者でもレベルは30ぐらいしかない。
近くの街へ救援を頼もうと思っても、5時間は掛かる。
これだけ聞けば、ほぼの冒険者は間違いなく諦めの気分が漂う。
そして、テツヤも宿に帰って知らんぷりして寝たい気分だった。街が襲われてしまうから、そんなことは出来ないが。
眼が死んでいたテツヤを他所に、エリラはヤル気満々でギルド長から話を聞いていた。
「アースドラゴンか、下位といえ、強者と戦えるのは幸運だなッ!」
「おい、ミノタウルスから逃げようとした奴が何を言っていんだよ!? 勝てるわけねぇだろ!!」
「ぐっ、ミノタウルスのことはいいだろ。魔力を使われていたら、防げなかったんだから……。しかし、アースドラゴンは違う。魔力を使わず、地力だけで戦うドラゴンだ。つまり、私は防げるわけだ」
「む、ドラゴンの癖に魔力を使わないのか?」
「あっ、アースドラゴンは魔力が少ないのでしたわ……。それなら、エリラで……いえ、十五メートルもある相手の攻撃を防ぐのは無茶でありませんか?」
「やってみないとわからんだろ!!」
「いやいや」
流石に質量が違いすぎる。十メートル以上も違う相手の攻撃を防ぐなんて、出来るとは思えなかった。前に襲ってきた魔王の娘、リヒトや黒い鎧を着たヨハムドと言う者でもアースドラゴンの攻撃を…………あれ、あいつらがやられるイメージが浮かばない。
あいつらだったら、悠々に防ぎそうだな……。
本気の『衝撃の魔眼』をほぼ無傷で防いだリヒトを思い出して、そう思うのだった。
「もしかして、スキルで質量の差を埋められる……?」
「テツヤ、どうしましたか?」
「いや、アースドラゴンの攻撃をエリラが止められるか考えていたんだよ」
「うーん、『ガーディアン』を持っているエリラなら死なないと思うけど、踏ん張ることが出来ず、吹き飛ばされると思いますが……?」
「死なないだけでも凄いが……、そうか、エリラが攻撃を受けられるなら死角から攻撃が出来ると思ったが、そんな簡単に行かないかーー「もし、1人だけじゃないとしたら?」ーーえ?」
隣から声が聞こえ、そこに眼を向けるとバロンが立っていた。1人だけじゃないということとは……
「俺はあの嬢ちゃん程でもないが、硬さには自信がある」
「あ、成る程。エリラだけでやる必要はないか!」
硬さに自信がある人は別にエリラだけじゃない。『ガーディアン』を持っているからエリラしかやれないと思っていたのが間違いであった。
1人でやれないなら、2人、3人……10人でも構わないのだ。
この街にいる冒険者は周りを見れば50人以上はいる。
それだけいれば、硬さに自信がある人はエリラやバロンだけじゃない筈!
「ここは、硬さに自信がある奴が攻撃を止め、動きを封じている内に攻撃を仕掛けるのが1番だな」
「そうだな。それしかあるまい」
ギルド長も俺達の話を聞いており、そのやり方しかないと認めていた。
遠距離から魔法で攻撃をしようとしても、ドラゴンの特有である『竜鱗』のスキルで魔法の威力を弱めさせられてしまう。ドラゴンと戦うなら、『竜鱗』を超える強さを持つ魔法で攻撃するか、打撃の攻撃をするしかない。しかも、アースドラゴンは地竜で下位に位置するといえ、硬さがウリである竜なのだから、一層に厳しさが増す。
「その作戦を皆に伝えるから、準備だけはしておいてくれ」
「わかりました」
テツヤ達は先にギルドを出て、ある武器屋に向かう。
「何処に向かっているの?」
「そりゃ、武器屋だ。『暴鈍』をもっと重くできないか聞いてみるんだよ」
「あらま、それ以上に重くしたら投げられないのでは?」
「いや、投げた感じではまだ重くしても大丈夫ような気がしたんだ」
「そうなの……? テツヤがそう言うなら、いいけど」
「今から作り直すには……いや、いい」
武器屋に向かっても、『暴鈍』を作り直すには時間が足りないんじゃないかと思ったが、テツヤが行くと言うから黙って着いていくカレル達。
武器屋に着いて、すぐ親分に『暴鈍』を渡した。
「あー、やっぱりもう少し重くしても大丈夫だったか」
「だな。すぐ作り変えられるか? 今は急いでいるが、大丈夫か?」
「なぁに、今は何が起こっているかは聞いているぞ。作り直せと言われても、普通は無理だが…………感謝はしとけよ?」
親分はそういうと、『暴鈍』のよりも大きい分銅を持ってきていた。『暴鈍』を渡していた時は既にそれよりも重い分銅を作って置いていた。
すぐ分銅だけを変えれるようにと準備していたのだ。
「すぐ終わるから待っていろ。今回は打撃の武器が必要になるから、待っている間に見てみるのもいいぞ?」
「そうだな。カレルの物は必要だろうな」
「え、私!?」
「当たり前だ。『呪怨魔法』は間違いなく効かないだろう。レベルが違いすぎるし、魔法も効かない『竜鱗』もあるのだから。杖も叩くにも向いてないのだろ?」
「うぅっ……」
場合によっては、カレルも前に出て攻撃する必要になる事態もあり得る。だから、近距離でも戦える術を増やすのもいいだろう。
「なぁなぁ、カレルにはこれがいいんじゃないか?」
「メイスか、いいんじゃないかな。魔術師も持つことがあると聞いたことがあるな」
正確には治癒師や聖職者などが神聖な武器として、メイスが使われることが多いのだ。しかし、近距離対策として魔術師もメイスを持って戦うこともある。
カレルもメイスを受け取って、軽く振ったが問題は見当たらなかったことで、買うことに決めた。
分銅を変えた『暴鈍』も丁度いい重さになり、ギルドへ戻っていく。
「覚悟はいいな? 特にエリラはな」
「大丈夫だ。私1人だけじゃないからな。…………意外だったな。テツヤがヤル気になっているとはな」
「あ、私も思ったわ。テツヤさんだったら、もっと渋ると思っていたわ」
「そうなんですか? 入ったばかりでまだ良く知らないのですが……」
「お前らな、俺を何だと思っているんだ……と言いたい所だが、間違ってないのはムカつくな」
テツヤは面倒事なんて無視して、お布団に入りたい気分だった。アースドラゴンが街へ向かっていなければだが…………
「街に向かっているなら、静かに眠れねえだろ? 自分に危険が降りかかっているなら、他人に任せるよりも自分で対処した方がマシなだけだ」
「テツヤさんらしいですわね……。特に自分のためだと言って、周りを助けるよね」
「そうかそうか! それでもいいぞ!」
「やっぱり、私が惚れた旦那様ですわ♡」
「お前らは…………もういい」
自分の為だと話しているのに、3人は自分の為だと言うのは建前だと信じているようだ。違うと言っても無駄のような気がしたから、反論するの諦めたのだった。
「アースドラゴンを倒したら、3日は働かんぞ。ずっと寝るんだからな……」
そう呟きながら、対アースドラゴンの為に冒険者達が集まっている場所に紛れるのだった。




