第17話 休暇
今回はカレル視点になります!
リヒトに襲われた翌日のこと。
陽が昇ったばかりの空、カレルは落ち込んだ様子で、哲也が泊まっている宿に向かっていた。服装はいつものと変わらないが、今日は休暇として、クエストを受けない。そうエリラから昨日に聞かされていた。
昨日は魔将が2人も現れ、その1人が魔王の娘だった。魔王の娘が現れた時点で気絶をしなかったのは、自分を褒めてあげたいと思ったが、結局は気絶してしまった。
「はぁっ……」
エリラはまだ冒険者になって間もないのだから、仕方がないと慰めてくれたが、冒険者になって1週間も経ってない哲也が頑張っていたのを聞いて、更に落ち込んでいた。
「私は脚を引っ張っている……」
落ち込んでいる理由は、哲也の脚を引っ張っていることだった。自分は『呪怨魔法』しか戦闘方法を持たず、昨日みたいな強大な敵に出会ったら何も出来ない。守られている存在、更に邪魔でしかない者に成り果てていたカレルは泣きたくなる程に心は激下降していた。
「昨日のことでお礼を言わないと……でも、パーティ解消されたらーーーー」
これから会いに行って、『昨日までお疲れ様だった。すまないが、パーティを解消したいんだが……』と言われたら、一生屋敷に引きこもる自信がある。
い、嫌よぉ……。テツヤさんと一緒に冒険者をやるのは楽しい。一生、パーティを組んで世界を見回りたい!! ………………あれ? 私はなんで、テツヤさんに拘っているの?
冒険者としてなら、他の人と組めばいい。だが、カレルは哲也じゃないと嫌だと思っている。つまり、その感情は冒険者としての心から来ているわけでもない。
それを自覚したカレルは戸惑う。
え、もしかして、私は…………
顔を赤くしていたら、いつの間かに哲也が泊まっている宿に着いていた。もう着いてしまった、どの顔で会えばいいのか、とわからなくなっていた。
「き、今日は、お礼! そうよ、お礼を言いに来たのよ!!」
自分の心を隠し、冒険者としての志からお礼を言わなければならないと、無理矢理に考えた。
少し心が落ち着いたのを感じ、1回深呼吸してから宿の中へ入っていった。
「へい! いらっしゃーーなんだ、エージェント家のお嬢ちゃんか」
「客ではなくて、すいません。ところで……」
「わかっているさ。ドアを壊されては堪らないからな。ほれ、合鍵だ」
「壊したのは私じゃないんだから!! あの鉄女よッ!!」
エリラだけではなく、カレルも一緒に壊したと思われていたようだ。それを否定し、哲也の部屋へ向かっていく。ドアは修繕されており、鍵を開けていく。
「テツヤさんーーーーえ、いない?」
部屋の中に入ったが、哲也の姿は無かった。布団は綺麗に畳まれており、使われた様な跡は無かった。
「朝早くから外へ?」
てっきり、布団を被っていると思っていたが、いなかったことに珍しいと思っていた。しかし、店主から何も言われてないから不思議とも思っていた。もし、部屋にいなかったら普通は合鍵を渡さない筈だ。
「聞いたほうが早いわよね……」
すぐ店主のとこに行き、哲也は部屋にいなかったことを話してみた。
「む? いなかっただと? ちょっと待ってろ。セリア!!」
奥へ呼びかけると、カレルと変わらない歳の少女が現れた。
「はーーい! 手伝いが必要ー?」
「いや、黒目黒髪のテツヤのことわかるよな? 部屋にいないみたいだが?」
「あっ、テツヤさんなら夜に帰ってきたけど、すぐに出たわよ。冒険者だから、クエストじゃないの?」
夜の番をしていたセリアの話によると、ここへ1回帰ってきたが、またすぐに宿を出たと言う。しかも、まだ陽が昇ってない時間にだ。
あれ? 戦っていたから疲れている筈なのに。クエストに行ったのもおかしいような……
哲也は冒険者の仕事を割りに合わないと言っていたぐらいだから、自分からクエストを受けに行くとは思えない。それに、今日は休暇なのだ。カレルはあまり疲れてなかったから、哲也が泊まっている宿に行って御礼を言って話をしようと思っていたのだが……
「そうなの。ありがとうございます」
「そういえば、機嫌が良かったような。何か良いことがあったのかな?」
え、機嫌が良かったって……、魔王の娘に襲われたばかりで機嫌が良い?
「女でも出来たんじゃねぇか?」
さっきまで意味がわからないという表情だったが、店主の言葉で顔が青くなっていった。
「あ……、お父さんッ!」
「あ、ヤベッ」
2人ともカレルの顔を見て、話して良い話題ではないと理解したが、もう遅い。セリアが何か言おうとしていたが、カレルはふらふらとした足取りで宿を出ていった。
テ、テツヤさんに……彼女が? そんなのって、嘘だよね?
ふらふらした脚でギルドに向かっていた。もしかしたら、哲也がいるかもしれないと、脚を進めていたが……
「いない……」
哲也はいなかった。半ば予測していたが、見つからないと心がザワッとして止まらない。
あ、エリラも…………いない。
昨日、送って貰っていた時にエリラは今日もクエストを受けると聞いている。クエストを受けるなら、この時間だと思っていたが、姿は見えなかった。
2人の姿が見えないことで嫌な想像をしてしまう。
まさか、2人で……? 付き合っ…………!!
カレルは無意識にギルドを出て、走っていた。哲也が行きそうな場所、武器屋、雑貨屋、酒場などに寄ってみたが、店主には来てないと言う。
あとは街の外しか残っておらず、門へ向かう。その際に門番の人に聞いてみたらーーーー
「ん? あぁ、あの男なら夜中に出ていたぞ。獣人の女もいたぞ」
「!? ど、どの方向に……?」
「確か、あそこに向かっていたな」
門番に聞いた後、すぐ向かっていた。指を指した先には湖がある場所だと記憶していた。
そこへ向かい、人影を見落とさずに周りを見回して探す。そしてーーーー
「ーーーーあ」
カレルは見つけた。湖の側に小さな丘があり、1本の木に寄り掛かる哲也の姿が。哲也は何かを持っているみたいだが、遠すぎてわからなかった。哲也へ近付くとーーーーエリラが哲也に寄っていくのが見えた。
見つけて安心していた心がまたザワッとして、胸が痛くなる。脚を止めていたが、哲也がこっちに気付いた。
「あれ、カレルじゃないか?」
「あ、本当だ」
エリラも気付いて、こっちへ走ってきた。カレルは逃げ出したくなったが、逃げるにはいかない。カレルは理解したからだ。
テツヤさんのことが好きだと。だから、エリラには渡したくはない。
「おーい! もう大丈夫なんか!?」
「え、えぇ……。そ、それにしても、ここで何を……?」
「んー、私はクエストに行こうと思ったけど、夜中にこそこそと門へ行こうとするテツヤを見つけたんでな」
「こそこそと言うんじゃねぇよ。不審者みたいな言い方みたいだろ。カレル、こっちに来ればわかる」
カレルは哲也の言う通りに近付いて行くと、何をしているのかわかった。
「え、釣り?」
「あぁ、釣りだ。帰り道で湖があることに気付いてな」
哲也は楽しそうに餌を付けた針を湖へ投げる。側には焚き火と焼けた魚があった。
「私はここに近付いてきた魔物の排除と食事係だな」
「食事を準備しているのは俺だ。お前は食うしかしてねぇじゃんかよ」
「そうだったんだ……」
カレルは心の中でホッとし、心にあったシコリが取れて軽くなった。その心を読まれたのか、エリラはニヤニヤしながら耳の側に近付いてきた。
「安心しろ。テツヤに手を出さんから」
「ふぇっ!? な、何を言っているのですわ……?」
「ククッ、モタモタしているといつかライバルが現れるかもしれんぞ」
エリラはそれだけ言って、すぐ離れて焚き火があるとこへ向かった。
「ん? 顔が赤いが?」
「何でもありませんわ!!」
「そうか?」
テツヤはそう言うと、意識は釣りへ戻った。カレルはその様子からまだこっちに気があるとは思えなかった。気付いてくれるまで時間が長くなりそうだなと思っていた。
ライバルといっても、すぐに現れるわけでもないし。時間はまだあるのだからーーーー
安心した様子で、カレルは釣りをしているテツヤへ近付いて行く。そう、すぐライバルは現れないとこの時は思っていたーーーー
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翌日、ギルドにて。
「あぁ、私の運命相手を見つけましたわ。 未来の旦那様、パーティへ入れて下さいな!!」
「はぁ?」
「はぁっ!?」
「…………」
哲也達は呆気に取られていた。長髪の黒い髪をし、露出が多い黒いドレスを着ている女性が目の前に現れ、目にハートを浮かべてそんなことを言ってきたのだ。
まだライバルは現れないと思っていたカレルの妄想は打ち壊されるのだったーーーー
どうでしたか?
次回は仲間が増えます。またアレ仲間ですがッ!!




