第12話 緊急依頼
はい、続きをどうぞ!
通例となっているという、この緊急事態とはーーーー
「ユズ狩りだ」
「無視して、魔物を狩りに行くか」
そう言って、クエストが貼ってある掲示板へ向かう。他の冒険者は号令によって、受付前に集まっていたから掲示板前はガラガラだった。ちょうど良いと思いつつ、ゆっくりとクエストを見ようとしたらーーーー
「おい!? 何をしている!?」
「なんで、冒険者が果物の柚子を取りに行かなければならん!? むしろ、農業者に任せろよ!?」
「い、いや。果物なのは間違いないが、数が多すぎるから危険なんだよ。放置すれば、森を食い尽くされてしまう」
「……は?」
「今まではテツヤが言っていた通りに、農業者が間引きをしていたが、今みたいに爆発的に増えることもある。その時は冒険者も手伝うと言う通例になっているんだよ」
テツヤは意味がわからなかった。増えすぎると森が食い尽くされてしまうって。果物と言っていたが、栄養を森から吸い尽くされて枯れてしまう的な?
とにかく、話を聞いている内に気になってきたので、その緊急依頼を受けることにした。いや、その緊急依頼は見つけたら必ず受けなければならないので、自発的に受けたとは言い難いがーーーー
「ユズじゃねぇ!?」
問題である森へ向かうと、ユズと呼ばれる果物が目に映った。
オレンジ色で口がパックリと開いている果物が浮いていた。もちろん、木にぶら下がっておらず、浮いていた。
「どう見ても、ミカンじゃねぇかッ!?」
「煩いよ、ってか、ミカンってなんだ?」
「あれがユズ……、動いているのは初めて見ましたわ。生きている内は美味しいのかしら?」
「俺は食べたいとは思えんな……」
エリラは目の前にいるミカンの化け物のことをユズと言い張り、カレルは涎を垂らしてユズを見ていた。ユズは動いており、命があるように見えた。
「早く狩るぞ!」
「あぁ、納得したよ。木を喰っていやがるし」
森が食い尽くされてしまうという言葉はそのままの言葉通りだった。あの口で木にかぶりついて、少しずつ食べられていて、所々に穴が空いていた。
「『呪死』!」
ユズに『呪死』を使うカレル。驚いたようにビクッとした後に落ちた。落ちていく途中に口がピッタリと閉じられてただのミカンにしか見えなくなっていた。
「たかが、果物か」
「あ、言い忘れたが、無傷のユズが1個で500ゼニだってさ」
「なんだと!? それを早く言え!!」
鎖鎌を取り出そうとしたが、無傷で狩れたら500ゼニも貰えると聞いて、仕舞っていた。
「あれは弱いから、パンチ一発で驚いて死ぬぞ」
「えぃっ!」
カレルが持っていた杖で軽く叩くと、ユズは驚いて心臓が止まったように落ちて動かなくなった。
「変な生き物……いや、果物か」
なんで生きているのか知らないが、この世界では普通のことだろう。軽く殴れば死ぬなら、武器を使わずにやることに。
「しかしなぁ、本当に沢山いるな。ギルドは金を払えんのか?」
「纏まったお金が入るのは少し後になるが、確実に支払われるから安心しろ」
「なら、いいか。宿代が必要だし、沢山取っておくか」
3人はバラバラに別れて、ミカンの姿をしたユズを狩っていく。ユズも生き物だからなのか、レベルが1つ上がったの確認出来た。
経験値は少ないみたいだが、こんなのでも経験値があるみたいだな。っていうか、経験値とはなんだろう?
ふと思いついたが、経験値は何なのか気になってきた。ゲームではシステムによって経験値が魔物に含まれているが、この世界はスキルがあるといえ、現実である。スキルもそうだ、地球の常識に当て嵌まらない。
そこまで考えていたらーーーー
「テツヤさん! 手が止まっていますわよ!!」
「あ、あぁ……、考え事をしていた」
カレルに呼びかけられて、手が止まっていたことに気付いた。
考え事は後にして、今はミカン……間違った、ユズだ。ユズを刈らなければ。というか、姿が紛らわしいんだよな……。
そう思いつつ、ユズを狩っていく。その結果、1人で100ぐらいは狩れていた。
3人の合計にすれば、15万ゼニ。
「ボロ儲けだな」
「この緊急依頼は年に2回はあるから、次も必ず行った方がいいぞ」
「そうするわ」
金を貰えるのは、後になるがそんなに長くはならないと説明があった。
狩りが終わった頃はもう夕方だったので、今日はここまでにして解散しようと思っていたらーーーー
エリラが一枚のクエスト紙を持ってきていた。
「これに行こう」
「はい? クエストは終わったから帰ろうと思っているんだが?」
「うん、沢山動いたしね」
「沢山動いたって、レベルは上がってないだろ? もっと強くならないと魔王に勝てないぞ!!」
エリラは本気で魔王を倒すために行動するようだ。レベルは上がっているし、今日は疲れたのでカレルを嗾けることに。
「魔王って、本気で言ってんのか。この俺が魔王をやれると思っているなら、間違いだと思うぞ?」
「今はそうだが、レベルを上げていけば化けるポテンシャルを持っていると聞いたからな」
「それはーー妄想の女神様からか?」
「妄想ではない!!」
エリラは力強く答えていたことに、冷たい眼をしたカレルが動いた。
「あら? 妄想ではないなら、幻覚を見たのでは? テツヤさん、ヤク中毒になっている女性の話を聞かないように」
ついに、ヤク中毒扱い。その言葉は流石に我慢出来ないのか、エリラは眉尻を上げていた。
「おい、その言い方はないだろ? 私は全く嘘を言ってないし、魔王を倒すために動くのも本気だ」
「どの口が言うのかしら? 貴女の夢に出てきたのは女神アネックス様ではなく、低俗の悪魔ではないと言い切れる証拠はおあり? まだ冒険者になったばかりの私達に魔王を倒せとかイカれた提案をするお方が女神様な訳がないでしょ?」
それがいるんだよなーと思いつつ、哲也や2人から距離を取っていく。
「貴様! 女神アネックス様のことを低俗の悪魔と言うのか!!」
「そう言ってないわ。本物の女神アネックス様がそんな提案をする程の愚かではないわ。貴女の頭に巣食うアネックスと言う妄想が低俗の悪魔だと言っているのよ!!」
「なんだと!!」
「何よ!!」
カレルを嗾けることに成功した哲也は怒鳴り合っている2人を放って、欠伸をしながら我が宿に帰るのだったーーーー




