第11話 鎖鎌術
はい、続きをどうぞっ!
数手か攻撃を続けていたが、エリラは脇腹に当たった一撃以外は全てを捌ききっていた。
「流石だな。今度はーー」
ピロリィ♪
試練中にカードから鳴り、もう『パリィ』を手に入れたのかと思い、攻撃を止めていた。
「少し待て」
「む?」
断りを入れてから、カードを操作すると、新しく登録されていたスキルは、『鎖鎌術』だった。『パリィ』じゃなかったのは残念だが、自分にとって役に立ちそうなスキルだと思えた。
もしかして、鎖鎌を使っていたから経験値が溜まって登録されたのかな?
自分の行動により、新しく登録されるスキルがあることを知った哲也。それはそれとして、『鎖鎌術』のスキルポイントは1だった。これなら、すぐ取れるので迷うこともなく、取得したのだった。
む、鎖鎌が軽くなった?
分銅を回してみると、さっきより早くなっていた。それを見ていたエリラは違和感を感じて訝しむ表情になっていた。
「待たせたな」
「それはいいがーーーーッ!?」
今回初めて、回避の行動を取っていた。エリラの横を通ったのは分銅で、先程よりスピードが上がっていたことに驚愕し、反射的に避けていた。
「さっきより早い!?」
「早いだけじゃないぞ」
哲也は鎖を操作して、分銅の軌道を変えてエリラの後ろから襲いかかろうとしていた。それにエリラは反応が遅れ、避ける暇もなくナックルで受けていたがーーーー
「っ!?」
分銅は弾かれたが、手を出していた方も弾かれていた。重い攻撃に顔を顰めるエリラ、少しだけ手が痺れたようだ。
「一体、何のスキルを取ったの!?」
「あ? ただの武器系のスキルだ」
「は? さっきまで持っていなかったの!?」
武器のスキルを持ってない状態で、これだけ操れたことに驚いているようだ。哲也は器用さが高かったから何でも屋が出来、鎖鎌みたいな使った事がない武器であってもまぁまぁ使えるとこまでいけたのだ。
もし、この場に女神がいたら、「流石! 伊達に器用貧乏と呼ばれてないわね!」と言われていただろう……。
「む、なんかイラッとしたぞ?」
「何が!? って、私に八つ当たりをしないでよーーーー!?」
更にスピードと手数が増えて、捌ききれなくなったので、回避も織り交ぜて防いでいた。
「鎖のこことここを引っ張ればーーーー」
「なっ、2回も曲がった!?」
鎖の2箇所を軽く引っ張ることで、蛇みたいな動きになってナックルを掻い潜っていた。そのまま頭へ当たり、倒れはしなかったが動きが止まった。エリラは頭を抑え、顔を振っていた。
「いっ、た、タンコブが出来た……」
「おい、タンコブで済むのかよ? 普通なら陥没しているぞ」
「テツヤさん……、少しは手加減でもしませんこと? でも、凄いですね」
陥没させる程の威力があった攻撃を平然に女性へ当てていたことに引いたカレル。それ以上に、その攻撃がタンコブ程度で済んだことに驚いた。
そろそろ『パリィ』が来そうなんだが、これ以上やると悪者にされそうだな……。
そろそろ10分も経とうとしていたが、まだ念願の『パリィ』が来ない。これ以上、攻め立てればやり過ぎだと言われるかもしれないと考えていた。
既に、周りからはもうやり過ぎだと思われているが……。
「最後だ。これを捌いたら終わりだ」
「わかったぜ!」
最後だとわかり、正面から受けるような構えで待ち構えた。それに応えるように、一番威力が高い攻撃を仕掛ける。
一番威力が高い攻撃をするには、真正面からの衝突が一番。今までは鎖を操って曲げたりしたが、今回はそんな小細工をしない。
「捌いてみせろ!!」
馬鹿正直に真っ直ぐへ放たれた分銅が最高のスピードを出して、身体の中心へ向かっていった。もし、捌くことに失敗すれば、普通の人なら内臓破裂に複雑骨折で死ぬだろう。硬いエリラなら痣が出来るだけで終わるだろうが、絶対に捌くと言う気迫を持っていた。
その気迫が勝ったのか、絶妙なタイミングで『パリィ』を使えていた。ナックルが分銅に当たった瞬間に、拳を引いて威力を殺しながらーーーー
「ふっ!」
完全に威力が落ちた分銅を横へ流して、当たった時の金属音が普通より小さい。つまり、エリラはあまり衝撃を受けずに、華麗な捌きを見せてくれた。
「おめでとう、合格だ」
試練は合格で、拍手をしていた。それに合わせたように、周りから歓声があがる。
「凄いな!? あんなの、よく捌けるな……」
「俺だったら、頭に当たったらそこで御陀仏だぜ。硬えな!」
「ねぇ! 私達のパーティに入らない!?」
歓声の中にパーティの誘いが幾つかあったが、エリラは全てを断っていた。
「私はテツヤがいるパーティに入りたいのだ。だから、すまないが断らせてもらう」
「だから……、なんで俺のパーティに入りたいんだ? 面白そうだからだけじゃないんだろ」
エリラから必死さを感じ、理由は先程に話しただけじゃないのを理解した。エリラは少し沈黙し、その後に言いにくそうに口を開いた。
「あ、あの、笑わないか?」
「む? 聞いてみないにはわからないな」
「笑わないから! テツヤさんも笑っちゃ駄目ですからね!」
カレルは仲間が増えることに喜び、せっかくの仲間を逃さないように、哲也へ釘を刺していた。それを聞いたエリラは覚悟を決め、2人にしか聞こえない音量で話し始めた。
「不思議な夢を見たんだ。その夢に、なんと! 女神アネックス様が現れたんだ」
と、そこまで聞いて、哲也は頬を引きつらせて、カレルはウン臭そうな眼になりかけた。それに気付かず、エリラは話し続ける。
「女神アネックス様から、『器用貧乏の男と白いフードに金髪ロールの女に出会うだろう。その者は、かの魔王を倒す者になり、手助けをすることで貴方の願いが叶うだろうーーーー』と聞いて、絶対にパーティに入らなければならないと思ったんだよ」
その話を聞いて、哲也は『あのアマ、また出会うことがあれば、ドロップキックだけじゃなく、海老反りの追加をしてやろうじゃないか。どうしても、魔王退治に行かせたいようだなッ!?』と内心で愚痴っていた。
悶々としていた哲也だったが、手を引かれていることに気付いた。手を引いていた者は、何かを悟ったような表情を浮かべていたカレルだった。
「妄想ですわね。さぁ、テツヤさん。妄想癖を持っている方は放って狩りに行きましょう」
「ちょっと!?」
あっさりと仲間外れにされたことにエリラはカレルの肩を掴んで止めようとする。だが、カレルは冷たく手を振り払っていた。
「妄想で女神アネックス様を語ろうとする仲間はいりません。笑う? むしろ、笑えませんわよ?」
「ひぃ……」
冷たい瞳にエリラは少し後退っていた。どうやら、カレルはとても怒っているようだ。どうしたかと聞いてみれば……
「私は女神アネックス教を信仰していますわ。私だけではなく、エージェント家もそうですわ」
「……あの女神に信仰する奴がいたんだ」
小さな呟きだったから、カレルには聞こえていなかった。もしかしたら、出会った時は一部しか見せておらず、本来の姿は立派にしているかもしれない。その想像は出来ないが、今度、暇があれば宗教のことを調べようと思った。
エリラもカレルと同じ女神アネックス教を信仰していて、2人は言い合いになっていたがーーーー
「緊急依頼です!! 説明をしますので、冒険者は受付前に集まって下さい!!」
メルが慌てたように、号令を出していた。その声に、2人は言い合いを止めて、自分達も地下から一階に上がって、受付前に集まった。
「すいません。急に集まって貰ったのことですが、通例に起こっていたことが、少し早まりましたので、すぐ集まって貰った次第です」
「通例?」
「そうだ。この時期なら、アレしかないだろう」
哲也やカレルよりも長く冒険者をしていたエリラには予測出来ていた。その通例とはーーーー




