第10話 チャンス
はい、続きをどうぞ!
「……ん、んん? いッ!」
エリラが眼を覚ました。身体を起こすと、少し身体に痛みがあり、小さな呻き声が出ていた。まだ何があったか理解してない様子で、周りを見ていた。
そして、哲也を見つけた瞬間に思い出した。
「…………そうか、私は負けたのだな」
「一発で気絶とかどうなんだ?」
「ッ!」
エリラは顔を赤くして、横へ反らしていた。だが、哲也の言葉はまだ続く。
「メルに聞いたが、お前の防御は物理に特化していて魔法に対する防御はーーーー紙なんだって?」
「うっ……、仕方がないんだもん。獣人の種族スキルや狂戦士のスキルには魔法防御のスキルがないんだもん!!」
この世界は不思議な造りをしているようで、物理の防御スキルを取ればーーーー魔法の防御が弱くなる。エリラは物理の防御スキルを幾つか取っているので、魔法に対する耐性は最低である。物理と魔法に対する防御は両立出来ず、普通はバランス良くスキルを取ってどちらも高くも低くない防御にするか、片方を特化して、残りの防御を補う装備を付けるしかない。
だが、エリラはその様な装備を着ておらず、動きやすさを優先させているからなのか、半分以上は肌を晒している。
「だもん、って……、それが素か?」
子供みたいな口調、それがエリラの素らしい。だが、すぐその口調を隠してしまう。
「……それよりも、どうやって攻撃をしたんだ? 私がダメージを喰らったから魔法なのは確かだけど、全く見えなかったぞ?」
「そりゃ、見えるわけねえよ。魔眼で衝撃を放っただけだからな」
「魔眼!? よく見れば、片方が蒼いな……」
魔眼は珍しいらしく、さっきメルに問い詰められたものだ。しかも、『衝撃の魔眼』はどの職業でも使えないスキルであり、魔物にしか使えない。よく使われる魔物といえば、フェゴバルトとか……。フェゴバルトから眼を抉り取って嵌めたのかと怖いことを聞いてきたが、スキルは自分のプライベートと同様に秘密にすべきの物である。スキルは自分の生死を左右させる物なのだから。
「メルからは詳しく聞けなかったが、物理防御系のスキルはいくつ取ったんだ?」
「…………六つ。『打撃耐性』、『物理耐性』、『物理大耐性』、『硬化』、『ガーディアン』、『パリィ』だよ」
「『ガーディアン』まで取っていたの!?」
隣で聞いていたメルが驚く。何故、そんなに驚くのかと聞いたら、『ガーディアン』はどの職業でも使えるスキルだが、取得条件が厳しくてなかなか見られないスキルだと。その『ガーディアン』は防御系のスキルの中で上位に位置し、効果も結構高い。
「魔法の耐性を下げる代わりに、物理に対するダメージが大幅に減らされ、自己回復力が上がる代物なの。誰も欲しがるスキルなのだけど……、取得条件がねぇ」
「あぁ、私でも苦労したな。自分よりレベルが30も上の攻撃を百回も受けなければならないからな。しかも、魔物と魔人限定でな」
「30!?」
今のエリラはレベル15だとしたら、レベル45以上の魔物を相手にしていたことになる。
「よく生き残れたな……」
「相手は魔法を使わないゴーレムだったから、なんとか耐えられたんだよ」
「あれだけの防御スキルを持っていても、やりたいとは思わないだろ。ふむ、『パリィ』もあるんだな?」
哲也は『ガーディアン』よりも、『パリィ』に注目していた。パリィの効果が想像通りであれば…………
「『パリィ』か? 捌きの技術だな。私はナックルを使って戦うから、よく使うな」
「ーーーーよし、チャンスをやろう。さっきは魔法で一発KOだったが、今度は『パリィ』を使って、俺の攻撃を捌いてもらう。勿論、魔法は使わないが…………やるか?」
その言葉にエリラは眼を大きく見開いて、嬉しそうな表情に変わっていった。先程ので、不合格にされたと思っていたから、そのチャンスに飛び付いた。
「!? ち、チャンスをくれるなら、やりたい!!」
「よし、身体が大丈夫なら今からやるか?」
「あぁ、少し休んだから大丈夫だ。私は自己治癒が高い方だからな」
哲也はタダでチャンスをあげたわけじゃない。哲也は籠手を持っているので、『パリィ』を見せて貰ってスキル欄に登録させて貰おうの考えだった。そんなことを知らないカレルはーー
「テツヤさんは優しいのね。私みたいな人でもパーティを組んでくれたし」
その嬉しそうな笑みで罪悪感に心を痛めるのだった。優しくしているつもりはないのに、その笑顔を向けられるのは、キツイと初めて知った哲也であったーーーー
「さて、『ガーディアン』を発動しておけ。それを発動すれば、物理のダメージを減らせるよな?」
皆は再び、ギルドの地下へ移っていた。今回はメルが一緒で観客も10人ぐらいはいた。それらが囲むように、中心には哲也とエリラが立っていた。
「そうだ。斬撃であっても、致命傷にはならない。だから、遠慮なく攻撃してこい! 捌ききって耐えてみせる!!」
「大きく出たな。なら、遠慮なくやらせてもらう。あ、メルさん。回復を使えるギルド員とかいますか? 念の為に待機させておきたいのですが……」
「それは心配しなくてもいいわ。私は回復魔法を使えますので。ただ、致命傷は無理ですが」
「充分だ」
レベルが30以上も離れているゴーレム相手に耐えきった鉄女のことだ。自分の攻撃が当たっても、擦り傷にしかならないだろうし。
「よし、これが俺の武器だ」
「へぇ、珍しい武器を使うんだな…………ちょっと分銅が大きくないか?」
「まぁ、魔物用と言っていたし、重量は普通のより5倍もある」
「5倍!? こりゃ、当たったら痛そうだなぁ」
そう言いつつも、余裕が見えていた。魔法がないなら、防ぎきってみせる自信があるのだろう。
「では、俺が終わりと言うまで攻撃し続けるからな。まぁ、そんなに長くならないだろう。ただ、気絶したり、致命傷を受けてメルさんからストップが掛かったら不合格……でいいか?」
「構わないさ。1時間だろうが、耐えてみせる!!」
「よし、始めるが、周りにいる観客は絶対に中へ入ってくるなよ。巻き込まれたら死ぬぞ」
そう言いながら、分銅を回してスピードを稼ぐ。
「ーーーー行くぞ」
分銅が投げつけられ、身体の中心へ向かっていく。エリラはそれをナックルで『パリィ』を使って受けていた。
金属音が鳴り響き、初めの一撃は完璧に無傷で防いでいた。
「ほぅ、あっさりと弾くとはやるじゃないか」
「あっさりとは言い難いけどな。やっぱり、重いなぁ」
5倍の重さになっている分銅は弾けるが、思ったより重い衝撃を感じていた。
「まだ終わらんぞ」
今度は鎌を投げていた。鎌を上空へ投げ、上から刈るように落ちてーーーーエリラが上に気を取られている隙に、下から弾かれていた分銅が迫ろうとしていた。
上と下の挟撃が迫り、エリラは後ろへ逃げようと一歩だけ下がっていたが、哲也からの言葉を思い出していた。哲也は『パリィ』を使って弾いて見せろーーて言われていたので、この攻撃も『パリィ』で防がなければならない。
「ふっ!」
両手で上と下からの攻撃を同時に『パリィ』で防いでいた。だが、タイミングが少しズレて、鎌が肩を擦り、小さな傷が出来ていた。
「ふむ、これはどうだ?」
『パリィ』で両方の武器を弾いた後を狙い、哲也は長い鎖で鞭のように使い、脇腹を狙っていた。
「くっ!」
流石に両手を使った後では、すぐに反応出来ずに鎖を脇腹に受けていた。そのダメージはーーーー皆無だった。防ぎきれなかった悔しさで声に出していたが、痛みは一瞬だけですぐに構えていた。
「硬さは一級品だな。だが、攻撃はまだ続けるぞ」
「望むところだッ!」
まだ試練は終わらない。
哲也が『パリィ』を登録出来るまではーーーー!!
ーーというように、哲也の勝手なルールで、試練はまだまだ続くのだった…………
エリラは合格出来るのか、次回をお楽しみにに!




