第9話 狂戦士
はい、続きです!
あぁ、いい天気だなぁ。こんな時は、布団の中に潜るが良い。「…………テツ…さ……!」外が煩いな。せっかくの天気なんだ、ゆっくりさせてくれよ? ふわぁ、眠いな…………「テツヤさぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーん!! 」
「煩いわァァァァァァ!!」
「キャァッ!?」
毛布を跳ね除けて、煩くする者を怒鳴りつく。そこには、毛布を跳ね除けられて、驚くカレルがいた。
「人が寝ている時ぐらいは静かにせんかッ!!」
「なっ! もう昼ですわよ!? ダラダラとしてないで、起きなさいよ!!」
「しかも、何でお前がここに居るんだよ! 宿を教えた覚えはないんだが!?」
「決まっているでしょ、権力を使って探させたのよ!!」
「む、無駄な権力の使い方を……そうだった、仮にも貴族だったんだよな。お前は」
「仮にではなく、私は貴族ですわよッ!?」
目の前にいるカレルは男爵の貴族であり、位は低いといえ、知り合いの冒険者を探させるぐらいは出来るだろう。
「はぁ、何を考えているんだよ。お前は女の子だろ? 男の部屋に乗り込むなんて、はしたないと思わないかね?」
「なっ、こっちのセリフですわよ!? あれから3日もギルドに来ないなんて、何を考えているのかしらッ!?」
そう、カレルの言う通りに哲也はボブゴブリンを討伐した後、3日間はギルドへ顔を出していなかった。勿論、いつもギルドで待ち合わせしていたカレルとも顔を合わせてない。
なかなか来ない哲也に焦れたカレルは貴族の権力を使って、哲也が泊まっている宿を見つけたのだ。そして、今に至るわけで。
「何故、ギルドに来ないのよ? ようやく、正式に冒険者として認めてくれたのに……」
カレルはボブゴブリンを倒したことで、家から冒険者としてやってもいいと許可を貰えたのだ。なのに、次の日にパーティの仲間が来てなかった。更に次の日も、またの次の日も…………。
カレルじゃなくても、誰でも心配はするだろう。少し悲しそうな表情になったカレルに、哲也は頭をゴシゴシと掻く。
「あー、ここから俺の考えなんだが、聞いてくれるか?」
「はぁ、ギルドに来なかった理由になるなら聞きますわよ?」
大人しく聞いてくれるようで、立ち上がっていた哲也はいそいそと座り込む。そして、口を開きーーーー
「冒険者って、割り合わなくね?」
口を開けて呆気に取られるカレルをよそに、哲也は話し続ける。
「考えてみろよ。命を賭けて、討伐や採取をするんだが、貰える報酬が危険と釣り合っていないじゃないか! 街の外に出たら、魔物がいるんだぞ! 採取の仕事であっても危険がある。死んだら、それまでなんだぞッ!?」
「そ、それはそうですけど! 魔物を間引きしないと、魔物が増えていって危険が増えますし、採取をしないと材料が足りなくなる店も出ますわ。危険な仕事ですが、冒険者は志願する側であって、強制はされていませんわ。でも、テツヤさんみたいな強き者がやってくれるとギルドも民達は安心出来ますわ」
「はぁ? 俺が強き者?」
「そうです。少なくとも、私はそう思っていますわ」
真剣な眼で見られ、後ずさる哲也。だが、言われっぱなしの哲也ではない。
「いやいや、強き者ならこの前の猪の魔物から逃げたりしないだろ?」
「臆病者でいるのは悪いとは言いません。生き残るために、時に逃走するのは間違いではありませんわ」
「ッ、だ、だったら最初に会った時は見捨てようとしていただろ?」
「そんなこともありましたわね……。あの時を思い出すと情けない姿だと思いますが、今は違うでしょう? 一緒に強くなろうと頑張って来たのですから」
「うっ……」
何も言えなくなったと理解したのか、カレルは勝ち誇ったような表情になっていた。
その表情にイラッとして、両頬を掴んでいた。
「いたァ! いふぁ、あたたた!?」
「ムカつくなぁ。お前が勝ち誇るとムカつく顔にしか見えん」
なんでよ~と言いたいかもしれないが、意味不明な言葉にしか聞こえなかった。哲也は深い溜息を吐き、鎖鎌を持ってドアの前に立つ。
「仕方がねぇ。まだしばらくは割り合わない仕事に付き合ってやるよ」
「いたたぁぁ……、だ、大丈夫ですわ。いつかは、冒険者の仕事が好きになりますわよ!」
「そんな日が来るとは思えんがな」
そう言い、ギルドに向かう2人共。ギルドへ向かっている時、カレルが気になったことを聞いてきた。
「あ、泊まっていた部屋のことなんですが、和風の雰囲気がありましたわね。そういう部屋が好きなんですか?」
「あぁ、日本にいた時は和風を好んでいたな。あの和式の部屋を見つけた時は驚いたものだ」
哲也はこの世界に来てから、ずっとその部屋に泊まっている。和風な雰囲気があり、畳が敷いていて更に丸テーブルと座布団と布団までも置かれている。
「確か、東の国も似たような部屋だと聞いていますわ。ここから遠いですが」
「ふーん、東の国とかテンプレなアレだな」
テンプレ? と首を傾けているカレルを放って、この世界はどんな風になっているか考え込んだ。あの女神が作ったなら、日本を知っていて東の国みたいなテンプレが出来上がったってこともあり得る。
たわいな話をしていたら、ギルドに着いた。
「さぁ、ブラックな職場に着いたぞ」
「あ、あの言葉の意味はわかりませんが、嫌な感じがしますわ……」
「はいはい」
返事は一回! と注意されながらギルドの中へ入って行くとーーーー
「ようやく来やがったか!」
仁王立ちをする女性がいた。頭の上にはふわふわしている狼の耳があり、見た目はガサツなお姉さん系という感じ。こっちに向かって、ニヤッと犬歯を見せていた。
その姿は見覚えがなく、ハテナを浮かべる。
「は? 誰だよ?」
「おい、このチラシを貼ったのはお前らだろ?」
手に持って突き出していた物は、この前にパーティ募集をしていた紙であった。哲也は回収するの忘れていたようで、ボブゴブリンを倒した今は、パーティを募集はしていなかった。
「あー、悪いが……」
「私の力が役に立つだろう! さぁ、採用しろ!!」
「だから……」
「私の職業は狂戦士! だが、スキルは防御系で占めている!!」
「おいーー」
「私のレベルは15! 歳は16歳! ちなみに彼はいなーーーー」
「うっせぇぇぇぇぇ!! 次々と話をすんじゃねぇよッ! こっちが話せねぇだろ!? 最後のは明らかにいらない情報だよな!?」
ついに切れた哲也。
「む、何だよ?」
「だから、もうパーティ仲間は募集をーー」
「待って! ちょっと、来て!」
「お前までも遮るのかよ……」
話を遮られて、不機嫌な哲也の手を引っ張って、狂戦士の女性が聞こえないように小さな声で話を始める。
「仲間に入れるのはダメなの?」
「は? クエストは終わっただろ。わざわざ話を聞かない女を入れたいのかよ?」
「話は聞いて欲しいけど、前衛がいたらその後が楽になるわよ。防御のスキルを持っていると言っているし」
「つまり、お前はおとーーーー肉壁が欲しいわけか」
「なんで酷い方に変えたの!? 囮の方がマシだよ!? と、とにかく、その後のために、パーティのメンバーを増やしていくことを考えて欲しいの」
「ふむ……」
ここはカレルの言う通りだ。パーティのメンバーを増やせば、戦闘が楽になるだろう。防御のスキルを持っているし、カレルを守る盾になれるならパーティのメンバーとしては言う事はない。まず、試しに組んでみて良かったら仲間にいれ、合わなかったら解消すればいい。そう思い、一時的のパーティ仲間になって貰おうと女性がいる方へ向かったらーーーー
「相談してみーーーー」
「わかった! さぁ、勝負をしろ!」
「…………は?」
ここはギルドの地下にある修練場。冒険者同士での衝突もあり、闘いで決着を付けると決まったら、修練場でギルド員の監視付きで戦うことになっている。
「なんで、こんなことになるんだよ」
「お前はこう言おうとしていただろ? 仲間になりたければ、俺に実力を見せよーーーーと」
「一文字も合ってねぇ」
なんで熱血な言い方をしているんだ。まさか、俺がそういうタイプに見えたわけ?
そう考えると笑える。まさか、この世界に来てから変わってしまうとは。まさかの熱血タイプとはな、クールに振る舞っていたと思っているんだが…………はぁっ、引きこもりたいわぁ…………。
「あ! テツヤさん、しっかり!!」
「え、あぁ……。帰りたくなったわ」
「あぁっ!? ネガティブになっていくぅぅぅ」
気が抜ける会話に狼の耳を持つ女性はククッと笑う。
「やっぱり、面白そうな奴らだな」
「そういえば、どうしてこのパーティに入りたいと思った?」
よく考えれば、哲也はまだ素人の新人で片方は嫌悪されている魔法持ちのカレル。普通の神経だったら、そんなパーティへ入りたいとは思わないだろう。だが、目の前の女性はパーティに加えて欲しいと。
「面白そうだったからだ!!」
「…………え、それだけ?」
「あん? それだけだ」
「もしかして、馬鹿なのか……?」
中身は残念なのかもしれない。そう判断した哲也だったが、防御のスキルを持っていることを思い出し、どれくらい耐えれるか試してやろうと考えた。
「あぁ、自己紹介してなかったな。俺は哲也だ」
「私は狼の獣人、エリラ・ディランだ。狂戦士に獣人である力強さと防御のスキルでの硬さ! それを味わうがいいッ!!」
「そうか。早速、試させて貰おう」
「何をーー」
ーーーー言葉は続かなかった。エリラは壁まで吹き飛ばされていたからだ。哲也は言葉通りに試すため、『衝撃の魔眼』で先制していたのだ。
「危な、観客を巻き込む所だったわ」
標的だけに当たるように範囲を絞ったが、エリラが吹き飛ばした時、後ろで観客として来ていた冒険者が巻き込まれそうになっていた。ギリギリで横を通ったので、怪我はない。ただ、腰を抜かしてしまったが。
「ちょっ!? や、やり過ぎでは……?」
「大丈夫だろ? 本気の三分の一しか使ってないし。それに、エリラは防御のスキルで硬いんだろ」
倒れているが、すぐに立つだろうと待っていたが……………………全く動く気配はない。
「……え?」
「み、見てきます!」
さっきまで、呆気に取られていたギルド員がエリラに駆け寄って様子を見に行った。座り込んで、様子を見たらーーーー手でバツの形を作って首を振っていた。つまりーーーー
「ーーは? 終わり!?」
「気絶したみたいですわね……」
狂戦士で強靭な身体を持つ獣人のエリラは、手加減した『衝撃の魔眼』によって、一発KO。目を回して耳をペタンと倒して気絶していたのだった…………




