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第三話

 そんなこんなでクロキリにとって、なんとももどかしい日々が過ぎた。


 やはり正義の国はむかつく。だが、それをどうにかすることもできない日々だ。そんな日々の中、クロキリ達の村に、望まれない来訪者が現れた。


「くふふふふふふふふ、シバヤマさん、今年納めるべき税が足りてませんよ?」


 ニヤニヤと嫌な顔をする男が無数の兵士と共にその村に訪れたのだ。そやつはシバヤマの家の中、椅子に座る。


「今年は雨で不作だったのです。申し訳ないのですがこれ以上支払ってしまうと、この村の者達が生きていくことができません」


「駄目駄目、あなた達は正義の国の恩恵の元生かされているんでしょ? なら、自分たちの命よりも税を優先しないと」


 正義の国の使徒であるその男がそうほざくや否や、シバヤマの家の側で話を聞いていた村人達は顔をゆがませる。


「無茶苦茶だ!!!!」


 村人の一人の男性が拳を握りしめ、今にも殴りに行かんとしている。


「駄目だ!! あいつらにたてついても勝てない。あいつは正義の国の8番隊隊長、ミド。かなりの実力者だ」


「だが、このままでは……」


 ミドと呼ばれた鎧を着た男は、はっきりとした口調で言葉を発した。


「足りない税の分は、この村の者達を奴隷として正義の国に迎えいれることで補うとしましょう。ざっと計算して、20人くらいかな」


 見た目は青年であるのにどぎつい言葉を発するミドに、皆顔をしかめる。


「それは、困ります」


 シバヤマは当然そう口にするが、ミドは無視して部下達に告げる。


「イキのいい奴を、20人捕まえろ」


 その言葉を皮切りに、この村は戦場になった。


「ふざけるな!!!! この村の者達はみんな仲間なんだ!!!! 奴隷になんかさせるはずないだろ!!!!」


 そんな声が響くなか、ミドは笑う。


「ふふふふふふふ、我らにたてつくか。ならしょうがない、全員奴隷にしろ!! 拘束中に勢い余って殺してしまってもかまわん」


 そんな戦いの始まりをクロキリは、遠くから眺めている。


「どうすれば……」


 クロキリは拳を握る。この村の者達は皆、パートナーカードを有している。そしてそれが具現化したモンスターで、正義の国の兵士達と戦っている。クロキリの幼馴染のレイラもだ。


 だがクロキリはそれを、遠くから眺めるだけ。


「あんたは行かないの?」


 アリシアがクロキリに対して問いかける。


「行きたいよ!!!!」


 クロキリは、怒鳴った。


「でも、僕が行っても、足手まといになる……」


 クロキリは悔しそうに、そう告げる。


「僕のパートナーカードは戦闘力0で、さらに能力も使えない君なんだから!!」


「気に食わないわね」


 アリシアがクロキリに向かって、そう告げる。


「そうやって合理的に考えて動かないの、悪い癖よ。頭で考えたことの通りにことが進むかなんて、分からないのにさ」


 アリシアはため息をついてから言葉を続ける。


「もしも本当にあんたにやれることがないと思うなら、さっさと逃げなさい。見てるだけなら、ここから逃げても結果は変わらないでしょ? 自分は戦いに参加しないけど勝つことを祈るために遠くから見てるだなんて、最高に意味不明よ」


 アリシアの言葉にクロキリは歯を食いしばるが、足を動かすことはしなかった。


 クロキリ達から少しだけ離れた場所で行われるその戦いで、ミドのパートナーカードである"首なし騎士"が手に持つ槍で、村人達に斬りかかった。その一撃で、村人達の数人が倒れた。


 そんなミドの前、炎をまとうリスが現れる。レイラのパートナーカードである炎纏いリスが飛び掛かったのだ。


 炎を吐いて首なし騎士に攻撃するが、勝負は一瞬だった。首なし騎士は炎纏いリスの炎をものともせず、逆にその槍で、炎纏いリスを串刺しにした。


 瞬間、炎纏いリスは消える。一度倒されたパートナーカードは消え、丸一日再登場しないのだ。


「ふふふふふふふ、お嬢さん、残念だったね。君のパートナーカードは消えた。これで、終わりだ」


 ミドの操る首なし騎士がレイラに向かって槍を引いた。そしてその槍をそのまま、レイラに向かわせる。


「ひ、ひぃ!!!!」


 レイラの顔はひきつっている……、その刹那、首なし騎士の方に飛び石が向かい、胴体の鎧に当たって鈍い音を鳴らした。それにより首なし騎士は動きを止め、存在していない顔ごと胴体を石が飛んできた方に向けた。


「お、俺が相手だ!!!!!!」


 戦いの場に近づいていたクロキリが、そう叫ぶ。


 そのクロキリの様を遠くで見ていたアリシアは、不思議と笑みを見せていた。




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