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第四話

 クロキリはミドの側に立つ。その手は、震えている。


 クロキリは理解している。自らは勝てない。勝負にすらならない。自らが前に出たことになんの意味もない。いたずらに自らの命の終焉を迎えさせるだけだ。だがそれでも、理由なんてなくクロキリは、向かわねばならないと思った。


「ふふふふ、ザコがたった1人現れても結果は一緒だよ」


 ミドは笑う。


「でも、さっきの君の登場はむかついた。まるで自らがヒーローであるかのような登場だったんだもん」


 首なし騎士がクロキリの方に向かう。


「だから、この女の子よりも先に殺してあげる。君達を殺せば、他の村人達の戦意は喪失するだろうからね!!!!」


 首なし騎士がその槍をひいた。


(ああ、終わりだ)


 クロキリは、そう思った。首なし騎士の戦闘力は、とてつもなく高い。おそらくパートナーカードとして、かなりレアリティが高いだろう。レア以上は少なくともある。


 だからこそ首なし騎士だけで、この村の住人達のほとんどを蹂躙できていたのだ。


 だが、首なし騎士は足を止めた。いや、その場にいた全ての者がみな、動きを止めた。


「なんだ、この殺気は?」


 恐ろしいほどの殺気の中、唯一言葉を発っせたのは、ミドであった。ミドはとっさにその殺気の主を見る。


「きゃはははははははは、こんにちは。一応レジェンドレアさせてもらってます、闇の神アリシアちゃんで~~~~~す♡」


 付近の家の屋根の上に立つアリシアの放つオーラにより、昼なのに付近は薄暗くなっていた。


「闇の神、アリシアだと?」


 ミドは訝しそうな顔で、アリシアを見る。


「もし本当なら君は、僕が"首なし騎士"を引いたパック"闇の神の軍勢"の、トップレアじゃないか!!」


 ミドのその言葉を無視してアリシアは、クロキリの方に向く。


「ちょっとだけ見直したわ。この村が侵略されてるのをただただ見てるだけの臆病者だと思ってたけど、その足を進められたのね」


 アリシアはクロキリの横に瞬間的に移動し、笑う。


「手伝ってくれるのか?」


「きゃはははははははは、気まぐれに手伝わず、気まぐれに手伝う。それがあたしよ」


 アリシアは一枚のカードをクロキリに渡した。


「これ、あんたが健気に畑を耕してる間に散歩してたら拾ったの。特別に使わせてあげる」


・汎用カード:始まりの闇

 効果   :闇属性の最低レベルの攻撃を与える


 そのカードを見たミドは、鼻で笑った。


「はっ、それは、最弱レベルの攻撃カードじゃないか」


 ミドは汗を流しながらも、そう告げる。だがクロキリはミドの言葉に耳を貸さず、アリシアに対して微笑む。


「力を貸してくれるんだね」


「気まぐれにね」


「ありがとう」


 クロキリは"始まりの闇"のカードを手に構えた。


「汎用カード、始まりの闇を使用する。それにチェインし、闇の神アリシアの効果を発動する!!!!」


 アリシアの目が、金色に光った。


「あんたの体力をあたしがもらった分、そのカードは強化される。どのくらいの体力をくれるの?」


「全部、渡すよ。僕は絶対に、こいつらに勝たないといけないんだ」


「きゃはははははははは、いいわね、熱いじゃない」


 アリシアはとても満足そうに笑った。そして、クロキリの手に構えられている"始まりの闇"のカードが、姿を変えた。真っ黒な巨大な闇となり、正義の国の兵士達の方に向かう。


「馬鹿な、こんなの、最弱レベルの攻撃カードの威力じゃない!! まるで、最上級レベルの……」


 正義の国の兵士達が、そう言葉を発する。そして、地面にしりもちをついた。


 だがその攻撃が終わっても正義の国の兵士達は死んでいなかった。その攻撃は兵士達からずれ、天に向かったのだ。まるで空に真っ黒な太陽を作るかのようなその攻撃により、傷ついた存在はいなかった。


「きゃはははははははは、気絶する前にあえて攻撃の軌道をそらしたのね。いい判断よ。その攻撃が直撃してたら兵士達だけじゃなく、村人達も無数に死んでいた。いや、この村が滅んでいた」


 アリシアは体力を全て渡したことで気絶してしまったクロキリを見て、笑う。


「は、はははははは、た、倒れやがったぞ、よ、良かった……」


 ミドが腰を抜かした状態で、息を吐いた。


「あら、安堵するのは早いんじゃないかしら? 闇の神を前にして、のんきなものねぇ」


 そう口にするアリシアの目は、先程の攻撃により残るオーラでまるで夜のようになったその場所で、一層金色に光った。

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