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第二話

(しかも、効果も全くとして活用できてない)


"汎用カードを使用する際に体力を消費し、消費した体力に伴い、そのカードを強化する"という効果をクロキリは眺める。


(汎用カードをってところが、悩みの種なんだよねぇ)


 クロキリはモニョモニョとした表情を作る。


(レア度にもよるけど汎用カードは1枚買うのに、数か月分の給料を要するほどに高価なものだ。しかも基本使い切りで、一回使うと消える。その汎用カードを前提にした能力ってさ……)


 クロキリは頭をポリポリとかいた。


「ほんと、不憫なやつね」


 クロキリの悩みを無視するかのようにアリシアがクロキリに対して、そう口にした。


「必死に頑張って作った野菜や米もそのほとんどを正義の国にとられてしまうってのに、頑張っちゃってさ」


「しょうがないよ。確かに税はしんどいけど、僕ら小さな村が正義の国に歯向かったら、一瞬で滅ぼされちゃうからさ」


「ほんと、お利口ねぇ、愚かなほどに」


 アリシアはそっぽを向いて、そう口にした。


 クロキリはアリシアを見る。


「君がめちゃくちゃ強いカードだったら、正義の国に一矢報いることができたかも知れないんだけどね」


「きゃはははははははは、パートナーカードが自らの望むものじゃなかっただけで、戦うのから逃げて畑仕事してるあんたじゃ、あたしがいくら有用でも無理よ」


「僕のパートナーカードなのに、ひどいこと言うなぁ」


 そんなやり取りをするアリシアとクロキリ。


「まぁまぁ、おちついてお茶でも飲もうよ」


 レイラのその言葉によりクロキリも鍬を置いてアリシアの横に座り、レイラが持ってきたそれを飲む。


「ふぅ、一仕事した後のお茶は最高ね」


 アリシアが、満足そうな顔をしている。


(君は、何もしてないような気がするけどなぁ)


 そんなことを思うクロキリだ。


「正義の国と戦う、か……」


 クロキリは先程アリシアに言われた言葉を小さく繰り返した。クロキリは遥か昔、確かに正義の国を倒したいと思っていた。だが利口なクロキリは、その思いを自らの心の中で消した。決して敵わないからだ。


 クロキリは、青空が広がる天を見る。


(この付近一帯は、正義の国に苦しめられている)


 クロキリは、そんなことを思う。


(とても高い税を納めなければ、正義の国に対する反逆とみなされて攻め込まれる。膨大な軍事力を有する正義の国に、勝てるはずがない。だから僕達この村の住人は、休みなく働いているのに貧相な暮らしを強いられている)


 実はクロキリは、この村の元からの住人というわけではない。当時のことを覚えているわけではないが、赤ん坊の状態でこの村の側に捨てられていたのを拾われ、この村で育ててもらったらしい。

 

 だからクロキリは元から属していたわけではないこの村が、大好きだった。


「おや、クロキリ、レイラ、アリシアちゃん、今日も畑仕事頑張ってるんだねぇ」


「熱中症にならないように気をつけなよ」


 そんな言葉を、道行く人々もかけてくれる。


「よし、昼からも頑張ろう、農作業を」


 クロキリは元気よく立ち上がった。その心の中、確かなるもやもやが生まれているのをクロキリは理解している。それは自らの心の中で消し去ったはずの正義の国に対する気持ちだ。


(昔、一度ためしたことがある)


 クロキリは少しだけ回想する。


 この村の長であるシバヤマがこの村に存在していた汎用カード"涙の如き石の雨"をクロキリに渡し、アリシアの能力と共に使用しようとしたことがあるのだ。


「いくよ、アリシア!!」


 クロキリは"涙の如き石の雨"を人差し指と中指ではさみ、叫ぶ。


「涙の如き石の雨!!!!」


 瞬間、付近に石が降り注ぐ。村から離れた場所で使用したそのカードの効果で、数十発の石が付近に落ちた。そしてそのカード自体も消えさった。


「さっきの攻撃は、強化されてましたか!?」


 クロキリは輝く目でシバヤマを見た。シバヤマは、頭をかいた。


「わし、そのカードが使われるのを見るの初めてだから、分からんわ」


 シバヤマのその言葉により、クロキリはなんとも言えない気持ちになった。


「じゃが、目を見張るほどの威力じゃなかったことは事実じゃのぉ」


 シバヤマが付近に落ちた石を見ながらそう口にした。


「きゃはははははははは、私は能力を使ってないわよ。すなわち、さっきの攻撃は強化もされてない」


 アリシアは堂々と、そう口にした。


「神であるあたしの能力を試してみようだなんて、おこがましいにもほどがあるわよ」


 つまりアリシアの気まぐれ一つで、かなり高価な"涙の如き石の雨"のカードが消え去ったのだ。シバヤマの目には、本物の涙がにじんでいた。




 そんなこんなで汎用カードがあったとしても、アリシアの能力を使えなかった過去があるのだ。


「ほんと、もっと君にやる気があったらよかったのになぁ」


 畑仕事を再開したクロキリは、相変わらず大木に腰かけているアリシアに対して、届くか届かないかの声量で、そう口にした。


「きゃはははは、あたしがやる気をだすかどうかは、あんた次第よ。今のあんたじゃ、あたしは絶対にやる気を出さないわ」


 アリシアはクロキリに届かない声で、そう口にした。

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