第5話「ゴミ拾い、何かを拾いかける」
清掃を終えてギルドへ戻ると、受付で報酬の銅貨6枚を受け取った。
俺が受付から離れた時、酒場の方から丸めた小さな紙包みが飛んできた。
床に落ちたそれが、俺の靴先で止まる。
「おい、ゴミチャンネル。落とし物だぞ」
酒場の席から、誰かが笑いながら言った。
「今日も9時ぴったりに入口でゴミ拾ってたからな」
「便利だよな。時計より正確だ」
「ほら、反響の還元金だ。ありがたく拾えよ、ゴミ拾い」
周りから笑い声が起きる。
俺は紙包みを拾った。
中には銅貨1枚と、雑に破った紙片が入っていた。
――時計代、と書かれていた。
「……なんだよ、それ」
意味はすぐに分かった。
俺がいつも同じ時間にダンジョン入口でゴミを拾っているから、酒場の連中が面白がって投げた金だ。
笑われているのは分かっている。
だが、銅貨1枚でも黒パンの足しにはなる。
俺は紙片ごと銅貨を握り、何も言わずにギルドを出た。
◆♢◆♢◆♢◆
その夜、俺は安宿の狭い部屋で《廃品収納》を開いていた。
最近回収したものを『分別』する
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・《疾風・残具》
・《暴炎・誤式》
・《断斬・欠技》
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どれも壊れている。
どれも失敗している。
――普通ならゴミだ。
だが――。
俺はまず、赤い残式に触れて動かすと、空中で離す。
小さな火が生まれた。
だが、前には飛ばず、指先でぱちんと爆ぜた。
「っ……」
次に青い残式を動かし、採取用ナイフへ重ねてみる。
――刃先から薄い斬撃が一瞬伸びた。
だが、机の端に届く前に途切れて消えた。
最後に、緑の残式を動かして、足元へ落とす。
――小さな風が吹いた。
ただし、前ではなく横へ。
足元から抜けた風に一瞬だけ煽られ、俺は椅子の上で体勢を崩した。
背中が壁にぶつかり、宙に浮いていた赤、青、緑の残式が床へこぼれていった。
「……やっぱり、全部ゴミか」
床に飛び散っていった3つの残式が、まだ淡く揺れている。
俺は痛む背中を押さえながら、手を伸ばした。
その時だった。
赤い火の残式が、緑の風に押される。
緑の風が、青い斬撃の切れた先を少し伸ばす。
青い線が、一瞬だけ火を纏って伸びる。
3つの残式が、ほんの一瞬だけ同じ向きを向いた。
「……何だ? 今⋯⋯?」
風も弱い。
火も小さい。
斬撃もすぐ途切れる。
それでも、何か今までとは違う感覚があった。
視界の奥で、職業『ゴミ拾い』のスキルツリーが淡く浮かんだ。
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《小物拾い》
《回収》
《分別》
《汚物耐性》
《廃品収納》
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見慣れた上へと伸びている枝葉ではない。
今まで何もなかった幹の『根元』に、灰色の細い根が1本だけ滲んでいた。
木の形をしているとは言え、このスキルツリーに根っこが生えた話は聞いたことがない。
だが、目の前の俺のスキルツリーには確かに根が生えていた。
未開放根幹スキル。
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【スキルツリー】
■《廃式奥義》
・構成残式
《疾風・残具》
《暴炎・誤式》
《断斬・欠技》
・残式消耗度⋯⋯3%
・成功率⋯⋯不明
・銘⋯⋯未確定
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「何だこれ……まさか」
俺は床に散った3つの残式を見つめた。
ただの失敗だったはずのものが、1つの形になりたがっているように見えた。




