第4話「ゴミ拾い、エラーとミスを拾う」
ダンジョン入口の焦げ跡を削り終えたあと、俺は石床に残った煤を綺麗に集めていた。
《廃品収納》の中では、さっき拾った赤い残式が小さく揺れている。
——《暴炎・誤式》
魔道具ではなく、魔法そのものの残式を拾えたのは初めてだ。
最後に入口脇に散らばっていた折れた矢を拾っていると、ダンジョンの奥から3人組の若い冒険者が戻ってきた。
先頭の剣士は肩で息をしている。
後ろの火術師は杖の先を焦がし、弓士は矢筒を半分ほど空にしていた。
「くそ、浅層の鼠に手間取った。入口まで追ってきやがって」
「あなたの剣技が浅かった、失敗してたでしょ」
「お前の火魔法も暴発してただろ」
3人は言い合いながら、入口の脇に腰を下ろした。
その足元に、青白い線が残っている。
俺は思わず視線を落とした。
剣士が放った技の残式が見えた。
敵まで届かなかったのか、石床の途中でぷつりと切れている。
普通の人には床についた浅い傷にしか見えないだろう。
だが俺にはその切れた先で震えている術式が見えていた。
「何見てんだよ、ゴミ拾い!」
剣士が不機嫌そうに俺を睨む。
「いや、地面に傷が残ってたから」
「掃除なら勝手にやれ。俺の方をじろじろ見るな」
――失敗した技。
胸の奥が少しだけ引っかかった。
俺は何も言わず、その傷跡が残る地面に触れる。
青白い線は、指先に吸いつくように震えた。
さっき拾った火の残式とはまた違う。
熱ではなく、刃筋みたいな鋭さが残っていた。
失敗した途切れた斬撃。
敵に届かなかった技。
それはただの傷跡ではなかった。
魔道具に残った風の残式。
魔法が暴発して残った火の残式。
そして今、目の前にあるのは人が放った技の『残式』だ。
「……技でも、拾えるのか」
思わず、小さく声が漏れた。
もしかすると、術式を使うものなら、魔法でも、技でも、魔道具でも、失敗すれば残式となるのではないか。
理屈は合う。
そして、残式になるなら俺の《廃品収納》は、それを廃品として拾える。
指先でなぞると、青い残式が石床から剥がれた。
——《断斬・欠技》を拾いました。
——《廃品収納》に登録されました。
視界の端に、3つの残式が並ぶ。
―――――
《疾風・残具》――魔道具に残った風の残式。
《暴炎・誤式》――魔法が暴発して残った火の残式。
《断斬・欠技》――敵に届かなかった技の残式。
―――――
初めて、違う種類の壊れた術式が3つも揃った瞬間だった。
それまでただのゴミに見えていたものが、俺の中で少しだけ違う意味を持ち始めていた。
「おい、ゴミ拾い。そんなところで突っ立ってると、Fランクの鼠でもお前なら噛まれたら死ぬぞ」
若い剣士が笑った。
「分かってる。入口の手前だけだ」
そう答えたが、今はそれどころではなかった。
――早く試してみたいことができた。




