40 骨騎士、影潜を共有する
闘技場に残った静寂が、ようやく薄れていく。
レイセルはゆっくりと振り返り、スケルトン獣人たちを見渡した。
〈レイセル〉
「……お前たち、何人残っている?」
狼人スケルトンが一歩前に出る。
骨の胸郭がわずかに上下し、声が漏れた。
〈狼人スケルトン〉
「戦えたのは……俺たち七体だけだ」
〈虎人スケルトン〉
「全員あんたに従う。
もう……あんた以外についていく場所なんてないしな」
レイセルは軽く息を吐き、短く名乗った。
〈レイセル〉
「……俺はレイセル。魔王軍に属している。
こっちはリリだ」
リリが小さく手を挙げる。
〈リリ〉
「リリです。レイセル様の補佐をしてます」
スケルトンたちは一瞬だけ互いに顔を見合わせ、
すぐに受け入れるように頷いた。
〈狼人スケルトン〉
「……そうか。なら、改めて頼む」
レイセルは静かに頷いた。
〈レイセル〉
「わかった。
……ラナという虎人はいなかったか?」
スケルトンたちが互いに顔を見合わせる。
〈虎人スケルトン〉
「ラナ?女の虎人か?」
〈レイセル〉
「そうだ。
ガールナ村で攫われた」
虎人スケルトンはゆっくりと首を振った。
〈虎人スケルトン〉
「闘技場には……女の獣人はいなかった」
狼人スケルトンが低く呟く。
〈狼人スケルトン〉
「……魔物使いが言ってた。
“女の獣人は別の使い道がある”って……
多分、奴隷として売られる……」
レイセルの胸がわずかに締めつけられる。
〈レイセル〉
「……フォレスト王国のドラガン商会だな」
スケルトンたちは静かに頷いた。
〈虎人スケルトン〉
「生きてるなら……そっちの線が濃い」
リリが小さく息を呑む。
〈リリ〉
「すぐに行きましょう!」
〈レイセル〉
「まずはガオランの元に戻る。
……これだけの人数だと目立つ」
リリがレイセルの影を指差す。
〈リリ〉
「レイセル様の“群れ”になったんですから……
きっと影潜が使えますよ」
スケルトンたちが一斉に首をかしげる。
〈狼人スケルトン〉
「……影……潜……?」
〈リリ〉
「群れのリーダーが持つスキルは、群れにもある程度共有されます。
死者の軍団みたいな特殊スキルは無理ですけどね」
〈虎人スケルトン〉
「……そんな……すごいことが……?」
リリは胸を張る。
〈リリ〉
「魔物なら当然ですよ!」
レイセルは肩をすくめた。
〈レイセル〉
「……俺にはよくわからんが、やってみろ」
狼人スケルトンが恐る恐る影に足を入れる。
〈狼人スケルトン〉
「……お、おお……沈む……!」
骨の身体が影に吸い込まれるように沈み、
七体のスケルトンが次々とレイセルの影へと溶けていった。
影の中から、くぐもった声が響く。
〈虎人スケルトン(影の中)〉
「……これ、めちゃくちゃ楽だな」
〈狼人スケルトン(影の中)〉
「……広いし、勝手に移動できる。
これならどこへでもついていけるな」
リリは満足げに鼻を鳴らす。
〈リリ〉
「これで問題解決ですね!」
〈レイセル〉
「……いくぞ」
レイセルは影を引き連れ、静かに闘技場を後にした。




