32 骨騎士、影に潜む
レイセルは静かに目を閉じ、
胸の奥に残るセレナの言葉を噛みしめた。
“あなたはスケルトンナイト、ランクCの魔物でしかない”
その現実は重い。
だが、逃げるつもりはなかった。
〈レイセル〉
「……スキル獲得」
魔力を集中させると、
淡い光が広がり、視界に魔法陣が浮かび上がる。
リリは緊張した面持ちで見守っていたが、明るい声を出した。
〈リリ〉
「レイセル様なら絶対いいスキル取れますよっ!
ほら、魔物らしい戦い方の第一歩です!」
レイセルは魔法陣に手をかざした。
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使用可能魔力:500
獲得可能スキル一覧
・骨強化(50)
・魔力感知(80)
・影潜(300)
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〈レイセル〉
「リリ、影潜ってどんなスキルがわかるか?」
リリは少し悩んで答える。
〈リリ〉
「影潜……!
確か自身の影に潜んだり、影のまま移動できるスキルですね!
影潜にしますか?」
レイセルは静かに頷いた。
〈レイセル〉
「大国相手に正面から突っ込むのは愚かだ。
なら──影で動く方がいい」
レイセルは“影潜”を選択する。
魔力が一気に吸い取られ、身体の奥が熱くなる。
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スキル獲得:影潜
魔力:200
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魔力が吸い取られた余韻が、骨の奥にじんわりと残っていた。
レイセルはゆっくりと拳を握り、開く。
〈レイセル〉
「……これが、“影潜”」
身体の輪郭が、わずかに揺らいだ気がした。
影が、呼吸をするように脈打つ。
リリが目を輝かせる。
〈リリ〉
「レイセル様、試してみましょう!
影に入るって、どんな感じなんでしょうね……!」
レイセルは足元に落ちる自分の影を見つめた。
焚き火の明かりに揺れる黒い輪郭。
深く息を吸い──
影へと意識を沈める。
その瞬間。
世界が、裏返った。
音が消え、色が消え、
すべてが“薄膜越し”になったような静寂。
〈レイセル〉
「……これは……」
自分の身体が、影と同化していた。
輪郭は溶け、黒い液体のように地面へ沈んでいる。
リリの声が遠く聞こえた。
〈リリ〉
「レイセル様!? 消えちゃいました!?
え、え、えっ……どこですかっ!?」
レイセルは影の中で動いてみた。
地面を滑るように、抵抗なく移動できる。
──速い。
──気配が消える。
──これなら、敵の背後にも回り込める。
〈レイセル〉
(……これが、魔物の戦い方か)
影の中から、レイセルはリリの足元へ移動した。
リリはきょろきょろと周囲を見回している。
〈レイセル〉
「リリ」
〈リリ〉
「ひゃあっ!? 足元から声がっ!?」
レイセルは影からゆっくりと浮かび上がった。
黒い液体が形を成し、骨の身体へ戻る。
リリは目を丸くして叫んだ。
〈リリ〉
「す、すごいですレイセル様!!
本当に影から出てきましたよ!?
これ、絶対強いです!!」
レイセルは静かに頷いた。
〈レイセル〉
「……確かに、これは使える。
正面から戦う必要はない。
影から動けば、敵は俺を捉えられない」
リリは嬉しそうに尻尾を揺らした。
〈リリ〉
「レイセル様、ついに“魔物らしい戦い方”ができるようになりましたね!」
レイセルは少しだけ目を伏せた。
〈レイセル〉
「ああ。
勇者だった頃には、考えもしなかった戦い方だ」
影潜は、
“勇者レイセル”では決して選ばなかったスキル。
だが今のレイセルには、
“魔物として生きるための力”が必要だった。
〈レイセル〉
「これで、少しは戦えるな」
リリは笑顔で頷いた。
〈リリ〉
「はいっ!
レイセル様は、もっともっと強くなれますよ!」
レイセルは影を見つめた。
その黒は、
かつての自分が恐れていた“魔物の力”そのもの。
だが今は──
その黒が、確かな武器に見えた。
焚き火の炎が揺れ、
レイセルの影が静かに伸びる。
その影は、
まるで新たな道を示すように、森の奥へと続いていた。




