30 骨騎士、反省する
焚き火が小さく揺れ、夜の森に赤い光を落としていた。
ガオランは疲れ果て、丸太の上で眠っている。
その寝息は荒いが、どこか安心したようでもあった。
レイセルは少し離れた場所で、静かに自分のステータスを開いた。
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レベル:7
魔力:500
体力:900
敏捷:450
知力:400
力:測定不能
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〈レイセル〉
「……まだまだ俺は弱い。
ミラージュでの戦いは……ただの勢いだった」
その時、背後から小さな声がした。
〈リリ〉
「レイセル様……」
振り返ると、リリがそっと近づいてきていた。
その表情は、いつもの明るさとは違う。
〈リリ〉
「セレナ様が……来るそうです」
〈レイセル〉
「……セレナが?」
言い終わるより早く、
焚き火の光がふっと揺れた。
淡い紫の魔法陣が地面に浮かび上がり、
その中心から黒いスーツ姿の女性が現れる。
魔王軍人事担当──サキュバスのセレナ。
〈セレナ〉
「……お久しぶりです、レイセル様」
その声は丁寧だが、
表情は一切笑っていなかった。
レイセルは立ち上がり、静かに問う。
〈レイセル〉
「どうかしたのか?」
セレナは一歩近づき、レイセルを見上げる。
その瞳は、冷静で、鋭く、そしてどこか心配げだった。
〈セレナ〉
「まずは……獣人たちを魔王軍へ勧誘してくださっていること、
心から感謝します。
あなたの行動は、魔王軍にとって大きな利益になっています」
リリが嬉しそうに胸を張る。
〈リリ〉
「レイセル様、褒められてますよ!」
だが、セレナの次の言葉は冷たかった。
〈セレナ〉
「──ですが、前回の戦い方は最悪でした」
レイセルは息を呑む。
〈レイセル〉
「…………」
セレナは淡々と続ける。
〈セレナ〉
「ミラージュ程度の街なら、
あなたの“感情任せの突撃”でも通用したでしょう。
しかし──」
彼女の声が低くなる。
〈セレナ〉
「フォレストリア王国は“大国”です。
あなたが同じ戦い方をすれば……
一瞬で殺されますよ、レイセル様」
リリが不安そうにレイセルの腕を掴む。
〈リリ〉
「レイセル様……」
セレナは続ける。
〈セレナ〉
「あなたはスケルトンナイト。
ランクCの魔物でしかありません。
ミラージュに強者がいなかったのは、ただの幸運でした」
レイセルは拳を握りしめた。
〈レイセル〉
「……分かっている……」
〈セレナ〉
「あなたは強くなっています。
ですが、まだ“魔物としての戦い方”を知らない。
勇者の頃の癖が抜けていません」
レイセルは目を伏せる。
確かに、ミラージュでは怒りのままに突っ込んだ。
あれは勇者だった頃の戦い方だ。
セレナは静かに言った。
〈セレナ〉
「もっと魔物らしく。
もっと冷静に。
もっと効率的に。
感情任せだけで戦ってはいけません」
レイセルは深く頷いた。
〈レイセル〉
「……分かった。
気をつける」
セレナは少しだけ表情を緩めた。
〈セレナ〉
「ええ。
あなたが死んだら、魔王軍は困りますから」
そして、紫の魔法陣が再び広がる。
〈セレナ〉
「では──引き続き、期待していますよ。
レイセル様」
光が弾け、セレナの姿は消えた。
静寂が戻る。
リリがそっとレイセルの手を握る。
〈リリ〉
「レイセル様……大丈夫ですか?」
レイセルは小さく息を吐いた。
〈レイセル〉
「……ああ。
もっと強くならなければならない。
魔物としても、魔王軍の一員としても」
焚き火の炎が揺れ、
レイセルの影が長く伸びる。




