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24 骨騎士、ミラージュの闇に怒る

夜の湖は、鏡のように静かだった。


水面に浮かぶ無数の灯りが、ゆらゆらと揺れ、

まるで星空が湖に落ちたかのような幻想的な光景を作り出している。


湖上都市ミラージュ。


水の上に建てられた家々は、青白い光を放ち、

夜風に揺れる灯籠が街全体を淡く照らしていた。


〈リリ〉

「わぁ……きれい……。

 こんなに綺麗なのに、裏では酷いことを……」


レイセルの頭は宙に浮かび、リリがその横を飛んでいる。


〈レイセル(頭)〉

「……表と裏の差が激しすぎるな」


二人は湖面すれすれを滑るように進み、

ミラージュの中心部へと近づいていく。


やがて、他の建物とは明らかに違う場所が見えてきた。


異質な大きな建物。

周囲には複数の見張りが立ち、

夜にもかかわらず松明が焚かれている。


〈リリ〉

「レイセル様……あそこ、絶対怪しいですよ……!」


〈レイセル(頭)〉

「ああ。隠す気がないみたいだな。

 少なくとも、王国の一部は関わっている」


見張りの兵士たちは、フォレストリア王国の紋章入りの鎧を着ていた。

盗賊ではない。

正式な兵士が獣人売買に関わっている。


その事実に、レイセルの視界がわずかに揺れた。


その時、建物の前で動きがあった。


〈兵士A〉

「交代の時間だ。中に戻るぞ」


〈兵士B〉

「おう。寒くてたまらん」


見張りが二人同時に動き、

扉が一瞬だけ無防備に開く。


〈リリ〉

「レイセル様! 今です!」


〈レイセル(頭)〉

「行くぞ」


二人は風のように滑り込み、

扉が閉まる直前に建物の中へ侵入した。


中は薄暗く、湿った空気が漂っていた。

階段が下へと続いている。


〈リリ〉

「……嫌な匂いがします……」


〈レイセル(頭)〉

「行くぞ」


二人は音を立てずに階段を降りた。


地下に広がっていたのは──

牢屋の列。


そして、鉄格子の中には、弱り切った獣人たちが横たわっていた。

痩せ細り、動く気力もない。

中には、もう動かない者もいる。


〈リリ〉

「……っ……!」


リリの声が震えた。


〈レイセル(頭)〉

「…………」


レイセルは言葉を失った。


怒りが、骨の奥から湧き上がる。

視界が赤く染まるような感覚。


〈リリ〉

「レイセル様……?」


レイセルの頭は、ゆっくりとリリの方を向いた。


〈レイセル(頭)〉

「……今すぐ戻るぞ。乗れ!」


〈リリ〉

「えっ、あ、はいっ!」


レイセルの頭は高速で飛び、

リリが慌ててその上に乗る。


〈リリ〉

「ちょ、ちょっと速いですってばぁぁ!!」


湖畔の草むらへ戻ると、ガオランが立ち上がった。


〈ガオラン〉

「どうだった……?」


レイセルの頭は、無言で自分の体へ戻る。


カチンッ。


骨が噛み合い、レイセルの体がゆっくりと立ち上がった。


その目は、怒りで静かに燃えていた。


〈レイセル〉

「ガオラン。

 ここで待っていてくれ」


〈ガオラン〉

「……レイセル……?」


〈レイセル〉

「今すぐ、あの地下にいる獣人達を──

 必ず助け出す」


鎧が鳴り、レイセルは建物へ向かって歩き出した。


その背中は、

今までで一番“スケルトンの勇者”だった。

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