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【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
リィはその後も、トーコとともにうつ病の治療を続けた。
その結果……。
「トーコ先生っ」
自分からベッドを抜け出して、主治医であるトーコのもとへ向かえるようになっていた。
「セルシウスのお散歩に行ってきてもいいですか」
フェンリルのセルシウスが、リィの傍らに立っている。自分の意志で外へ出られるくらいには、心が回復していた。
しかし。
「待って、リィさん。私もついていきます」
「……いいんですか」
「ええ」
トーコはカルテ記入の作業を中断すると、白衣を脱いでリィの傍へやってきた。
「行きましょうか」
「……はい」
リィは少し複雑な顔をした。トーコにはその心の動きがわかっている。
「私がいないほうがよかったですか」
「ううん、違うんです」
二人と一匹は病院を出て、近くの森へ向かった。
リィはセルシウスにボールを投げながら、考えていた。
(わたし……トーコ先生の邪魔をしてしまっている……)
トーコはおそらく、リィが一人で外へ出たら危ないと思ったのだろう。だから仕事を中断して、ついてきてくれた。
(先生と一緒に来られてうれしいけど……わたし、先生の足を引っ張っている)
大好きな人の傍にいたいのに、いれば邪魔になってしまう。
(わたし……本当にだめな子……)
「ひゃっ」
セルシウスが近づいてきて、リィの頬をべろべろと舐めた。
「くすぐったいよ」
何度も何度も舐める。まるでリィを励ますように。いや、実際に励ましているのだ。
この子は普通の獣とは違い、頭が良い。悩んでいることくらい、すぐに見抜いてしまう。
それはセルシウスに限った話ではなかった。
トーコも傍で笑ってはいるが、魔力視は魔力の揺らぎを見取れる。自分がこんなふうに悩んでいることに、絶対に気づいているはずだ。
(どうすればいいんだろう……先生に迷惑をかけたくないのに……)
しばらく散歩して病院に戻ると、ちょうどミリアが洗濯を終えて帰ってくるところだった。
「ありがとう、リィちゃん」
「あり……がと……?」
(いったい何にお礼を言っているんだろう……)
「リィちゃんのおかげで、とても助かってるんだよ」
「え……え……?」
ますますミリアの言っていることが理解できなかった。
しかしトーコは「そうですね……」と素直に頷いた。どこか気まずそうだった。
(先生は嘘をつかない人だから……。わたし、役に立っているの……? いったい何に……?)
「リィちゃんのおかげで、そこのワーカーホリックな先生が、以前よりちゃんと休憩をとってくれるようになったからね」
ミリアがトーコを指した。
「前から、きちんと休憩はとっていました」
「どうだかね。リィちゃん、これからもその人をどんどん散歩に連れて行ってあげてね」
じゃ、とミリアは手を挙げて去っていった。
リィはトーコに尋ねた。
「あの……わたし、迷惑じゃないんですか」
「全然。ミリアも言っていたでしょう。本当に役に立っていますよ。座りっぱなしは腰や肩の凝りの原因になります。適度に立って歩かないといけないので」
「はぁ……。あの、それがわかっていて、どうして今まで休憩をとらなかったんですか」
リィは純粋に尋ねた。トーコは言葉に詰まった。
「あ、あの……不快にさせてしまったなら、ごめんなさい……」
「ううん。不快じゃないわ。……そうだ、リィさん」
トーコがしゃがみ込んで、真剣なまなざしを向けてきた。リィは、彼女のそのまっすぐな目が好きだった。
「リィさんに、お願いしたいことがあるんです」
「は、はいっ。なんでもしますっ」
今までリィは、命を救われてからずっと、付きっきりで看病してもらってきた。
心が回復したのも、彼女の献身的な治療があったからこそだ。
申し訳なさもあった。自分が彼女の邪魔をしているのではないかと。
だから、何かして恩を返したかった。
トーコが、真剣な顔で言った。
「私の養子になってくれませんか」
「……………………え?」
よう、し……?
養子。それはつまり。
「トーコ先生の、娘になれってこと……?」
「ええ」
リィには両親がいない。元奴隷だ。身元を引き受けてくれる大人は、誰もいない。
しかしリィはまだ幼く、一人で生きていくには、あまりに心許なかった。
「うれしい……うれしいけど、でもそれって……やっぱり先生の負担になっちゃうんじゃ……」
「とんでもない」
トーコがきっぱりと否定した。
「リィさんがいてくれるおかげで、私、前より元気になれているんですよ」
「そうなんですか」
「ええ。リィさんと規則正しい生活を送っているからでしょうね」
確かにトーコはリィと寝食を共にしていた。決まった時間にご飯を食べ、適度に体を動かし、早めに床につく。
「リィさんのおかげで、最近ミリアやガルドさんからお小言を言われる回数が減ったんです」
「…………」
「リィさん?」
気づけば、リィの瞳から涙がこぼれ落ちていた。
トーコが動揺する。何かしてしまっただろうかと。
しかしリィは首を横に振った。
「ごめんなさい先生……うれしくって……」
大好きなトーコの養子になれること。そして何より、彼女の役に立てていること。それが、本当にうれしかった。
「うれし涙を流せるくらいには、心が回復したんですね。私も……とても嬉しいですよ、リィさん」
死んだように生きていたリィ。彼女の中に感情はなかった。胸に空いた穴は、トーコの治療によって少しずつ塞がれていた。
感情を蓄えられるようになっていたのだ。
「先生……わたし、先生の娘になりたいです」
「ありがとう、リィさ……ううん、リィ。これからは、もっとうんと甘えていいんですよ」
リィは花が咲いたように笑うと、トーコの胸に飛びついた。
「うんっ。トーコ……ママっ」
こうしてトーコは独身だというのに、娘ができたのだった。
【おしらせ】
※10/9(金)
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