49
皆様の応援がうれしくて、第二章、スタートしました。引き続き、応援していただけますと幸いです。
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
彼女の名前は、トーコ。貴族令嬢だったが、色々あって、辺境の土地で治療院を開くことになった。
薬師のガルド、看護師のミリア、そして医師であるトーコ。
彼女らを中心とした辺境の治療院は、賑わいを見せていた。
彼女のもたらした現代の医術と知識は、異世界の治癒師・治癒魔法では治せないものを、次々と直していくのだった。
◇
治療院兼自宅で、トーコは一人、カルテを書いていた。
そこへ、ミリアがやってくる。
「先生。辺境伯様がお見えです」
「すぐに行きます」
トーコは立ち上がり、いちおう鏡を見て自分の顔を確認する。
愛想のない女、とここへ来る前に、何人もの人が言ってきた。
確かに、同じくらいの年頃の貴族の娘たちは、大きな瞳に、つんと尖らせた唇。上目遣いで人を見る。そんな風に振る舞っている。
翻って自分はどうだ。常に無表情に近い。愛想の一つも出せず、黙っていると睨みつけているようにも見える、鋭い目つき。
髪の毛も診察に邪魔だからと、肩の辺りで短く切っている。
「……だから、なんだ」
自分は自分なのだ。トーコは寝癖がついていないかなど最低限の身なりを整えて、部屋を出た。
「…………」
「なんですか、ミリア」
「いえ、別に。あたしは良いと思いますけどね」
「だから、なにが」
ミリアはなんだか、にやにやと笑っていた。
トーコの目は、魔力ゼロ者が持つ特有の力だ。他者の魔力を視認できる、魔力がゼロであるという呪縛が生んだ、天与のギフト。
人に流れる魔力は、他者の発する感情によって形や速さが変わる。トーコはそこから、体内にある異常を見抜くことができるのだ。
ミリアが内包する魔力からは、馬鹿にするような色はしていない。穏やかで、どこか喜んでいる。
「なんですか……」
「いや。さ、辺境伯様がお待ちですよ」
トーコは「わかっていますから」と言って、診察室へやってきた。
そこにいたのは、年若い青年。この辺境の地を治める貴族、ライナルト辺境伯だ。
「こんにちは」
「ええ、こんにちは」
今日も健康診断に来たのだ。採血、血液検査、魔力の流れの確認。一通り終えて、トーコが言った。
「健康状態は良好ですね」
「ありがとうございます。ただ……先生の方が、少し不摂生をなさっているようで」
「…………」
確かにカルテの整理で遅くまで作業をしていたのは、事実だった。
「倒れては、皆が悲しみます。困ってしまいます」
「わかっております。気をつけます」
「天導の聖女達や、先生の治療術を習いたいという方々が次々とここを訪れ、スタッフも増えているようですね。それでも……なぜ、ご自分でそこまで働かれるのですか」
「仕方がないのです。人が増えることで、増える仕事もあります」
今までは自分の目で直接、患者を診てきた。しかし今は、そうでないことも増えた。だからこそ、カルテにはきちんと目を通さなければならない。
「カルテとは、そんなに重要なものなんですか」
「無論です。異常があったときの数値、平常時の数値、それらをきちんと記録することで、また体に異常が出たときの判別が容易につくようになります」
逆に記録がなければ、不調をきたして来院したときの数値だけでは、何が異常なのかわからないのだ。
「それに、治療方針も書いておかなければなりません。私以外の者が診るときに、困ってしまいますから」
「なるほど……。だからカルテを書いていると」
「ええ」
「有用性については理解しました。ただ……気をつけてくださいね」
「……わかっています」
トーコはため息をつきながら、ほんの少しだけ、口の端を上げた。
(医者の体調を気遣ってくれる人がいるとは)
そのときだった。
「先生、大変だ……!」
薬師のガルドが飛び込んできた。
「お邪魔だったか?」
「「違います」」
ガルドが何かを勘違いしているようなので、トーコは口を引き結んだ。
「急患ですか」
「ああ、そうだ。獣人の子供らが、突然倒れたそうで。運び込まれてきたのだ」
「すぐに連れてきてください」
ライナルトが診察室の扉を開けると、そこへ、犬獣人の子供が運び込まれてきた。複数人だ。
皆、苦しそうにベッドに横たわっている。親らしき犬獣人たちが、不安そうにこちらを見てきた。
「あっしらは貧しい行商人でして……」
「身分はどうでも良い。いつからこの症状ですか」
トーコは相手が獣人だろうが、貧しかろうが、関係なく診察をする。
聞き取りを行った結果、状況が見えてきた。
「なるほど……。行商で馬車に乗っている途中、荷台に座っていた子供たちが倒れたと」
「は、はい……特に変なものは食っておらんし……最近は暑いから風邪でもないはずで……」
トーコは目を細めた。そしてすぐに、気づいた。
「ミリアさん、すぐに水を用意してください。桶に水を張って」
「承知しました」
ミリアが駆け出した。
「水……水を飲ませるのですか?」
「違います。あなたたちもついてきてください。早く」
入院患者用の大きな浴室に水を張り、子供たちを浸からせた。
「あなたたちも入ってください」
「は、はい……」
ざばんと獣人たちが水の中に入る。
しばらくすると、子供たちの顔色が、すうと落ち着いていく。
「あれ……ぼくは……?」
「息子よ、良かった、目覚めたんだな!」
ざばっと立ち上がろうとした親獣人を、トーコが静かに制した。
「あなたも、もう少し浸かっていてください。その間に用意をしますから」
「は、はあ……」
トーコはガルドに点滴の用意を指示した。ガルドが人数分の点滴を浴室の近くまで運び、子供たちに施術する。
「とーちゃん、体めっちゃ楽になったよ!」
「うん、めまいが消えた!」
子供たちがどんどん元気を取り戻していく。
親獣人は何度も頭を下げながら「ありがとう、ありがとう」と繰り返した。
「しかし……一体どんな病気だったんですか」
ミリアがトーコに尋ねる。
「熱中症ですね」
「ね……ちゅうしょう?」
医学の未発達な異世界では、その程度のことも知られていないのだ。
「暑い環境で体温の調節ができなくなり、体に熱がたまる病気です。めまい、頭痛、だるさなどが起きます」
「なるほど……。でも、よくわかりましたね」
「今日は天気が良いですし……なにより、この方たちが犬の獣人だったことも大きいです」
「犬の獣人だと、どうして熱中症になりやすいんですか」
「犬は、人間と違って汗腺、つまり汗を出す器官が少ないのです」
人は汗を出すことで体温調節をする。その器官を汗腺という。しかし犬はその汗腺が人より少ない。ゆえに、熱がたまりやすいのだ。
「犬獣人の方たちは、一見すると人にしか見えないので、人に近い体をしていると思われがちです。しかし犬の特性も色濃く引き継いでいる。汗腺が少なく、だから熱がたまりやすい」
「それで熱中症を引き起こした……なるほど。凄い……」
通常の治癒師ならば、とりあえず治癒魔法をかけて様子見、となっただろう。しかし細胞を促進し傷を癒やす治癒魔法をかけたところで、今回のケースでは病気は治らなかった。
「やはり、本当だったんだ」
親獣人が目を輝かせながら言う。
「辺境には、治癒師や聖女が治せない病気を治す……辺境の治癒神がいると!」
「……大げさですよ」
トーコは静かに言った。
「私はただの、失格治癒師です」
【おしらせ】
※8/17(月)
新作、投稿しました!
ぜひ応援していただけますとうれしいです!
URLを貼っておきます!
よろしくお願いいたします!
『婚約破棄された加護なし令嬢、前世の知識で絶品あったかご飯を作ります~無理矢理嫁がされた極寒の隣国で、皆から恐れられる【狂犬皇子】が、毎食おかわりを要求して離してくれません』
https://ncode.syosetu.com/n6744mp/
広告下↓のリンクから飛べます。




