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皆様の応援がうれしくて、第二章、スタートしました。引き続き、応援していただけますと幸いです。

【☆★おしらせ★☆】


あとがきに、

とても大切なお知らせが書いてあります。


最後まで読んでくださると嬉しいです。

彼女の名前は、トーコ。貴族令嬢だったが、色々あって、辺境の土地で治療院を開くことになった。


 薬師のガルド、看護師のミリア、そして医師であるトーコ。

 彼女らを中心とした辺境の治療院は、賑わいを見せていた。


 彼女のもたらした現代の医術と知識は、異世界の治癒師・治癒魔法では治せないものを、次々と直していくのだった。



    ◇



 治療院兼自宅で、トーコは一人、カルテを書いていた。


 そこへ、ミリアがやってくる。


「先生。辺境伯様がお見えです」


「すぐに行きます」


 トーコは立ち上がり、いちおう鏡を見て自分の顔を確認する。


 愛想のない女、とここへ来る前に、何人もの人が言ってきた。


 確かに、同じくらいの年頃の貴族の娘たちは、大きな瞳に、つんと尖らせた唇。上目遣いで人を見る。そんな風に振る舞っている。


 翻って自分はどうだ。常に無表情に近い。愛想の一つも出せず、黙っていると睨みつけているようにも見える、鋭い目つき。


 髪の毛も診察に邪魔だからと、肩の辺りで短く切っている。


「……だから、なんだ」


 自分は自分なのだ。トーコは寝癖がついていないかなど最低限の身なりを整えて、部屋を出た。


「…………」


「なんですか、ミリア」


「いえ、別に。あたしは良いと思いますけどね」


「だから、なにが」


 ミリアはなんだか、にやにやと笑っていた。


 トーコの目は、魔力ゼロ者が持つ特有の力だ。他者の魔力を視認できる、魔力がゼロであるという呪縛が生んだ、天与のギフト。


 人に流れる魔力は、他者の発する感情によって形や速さが変わる。トーコはそこから、体内にある異常を見抜くことができるのだ。


 ミリアが内包する魔力からは、馬鹿にするような色はしていない。穏やかで、どこか喜んでいる。


「なんですか……」


「いや。さ、辺境伯様がお待ちですよ」


 トーコは「わかっていますから」と言って、診察室へやってきた。


 そこにいたのは、年若い青年。この辺境の地を治める貴族、ライナルト辺境伯だ。


「こんにちは」


「ええ、こんにちは」


 今日も健康診断に来たのだ。採血、血液検査、魔力の流れの確認。一通り終えて、トーコが言った。


「健康状態は良好ですね」


「ありがとうございます。ただ……先生の方が、少し不摂生をなさっているようで」


「…………」


 確かにカルテの整理で遅くまで作業をしていたのは、事実だった。


「倒れては、皆が悲しみます。困ってしまいます」


「わかっております。気をつけます」


「天導の聖女達や、先生の治療術を習いたいという方々が次々とここを訪れ、スタッフも増えているようですね。それでも……なぜ、ご自分でそこまで働かれるのですか」


「仕方がないのです。人が増えることで、増える仕事もあります」


 今までは自分の目で直接、患者を診てきた。しかし今は、そうでないことも増えた。だからこそ、カルテにはきちんと目を通さなければならない。


「カルテとは、そんなに重要なものなんですか」


「無論です。異常があったときの数値、平常時の数値、それらをきちんと記録することで、また体に異常が出たときの判別が容易につくようになります」


 逆に記録がなければ、不調をきたして来院したときの数値だけでは、何が異常なのかわからないのだ。


「それに、治療方針も書いておかなければなりません。私以外の者が診るときに、困ってしまいますから」


「なるほど……。だからカルテを書いていると」


「ええ」


「有用性については理解しました。ただ……気をつけてくださいね」


「……わかっています」


 トーコはため息をつきながら、ほんの少しだけ、口の端を上げた。


(医者の体調を気遣ってくれる人がいるとは)


 そのときだった。


「先生、大変だ……!」


 薬師のガルドが飛び込んできた。


「お邪魔だったか?」


「「違います」」


 ガルドが何かを勘違いしているようなので、トーコは口を引き結んだ。


「急患ですか」


「ああ、そうだ。獣人の子供らが、突然倒れたそうで。運び込まれてきたのだ」


「すぐに連れてきてください」


 ライナルトが診察室の扉を開けると、そこへ、犬獣人の子供が運び込まれてきた。複数人だ。


 皆、苦しそうにベッドに横たわっている。親らしき犬獣人たちが、不安そうにこちらを見てきた。


「あっしらは貧しい行商人でして……」


「身分はどうでも良い。いつからこの症状ですか」


 トーコは相手が獣人だろうが、貧しかろうが、関係なく診察をする。


 聞き取りを行った結果、状況が見えてきた。


「なるほど……。行商で馬車に乗っている途中、荷台に座っていた子供たちが倒れたと」


「は、はい……特に変なものは食っておらんし……最近は暑いから風邪でもないはずで……」


 トーコは目を細めた。そしてすぐに、気づいた。


「ミリアさん、すぐに水を用意してください。桶に水を張って」


「承知しました」


 ミリアが駆け出した。


「水……水を飲ませるのですか?」


「違います。あなたたちもついてきてください。早く」


 入院患者用の大きな浴室に水を張り、子供たちを浸からせた。


「あなたたちも入ってください」


「は、はい……」


 ざばんと獣人たちが水の中に入る。


 しばらくすると、子供たちの顔色が、すうと落ち着いていく。


「あれ……ぼくは……?」


「息子よ、良かった、目覚めたんだな!」


 ざばっと立ち上がろうとした親獣人を、トーコが静かに制した。


「あなたも、もう少し浸かっていてください。その間に用意をしますから」


「は、はあ……」


 トーコはガルドに点滴の用意を指示した。ガルドが人数分の点滴を浴室の近くまで運び、子供たちに施術する。


「とーちゃん、体めっちゃ楽になったよ!」


「うん、めまいが消えた!」


 子供たちがどんどん元気を取り戻していく。


 親獣人は何度も頭を下げながら「ありがとう、ありがとう」と繰り返した。


「しかし……一体どんな病気だったんですか」


 ミリアがトーコに尋ねる。


「熱中症ですね」


「ね……ちゅうしょう?」


 医学の未発達な異世界では、その程度のことも知られていないのだ。


「暑い環境で体温の調節ができなくなり、体に熱がたまる病気です。めまい、頭痛、だるさなどが起きます」


「なるほど……。でも、よくわかりましたね」


「今日は天気が良いですし……なにより、この方たちが犬の獣人だったことも大きいです」


「犬の獣人だと、どうして熱中症になりやすいんですか」


「犬は、人間と違って汗腺、つまり汗を出す器官が少ないのです」


 人は汗を出すことで体温調節をする。その器官を汗腺という。しかし犬はその汗腺が人より少ない。ゆえに、熱がたまりやすいのだ。


「犬獣人の方たちは、一見すると人にしか見えないので、人に近い体をしていると思われがちです。しかし犬の特性も色濃く引き継いでいる。汗腺が少なく、だから熱がたまりやすい」


「それで熱中症を引き起こした……なるほど。凄い……」


 通常の治癒師ならば、とりあえず治癒魔法をかけて様子見、となっただろう。しかし細胞を促進し傷を癒やす治癒魔法をかけたところで、今回のケースでは病気は治らなかった。


「やはり、本当だったんだ」


 親獣人が目を輝かせながら言う。


「辺境には、治癒師や聖女が治せない病気を治す……辺境の治癒神がいると!」


「……大げさですよ」


 トーコは静かに言った。


「私はただの、失格治癒師です」

【おしらせ】

※8/17(月)


新作、投稿しました!


ぜひ応援していただけますとうれしいです!

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よろしくお願いいたします!


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― 新着の感想 ―
辺境伯が敬語になってませんか…? 前はタメ口的な感じだった気が
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