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魔物RPG  作者: 覇気草
32話~

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第41話 やらかす



 いやぁ、AIの方の女神ルシエールの顔、面白かったなぁ。一気に情報を与えたからぽかーんとしてた。

 ――――じゃあ、まぁ、次の実験といこうか!


 森に戻った俺は、魔物の気配を辿って動く。


 おっ、いた。スライム!

 懐かしいな……俺が倒した中身プレイヤーのスライム、無事に元の世界に戻れたかな? それとも、リスポーンして別の魔生を送ってるかな?

 ……どうでもいいか。それより進化の促進いってみよう!

 はい進化ー!


 魔王アビリティ【魔王】の能力の一つを発動すれば、目の前の青色のスライムが光りだし、鮮やかな緑色に変化し、内部に幾つもの気泡が浮かんで表面に移動すると、小さく弾けて消えた。


 なにスライムだろ?

 炭酸スライム?


 疑問に思いつつ実験は成功したので、手を突っ込んでスライムの核を抜き取り、ぱくっと食べる。


 おっ、シュワシュワしてる。ラムネ味だ。

 これ、進化の方向性の条件を特定して量産すれば、家畜化できるかも。


「アリだな」


 けどお持ち帰りはあとだ。俺にはまだやるべきことがある。


「次は、あのエルフを殺そう」


 散々な目に遭わされたお礼参りだ。

 そーゆーわけで、俺は体と気配を完全に消してからエルフの顔を思い浮かべて瞬間移動した。






 景色は変わり、どこかの街中に立つ。活気溢れる喧騒が耳に入ってくる。目の前には例のエルフが背中を見せていて、屋台に並べられた果物を吟味している。視線を外して辺りを見渡せば、人ひとヒト――大勢の人間が立ち並ぶ屋台から果物や野菜を見て回っていた。


 市場か……騒ぎになるのは望むところだ。恐怖を力に変えられる。

 では――死ぬがよい。


 右手に力を籠め、姿と気配を消すのをやめると同時にエルフを背後から手で突く。手がマントと衣服を破って彼女の心臓を貫き、反対側へと抜ける。


 ――なっ!?

 こいつ……勇者っ!!


 貫いた部分が赤いダメージエフェクトで覆われ、血が出ていない。


「かはっ」


 エルフから吐血するかのような声が漏れる。

 人間たちが俺の行動を目撃して悲鳴を上げ、慌てて逃げ始める。


 おおっ!

 なんか力が溢れてくる。これが恐怖による力の増大か。もっと増やしたいが、今は勇者から目を離せない。


 心臓を貫いたはずのエルフに動きがあり、俺の手を掴もうとしたので彼女の体から手を抜いて飛び退き、距離を取る。

 エルフは傷口を再生させながら振り返り、睨みつけてきた。


「いきなりなんて失礼しちゃうじゃない」


「お礼参りに来ただけだよ。まさか勇者だったとは思わなかったけど」


 やっべーどうしよう。

 これじゃあ無駄にヘイトを溜めただけで意味がない。


「……勇者のことは上手く隠して生活してたんだけどね。あなた、魔王になったんでしょ?」


 げっ、バレてる。


「なんでそう思う?」


「私たち勇者には、魔王がどこにいても感じ取る専用アビリティが備わってる。今はその機能をオフにしてたから不意を打たれたけど、そっちから仕掛けたのなら容赦はしない」


 マジかよ。

 魔王アビリティに似た、勇者アビリティとでもいうものを持ってるっぽいな。

 逃げたら追ってくるか? 追ってくるだろうなぁ……。

 物理的に距離を取れば時間が稼げるはず。

 ならばここは、逃げるが勝ちだ!


「じゃあ、またね」


「逃がさないから」


 そう言った彼女は動かない。

 俺は瞬間移動した。







 妨害されることもなく元の場所――砂上船へと戻ってきた。立っている場所は船首で、隣にミスターが立っている。


「ただいまー」


「おかえりおかえり」


「ねぇミスター。聞きたいことがあるんだけど」


「お、なにかな? なにかな?」


「エルフの勇者って知ってる?」


「エルフ……そいつは女性?」


「うん」


「なら、そいつは『ミズナラ』というプレイヤーだ。職業『グランドアーチャー』、遠距離戦のエキスパートで、斥候としての能力も一流。千年くらい前から現地の人間に紛れて生活し、見込みのある奴を育成してた。もしかして会ったことある? ある?」


「あるっていうか……さっき不意打ち決めてきた」


「プッ、くくく……あいつに不意打ち? 魔王が生まれなくなって久しいからって、スキルもアビリティも切ってるからそうなるんだ」


 馬鹿にするように笑ったミスターは、急に真面目な顔つきになった。


「それよりもマズイことになった。彼女は私と違って勇者の使命に忠実。魔王が複数存在しているとわかったらすぐに――ああ、手遅れだ」


 ゲーム的なウィンドウがミスターの目の前に現れた。何が映っているのかは、ぼやけてわからない。


「それは?」


「ミズナラから全ての勇者へ召集のメッセージ。何人の勇者が応じるかわからないけど、もう時間が無い」


 ミスターは俺の両肩に手を置いた。


「勇者は一度訪れたことのある街や村へ転移できる。じきにこっちにくる。だから今ここで聞いておく。ネコさん――いやチエ、RTAみたいなことをして、《《今回は》》楽しかったかな? なにか掴めたかな?」


「……」


 なに?

 RTA? リアルタイムアタックのことか?

 それに今回は?

 ……つまり、繰り返している?

 俺が?

 なんの為に?

 わからない。いきなりそんなことを言われたって、記憶にないぞ。


「ミスター、それはどういう意味?」


「そのままの意味さ。まぁ、ネコさんの思うがままにやるといい。結局はそれが君の為になる」


「……わかった」


 これは追求してもはぐらかされるだけだ。

 それよりも計画を前倒しする必要が出てきた。

 すまんねコンゴウ。将軍たちと一緒に囮になって死んでくれ。


「ところでミスター、一度訪れたことがある街や村なら転移できるっていうけど、それならクルス王国の首都まであとどれくらいかわかる?」


「もう目と鼻の先。ぶっちゃけると、既にミズナラの射程圏内」


「ダメじゃん!」


 あっ、なんか光っ――。


 ピキーン!



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