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魔物RPG  作者: 覇気草
32話~

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36/44

第36話 クルス王国に向かう



 本物の女神ルシエールとの話を終えた俺は外へ出た。

 街の中は相変わらずキノコ人間が歩いていて、甘い匂いが充満している。


 さてさて、どんな味なのかな?

 がぶり。


 瞬間移動でキノコ人間の背後に接近し、傘の端っこを噛み千切った。


 もぐもぐ……ふむ。

 シイタケっぽくて、サツマイモみたいな甘味があるな。

 それでいて、ほど良いみずみずしさとコリコリとした食感。美味い!


 俺が襲っているのに、キノコ人間たちは逃げることもなく呑気に歩いている。

 ので、俺は同じ要領で次々と食べた。

 ついでに建物っぽい腐った巨大キノコもがぶり。


 おっ、こっちはトロっとしててハチミツっぽい。

 おやつに持って帰りたいな。

 確か魔王になったお陰で『アイテムボックス』なるものが使えるようになってたな。丁度いいし、試しに使ってみるか。

 アイテムボックス!


 念じれば目の前の空間がぽっかり円形に小さく開いて、虹色の謎空間が見えた。

 そこに千切ったキノコの欠片を放り投げると吸い込まれるように謎空間の中へ消えた。

 さっきの物をイメージしながら謎空間に手を突っ込むと、何かに触れて、掴んで引き抜くとキノコの欠片が取りだせた。


「……便利だ」


 でもちょっとずつ入れるの面倒だし、一気に入れられるかな?


 試しにイメージしてみると、謎空間に腐った巨大キノコが吸い込まれた。


「おぉー、できるもんだね」


 これなら大量に持ち運べて、毎日ハチミツとサツマイモだ。


 ということで、俺は腐った巨大キノコを次々と収納。キノコ人間もちゃんと仕留めて死体という物に変えてから収納していく。


「あっと、全部取るのはやめておこう。生えてこなくなったら困るし」


 一部だけ残し、大量に収納できた俺は大満足。


 よし、元の世界に帰るか。


 目の前にドアを出して元の世界へ戻った。







 船上の楽しい宴会から翌日。

 雲一つない空の下、砂漠の魔物はコンゴウが先んじて始末するせいで活躍することがなく、ボタンが船に積まれていた食料を食べ尽くす前に、楽園に到着した。

 船の中にあった砂漠の民らしい衣服に着替えた兵士や女たちが、荷物を運び出しながら砂上船から降り、俺たちも船を降りた。


 ――ようやく戻ってこれた。


 軽く伸びをして気を抜いていると、ノルンがやってきた。


「ネコ神様、私たちは本当にここに住んでいいのですか?」


「うん、いいよ。どうせ誰も住んでいなかったから好きに過ごして。建物がもっと必要だったらコンゴウに言って。食料はボタンにね」


「はい」


「――あっ、ボタンは定期的に肉が食べたくなるらしいから、畜産ができるようにはしてほしい」


 肉の為だけに遠征するのはもう勘弁だ。今回の街への襲撃は上手くいったが、もしあの場に、あの時のエルフのような強者がいたら俺たちは死んでいただろう。


「でしたら、もっと人手が必要です。ネコ神様、私のお願いを聞いてくれませんか?」


「ん、とりあえず話してみて」


「はい。私たちの国には今も残していった民たちがいると思われます。イスタン帝国の者にどのような仕打ちをされているかはわかりませんが、彼らを救出し、こちらに移住するように働きかければ人手不足が解消されるかと」


 確かに、国民をまるまるこっちに移せばかなりの人数を一気に取り込める。衣類は現地で確保するとして、食と住はボタンとコンゴウがなんとかしてくれるし……いいかもしれない。


「いいと思う。でも今日は行かないよ」


 遠出して帰ってきたばかりだ。肉体的な疲労はないけれど、重大な選択をしたせいで精神的な疲労がある。


「構いません。私たちにも充分な休息と準備が必要ですから。数日後にまた相談します」


 ノルンは一礼すると、荷下ろしの陣頭指揮を執るヴァン将軍のところへ行った。


「…………やることないし、のんびりするか」


 俺は家の屋根に飛び乗り、人化を解いて猫に戻って休憩しながらみんなの様子を見守った。

 荷下ろしが終わり、人間たちはコンゴウとボタンと共に建物や畑を見て回る。建物が新たに生えたり、畑が一気に広がったりする強大な力に畏敬いけいの念を抱いたのか、全員がひざまずいて忠誠を誓ったのが見えた。


 多神教の国になりそうだな、ここ。

 ――あっ、魔力で服が作れるし、新しい衣装を考えておかないと。


 そんなことを思いながら、ひと眠り。







 平和な時間が続き、数日が経った。


「楽園……できたなぁ」


 自分の魔力でできた専用服――大きな白リボンと白タイツが特徴的な紫と白のブレザー制服風衣装に身を包み、空から街を見下ろせば、まだ規模こそ小さいが体裁の整った街が誕生していた。

 頑丈な建物が並び、街中は石畳が敷かれ、景観や造形にもこだわりが感じられる。中でも街の中心にある俺たち魔王三人が住まうピラミッドみたいな巨大な宮殿が素晴らしい。これらは人間たちが設計し、コンゴウがほぼ全部作った。

 街から少し視線を動かせば、広大な畑が広がっている。

 多様な野菜や果物、黄金色の麦や米、綿花やあさ燦燦さんさんと輝く太陽の下で元気よく実っていて、枯れる気配がない。ボタンが都合のいいように品種改良をした結果だ。


 さらに視線を動かせば、楽園の住人となった兵士たちが砂上船の前で整列していた。その前にはノルン、ヴァン、そして青い作業着を着たコンゴウが立っている。


「……あぁ、そろそろ時間か」


 占領されてしまったノルンの国――クルス王国をイスタン帝国から解放し、希望する住人をこっちに連れて来る日だ。

 今は二十人にも満たない兵士たちに、ノルンが見送りの為の挨拶をしている。

 俺は挨拶が終わる頃を見計らってノルンの傍に着地した。


「やっほー」


「ネコ神様、丁度いいところに。この勇士たちに何か一言いただけませんか?」


「一言……うーん……じゃあ、ありきたりだけど……命、大事に! 私やコンゴウは魔王で強いけど、死んだ者を生き返らせたりするような力はないから。だからくれぐれも無茶はしないように。以上」


 話を終えるとヴァンが前に出て言った。


「では兵士諸君、乗船せよ!」


 兵士たちはキビキビと砂上船に乗り込み始めた。既に諸々の準備は済ませてあるようで、この場に残るノルン以外が乗船すると、砂上船はすぐに出航を始めた。




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