第3話 異変
あー食べた食べた。
ウサギの魔物をぺろりと平らげ、お腹はいい感じに膨れた。
レベル上がったかな?
流石に上がってなさそうだけど……ステータス!
名前:
種族:キャット
レベル:1
スキル:
アビリティ:
うん、やっぱり上がっていない。もう少し戦わないと。
でもその前に……体洗わないとな。血の臭いが付いてると狩りをするにも隠れるにもバレてしまう。
森の中をうろついて到着したのは透明度の高い水がゆるやかに流れる川。
まずは安全な水かどうか。
すんすん……臭いは問題なし。
ぺろり……うん、普通の水だ。
これなら入っても大丈夫そう。
確認が終わったので早速飛び込む。程よい冷たさが気持ちいい。
イヌかきならぬネコかきでスイスイ泳いで一通り楽しみ、陸に上がってぶるぶると体を震わせて水気を飛ばす。それから日の当たる場所で本物のネコがやっているようにペロペロ自分の毛を舐めて毛づくろい。
こんなことしてると、魔物とはいえ本物のネコになった気分。
――ん?
んん?!
お腹の方を見た時、必然的に股も視界に入るのだが、男として目を疑う。
前足を伸ばして股をポンポン触ってみるが、男の象徴がない。平らだ。
…………この体、メスかよっ!!
アバター生成は完全ランダムって話だけどさぁ、性別までランダムは違うだろ。
――あーでもそうか。
魔物の中にはラミアとかサキュバスとか、女性しか存在しない種族だってあるんだ。そう考えると性別もランダムにしないと除外してしまうことになるのか。納得。
止まっていた毛づくろいを再開。日差しが温かいが濡れた体に微風は少し冷たく、体がぶるりと震えた。
あっ、ちょっとトイレ。
尿意を催したので水飲みには適さない川の縁に移動し、そこで用を足す。
ふぅ。スッキリ!
ついでに川の水で汚れを落として……よし!
トイレを済ませ、元の場所に戻ってまた毛づくろい。
それが終わると俺は移動した。
獲物はーどっこかなー?
――お?
早速発見したのは、黄色いキウイみたいな果実を沢山実らせた低木。
美味しそう。
でも、毒じゃないよね?
それにキウイってマタタビ科だったはず。魔物でもネコなら酔うかもしれない。
……ちょっとだけ、食べてみよう。
好奇心の赴くまま、食べられる位置まで垂れ下がっている果実の一つをぱくり。
おぉ、瑞々しくてあっさりしてるけど、キウイに似てさっぱりした酸味と甘みだ。
あと、なんか……体がフワフワして心地良い。酔ったかも。
でももっと食べたい。この感覚を味わっていたい。
この果実をパクパクと食べまくる。食べれば食べるほどに体のフワフワは増し、幸せを感じる。
あぁ……お腹いっぱい。
もっと食べたいけどこれ以上は無理。
仕方ない。木の上で一休みしよう。
昼寝するのに丁度良さそうな木を発見し、俺はすいすい登って目当ての幹に到着すると、体を丸めて目を閉じた。
――はっ!
ここはどこ?
今何時?
目が覚めて辺りを見渡す。
全ての魔物は基本的にアビリティ外の特性として“暗視”を持っているので、真っ暗でもくっきりと景色が見え、木の上だと認識できる。
メニュー!
心の中で言葉を発すれば、ゲームメニューが出現。ゲーム内時間とリアルの時間が一緒に表示されている。
ゲーム内は20時と少し。
リアルは今、0時を過ぎたか。
ゲーム内は時間が加速して長くプレイできるとはいえ、寝すぎたな。
今日はそろそろログアウト――――あれ?
メニューからログアウトボタンを押したが、機能しない。
ネコの手でポンポンと連続で押しても、ログアウトするかどうかという確認の小さなウィンドウすら出ない。
どういうことだ?
何故ログアウトできない?
ん? メール?
首を傾げていると、メールの項目に十数件の受信が表示されていた。
運営から不具合のメールでも来てたのかな?
で、ちょっとログアウトできません。とか?
――うわっ!
項目を開いて確認すると、全ての件名がわけのわからない文字化けを起こしていた。
なんだこれ!?
誰かのイタズラ?
それともウイルス?
運営のジョーク?
……ログアウトできない現状、中身は確認しないとな。呪われそうだけど。
どれでもいいからと一番上のメールを試しに開くと、さらにウィンドウが現れてテキストが表示された。
ダメだこりゃ。
たった数行だけど、文字化けして読めん。
他のメールも――――同じか。
諦めてメニューを閉じる。
これからどうしよう?
何が起こったのかわからない以上、ネコの魔物として生きていくしかないか?
わざと死んで、コンティニューではなくそのままログアウトするという方法もあるけど……流石にバグってる中でやりたくない。
もしかしたらゲームを題材にしたライトノベルやアニメでよくある、死んだらリアルでも死ぬデスゲーム開催中だとか、ゲームじゃなくて異世界でした、とかかもしれない。
だとするなら……今後は慎重に行動しないといけない。
でも、今日のところはこのままここで過ごそう。朝になれば、もしかしたら運営から連絡があるかもしれないから……。
それはそれとして、小腹が空いたし黄色いキウイ食べよう。




