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魔物RPG  作者: 覇気草
1話~15話
2/22

第2話 初めての戦い

 


 光が収まると、俺は見知らぬ森の中にいた。空は明るいが枝葉が多くて薄暗く、しっとりした空気で植物と腐葉土の匂いが強い。


「にゃー」


 おーって言った筈が、出たのはネコの鳴き声。


 ああ、やっぱり人語が話せない。ネコの魔物だから当然か。

 さて、これからどうしようか?

 人間と戦うにしても武器は鋭い爪と牙のみ。体が小さいから大したダメージを与えられない。不意を突いたとしても、一撃で致命傷に持って行くことはできない。

 となると……まずは地道に小動物とか、自分よりも小さくて弱い魔物を狩ってレベルを上げ、進化を目指すのがいいか。

 そうと決まれば獲物探しだ。出発!


 トテトテと軽快な足取りで歩く。

 感覚としては結構適当に足を動かしているのだが、システム側が自動でサポートして本物のネコのような動きにしてくれる。それに体が軽いから人間より動くのが楽だ。





 おっ、獲物発見!


 森の中を歩くこと数分、最初の獲物としてバレーボールサイズの青いスライムを見つけた。中に赤くて丸い核がある。

 スライムはうにょうにょと積極的に動いており、まだこちらに気付いていないっぽい。


 じーーー…………こいつプレイヤーじゃね?


 野生のスライムがここまで積極的に動くとは思えない。

 訝しみながら距離を取りつつ観察していると、スライムは毒っぽい紫の草を取り込み、消化し始めた。群生しているので次々とそれだけを取り込んでいる。


 うん、プレイヤー確定。

 スライムは雑食と相場が決まってるのに、わざわざ移動して偏食行動するのは知性がある証拠だ。

 ヤろう。


 俺は身体に力を籠め、一気に動いて飛び掛かった。

 スライムは油断していたのか反応が遅い。俺のネコパンチは飛び掛かった勢いも相まってスライムの粘液の体を貫通し、赤い核に届いて引っ掻いた。

 すると核は脆く崩れ、形を維持できずに粘液が水溜まりになった。

 どうやら一撃で死んでらしい。


「にゃっ!」


 勝利! と言ったのだが、やはり出るのはネコの声。


 よし次だ!


 勝利の余韻を味わうことなく、移動開始。

 何故ならこのゲーム、リアリティが高めで喉の渇きや空腹の感覚もある。魔物ライフはサバイバルだから食料の確保は急務なのだ。




 次の獲物を探して森の中を彷徨っていると、段々と森の外側に近づいているのか明るい雰囲気に変わり始め、じめっとした空気から爽やかな空気になり、足元も乾いた枯れ葉や土になった。


 ――むっ!


 咄嗟に木の陰に隠れる。

 見つけたのはのっしのっしと歩く、大型犬サイズの厳つい顔したイノシシの魔物。体が赤いので目立っている。


 これは無理だな。


 思考するまでもなく勝てないとわかる。

 見つからないように離れようとすると、何か踏んだ。


 パキッ。


 ぱき?


 下を向けば小枝が一本、片足の下で折れている。

 よく聞こえるネコ耳からはイノシシの魔物の足音が消えた。

 代わりに鼻息が後ろから聞こえる。


 ああ、嫌な予感。


 そーっと振り返れば、イノシシの魔物がこっちに振り向いていた。目が合う。


 ――――逃げろおおおおおおお!


 脱兎だっとの如く走る。ゲームの中で死んでも問題ないとはいえ、自分の背丈以上のイノシシに襲われるなんて恐怖でしかない。

 森というフィールドだからこそ地形を活かしてジグザグに逃げるが、確実に追って来ているのが音でわかった。


 こうなったら――ネコは木登りが上手いはず!


 ダメ元で登りやすい気に向かって飛びつき、そのまま必死に登る。居座るには丁度良い安定感のある幹に到達して見下ろすと、イノシシの魔物は俺を見上げていた。


 フ、フフフ……流石にここまでは登れまい。

 イノシシの足先はひづめで木登りなんてできないのだから。


 見下ろしているとイノシシの魔物は下がり、木に突進した。少し揺れた。


 ハハハ、どうやらパワーが足りないようだな。


 イノシシの魔物は悔しそうに鳴き声を上げると、のっそのっそと引き返して行った。


 ……ふぅ。

 良かった。あっさり諦めてくれて。執拗に狙われていたら他の魔物を呼び寄せかねないからな。

 さっさと場所を変えたいが、まだこっそり見張っているかもしれないから暫く待機しよう。




 耳を澄ませて木の上でじっとしていたが、物音一つしない。


 もうそろそろ動くか。


 待っているだけでは時間の無駄なので意を決するが、すぐにその意思が揺らぐ。


 ……た、高い。


 すいすい登れたのに、降りるとなると安定した足場が見当たらない。


 ネコが高くて下りられない理由がよくわかった。

 でもびびってちゃダメだし……うおおおおっ!


 勢いに任せてネコらしく垂直に降りて、ほぼ音もなく着地。


 ほっ、降りれた。

 敵は――いないな。


 周囲が安全であると確信した俺は、トテトテと次の獲物を探しに向かった。




 獲物、発見!


 見つからないように木陰に隠れる。

 次の獲物は頭に角を生やしたウサギの魔物。ライトノベルのファンタジーで定番の雑魚だ。

 今は低木に沢山実っているブルーベリーみたいな紫の小さな果実をむしゃむしゃとお食事中。


 じーーー…………勝てるかなぁ?


 ウサギとはいえ、相手も魔物。しかもブラックキャットと同じく機敏に動くタイプだ。


 まぁ、やるだけやってみよう!


 気合を入れ、今度はへまをしないように足元に注意しながらそろりそろりと近づく。

 ある程度近づいたところで一気に駆け出し飛び掛かり、爪を出した前足でがしっと捕まえ、その首筋にがぶりと噛みついた。

 ウサギの魔物がジタバタするが、しっかりと押さえ込んでいるので問題ない。顎に力を入れつつガジガジと口を動かし、傷口を広げる。

 暫くするとウサギの魔物の動きが弱まり、遂にぴくりとも動かなくなった。


 よし勝った!

 そして今日のごはんゲット!


 喜びを体で表現したい気持ちを抑え、横取りされないように引き摺って近くのやぶの中に隠れる。


 さてさて、盗られる前に食べておかないと。

 …………えっと、毛皮をいで肉と内臓を食えばいいんだよね?

 あとゲームとはいえ、生はちょっと怖いな。

 ……ええい、今は魔物なんだ! 食うぞー!


 とりあえず食べてみた。不自由なネコの足と口を使って毛皮を剥ぎ、露わになった綺麗な生肉を食らう。


 うーん。

 ぬるくてヌルヌルで、血の味が強くてそんなに美味しくない。やっぱり調理して素材を美味しくする人間は偉大だ。



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