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LAST GAME  作者: よむよみ
第六章 光と闇の迷宮

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第七十六話 南の塔

 〇月〇日(土)四回目


 今日は南の塔の攻略だ。

 塔を見上げる。黄色い光を放っている。

 TAKASHIと一緒に塔に入っていく。


 これまでの塔では、建物の中にいる感じだった。

 まあ実際に塔の中にいたわけだし……。

 ただ、今回は、その感覚が崩れた。

 扉をくぐった先には、大自然の光景が広がっていた。


「わぁ」

 見渡す限りの大草原。

 塔の中にいる感じがしない。

 思わず感嘆の声を上げてしまう。


 もちろん壁はある。

 ただその壁に、映像が不思議な力で映し出されているだけだ。

 もし区切られた壁だけだったら、テレビのように感じたと思う。

 でもこの塔は、上下左右の壁、全ての壁に映像が映っている。

 まるでそこから先にも空間が広がっているかのような錯覚を受ける。


「こんなに広い世界、感じたことない……」

 日頃、都会に住む私には、特別に感じられた。


 いけない、いけない。ここは危険な塔の中。油断してはダメ。

 モンスターがどこかに潜んで、私たちを狙っているかもしれない。

 そう思って注意深く辺りを見渡してみるけれど、ところどころに木があったりするだけでモンスターの気配はない。


「やっぱり、モンスターはいないみたいだ」

 TAKASHIも同じことを考えていたみたい。


 二階への階段まで、少し蛇行しながら道が伸びている。

 私たちは、一歩ずつ慎重にその道を歩む。

 階段まで無事にたどり着く。

 やはり杞憂だったのかもしれない。モンスターはいなかった。

 少し安心しながら上へと進む。


 二階以降も同じだった。

 川を渡ったり、森の中を歩いたり、山道を歩いたりした。

 しばらくの間、塔の中であるということを忘れていた時もあった。

 川の浅瀬とか橋とか岩の段差とか時々、TAKASHIに手を引っ張ってもらったりした。

「わっ」とか「きゃっ」とか、なんかデートしている気分!?


 そんなこと考えていたら、屋上にたどり着く。

 これまでと一転して、山の岩場という感じだ。

 ずっと奥に控えているのが、遠くてまだよく見えないけれど、この塔のボスのドラゴンに違いない。

 瞳を閉じ、前足に頭を乗せて休んでいるようだ。


 前回の西の塔から一週間、次のボスを予想していた。

 青い東の塔、赤い西の塔、それぞれコールドとファイアがよく効いた。

 きっと次のボスは黄色い体をしていて、サンダーがよく効くはずだ。

 予想した通り南の塔は黄色い光を放っていた。


 私たちは慎重に奥に進んでいく。

 近づくにつれてドラゴンの姿、形がはっきりとしてくる。

 今までのドラゴンと同じような姿をしている。

 けれど、予想していた色ではなかった。


「ホワイトドラゴンだ」

 現実世界でも時々、白い個体は存在する。

 全身白い熊は……、ただの白熊だから例としては不適切ね……。

 えっと、有名なものとしてはホワイトタイガーかしら。

 数千、数万に一つ、真っ白い体をして生まれてくる。

 時々見つかっては、もてはやされている。

 でも、私たちがよく目にするのは、白い鳩ね。


 白い個体は、とても珍しく、神の使いとされる事もある。

 白くて、そして、大きくて……。

 そんな姿のドラゴンを実際に見て、納得させられる。

 白というより、白銀といった方が正しい。

 まるで空想の中にいるみたい、今にもしゃべり始めそうと感じさせるほど、神々しい。


 ……、白……か。黄色じゃない。

 でもここまでは想定通り。

 私は、色彩魔導士。

 どんな色でもかかってらっしゃい。


「いざ!」TAKASHIの掛け声に、ホワイトドラゴンは首を上げ目を開く。

 さあ、戦闘開始だ!


 黄色は原色であり合成して作れない。

 けれど、それは絵の具など色の合成のお話。

 絵の具は色を混ぜれば混ぜる程黒くなるけれど、光は色を混ぜれば混ぜる程白く明るくなっていく。

 光の三原色は、赤、青、緑。

 何色を混ぜれば黄色になるか、当然、調べておいた。

 私はれっきとした色彩魔導士なのだ。


「まずは、レッドライト」

「そして、グリーンライト」

 左右の手で魔法を発動し、光を合わせていく。

 黄色く輝く光が現れる。とても美しい光だ。


 ホワイトドラゴンに光を照らしすと、黄色いドラゴンが姿を現した。

 白銀のドラゴン、とてもきれいでずっと見ていたかった。

 けれど、私たちは争うのが定め。残念だけど仕方ない。

「雷よ、かのドラゴンを貫き給え!サンダー」


 私の魔法は鮮やかにドラゴンを撃ち仕留めていた。

「すごい!あっさりだったね!」

 TAKASHIに褒められた。私は「てへへ」と笑顔になる。


 ――新しい魔法を覚えました――

 急なポップアップに目を向ける。

 新しい魔法か。なんだろう。楽しみだ。

 私は早速ウィンドウを開く。


「ホーリー」

 見知った名前に、少し嬉しくなる。

 私は普段、僧侶の系統の職業を選ぶ。

 そして、ホーリーは僧侶の数少ない攻撃魔法の中の最強の魔法だ。


「わっ。私、ホーリーを覚えたみたい!」

「おっ。いいね!」


 そんな会話をしていた時だった。

 急に殺気を感じた。


 私たちは、塔を簡単に攻略したと思って、少し油断していたのかもしれない。

 塔の主を倒されたモンスターたちが、一斉に私たちに牙を向けていた。


「でも、さっきまで全然いなかったのに」


 私は、辺りを目を凝らした。

 何もいなかったはずの場所に、うっすらと影が見える。


 擬態して隠れていたんだ……。


 モンスターたちは、昆虫が草木に隠れるように、景色に擬態していた。

 昆虫の擬態は慣れた人でも見つけるのが難しい。

 おびただしい数のモンスターの気配……。

 いたるところに隠れていたみたいだ。


 空に浮かぶ雲には白いモンスター。

 地面には石の装飾をしたモンスター。

 草原には緑の細長いモンスター。

 虹の背景と思っていたところにも、虹に隠れてモンスターがいた。


 それに、下層からも集まってきている。

 私たちが昇ってきた階段から、続々とモンスターが昇ってくる。

 一度通ってきたのに、完全に見落としていたらしい。

 呑気に歩いている場合ではなかった。


 モンスターの圧力に一歩後ずさる。

 それを見てモンスターたちは遠巻きに近づいてくる。


 それだけこの塔のボスは信頼されていたという事かもしれない。

 そして、私はそのボスをやっつけた……。

 どうしよう、数が多すぎる……。


 焦っていた私とは対照的に、TAKASHIは冷静だった。

 こちらを向くと「新しく覚えた魔法使って見たら?」と言う。


 そうだ。新しく魔法を覚えたんだった。

 せっかくだから使ってみないと。

 何もせずにやられてしまうのは嫌だ。


 黙って頷いて、詠唱の準備に取り掛かる。

「悪しきモンスターたちよ。聖なる光に打ち滅ぼされたたまえ。ホーリー」

 白い光が周囲を包みこむ。

 全体攻撃だった。多くのモンスターがダメージを負っている。

 でも……、ほとんど効果が無かったようだ……。

「私の魔法じゃ、全然ダメみたい……」


「いや、そんなことないみたいだぜ。よく見ろよ」

 私は圧倒的な数のモンスターを前に、冷静さを失っていたようだ。

 そして、やっぱりTAKASHIは落ち着いていた。

 TAKASHIの見ている方向に目を向けると、倒れているモンスターもいた。


 雲に擬態していたモンスター。

 植物の綿に擬態していたモンスター。

 色の薄い花に擬態したモンスター。

 そして、白い石ころに見えるモンスター。


 あっ。そうか。


「これまでの応用みたいだな。やれるだろ」

「ええ、もちろん」


 慎重に魔法を唱え始める。


 倒れているモンスターは、どれも白いモンスターだった。

 これまでの塔だってそうだった。

 私の魔法は色に関係がある。

 そして、ホーリーは白いモンスターには効果が強いという事だ。


「私は、色彩魔導士」すくっと立ち上がり、再び気合を入れなおす。

「レッドライト、ブルーライト、グリーンライト」

 私は、三つの魔法を一つずつ唱え合成していく。

 どの魔法も最大出力、それが一つになると強い白い光となって手から現れた。


 強烈に白い光。

 どんな色をしていても、この光をあびたら、自身の色と関係なく白く光る。


 よし、この状態でのホーリーなら……。


 あれっ?まって‥‥。

 二度目のホーリーを放つ余力が無い。


「MPが足りない……」

「魔力回復薬持ってたよな」

「……、でも今、魔法の制御で、両手がふさがってて……。

 TAKASHI。私の鞄からMP回復薬を取り出して飲ませてくれない??」


 たくさんのゲームを攻略してきた私としたことが、MP不足だなんて情けない。

 この白い光は消すのは時間がもったいない。

 それに、強烈な光が敵を気後れさせている。

 もし魔法を解除したら、今にも一斉に襲い掛かってくるかもしれない。

 だから、薬をTAKASHIに飲ませてもらうようにお願いした。


 TAKASHIが私の鞄からMP回復薬を取り出し、私の顔に近づける。

 TAKASHIは少し照れているようだ、顔が赤くなっている。

 私は自分の状況を振り返る。

 両手は魔法の制御で上にあげている。

 両手を塞がれている無防備な女の子に液体を飲ませる……?

 どうしよう、変な想像しちゃった……。


 手が使えない私の代わりに、私の鞄からMP回復薬を取り出し、フラスコのようなビンに入った液体を私の口に注ぎ込む。

 他人の手で注がれた液体を全部飲み込むのは難しい。

 時々勢いが早くて口から液体がこぼれてしまう。


 TAKASHIが唾をゴクリと飲みこんだ。

 そんな目で見られたら、私まで緊張しちゃう……。


 甘くておいしい。

 多少こぼれてしまったけれど、十分な量を摂取できたみたい。

 私の体が精神エネルギーで満たされたことが感じられた。

「ありがとう。もう大丈夫!」


 よし、今度こそ。

 再び手の白い光を周囲に放ち、詠唱を開始する。

「すべての邪を打ち滅ぼす聖なる魔法、ホーリー!!」


 強烈な光に照らされて白く輝くモンスターたち。

 白いモンスターには特別な効果のある全体攻撃魔法、ホーリー。

 ホーリーの白い光に包み込まれ、すべてのモンスターは跡形もなく消し飛んだ。


 今度こそ、塔の攻略、完了だ。


 ◇ ◇ ◇


 RPGで遊んでいたら、アイテムを使うというコマンドしか、表示されないけれど……。

 実際には、どう使っているのかしら……?

 少しはどきどきしているキャラクターがいたりするのかな?


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