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LAST GAME  作者: よむよみ
第六章 光と闇の迷宮

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第七十五話 西の塔

 〇月〇日(土)三回目


 今回の物語は4つの塔を攻略することが目的みたい。

 多くの場合、東西南北、東→西→南→北の順で攻略するように作られる。

 ゲームの製作者は、デフォルトのサーバーに倣って作り始めるからだろう。


 前回は東の塔だった。だから、今回はきっと西の塔。

 私たちは特に会話することなく、西の塔に集まっていた。

 見上げると、塔は怪しげに赤く光っている。


 TAKASHIを先頭に塔に入っていく。さあ、物語の再開だ。


 塔の一階は、前回の塔と同じように真っ暗だ。

 向こうに二階へと続くであろう階段がうっすらと見える。

 ただ、西の塔の時とは違って、モンスターの気配はない。


「レッドライト」

 明かりの代わりに魔法を唱える。

 赤い光が周囲を照らす。


 思った通りモンスターはいないようだ。

 前回のように見えていないだけの可能性はある。

 油断してはならないが、それでも、気配が無いという事に少し安心する。


「地面に何か模様が書かれているみたいだ」

 TAKASHIの言葉に、私も地面を見る。

 いかにも罠がありそうな模様が描かれている。

 あやしい模様を避けて地面を進む。


 TAKASHIが踏み出した時だ。急にカチッと音がした。

 私たちの体は、白い光に包まれて塔の入り口に戻される。

「やっぱり、罠か……。気を付けてたつもりだったんだけどな……」

「TAKASHIが罠に引っかかるなんてめずらしいね」

 そんなこともあるわよ、とTAKASHIを励まして今度は私が先頭を進んでみる。


「ブルーライト」明かり代わりの魔法を再び使う。

 同じ色だと飽きてしまう。今度は青の光を使ってみた。

 しばらく進むと、やはりカチッと音がして入り口に戻される。

 気を付けたつもりだったけれど、また罠に引っかかってしまった。

 TAKASHIの気持ちがよくわかる。

「なるほど。確かに罠には全く気付かなかった……」


 それに、罠の位置は、変化していたみたい。

 罠の位置を覚えても意味は無いということだ。


 東の塔の一階の攻略を思い出す。

 前回は見えないモンスターを光の調整で見つけた。

 今回は見えない罠。何か罠を見破る方法はあるはずだ。

「見えない罠か……。きっと、これは色彩魔導士に対する挑戦ね」


 私は再び入り口に立つ。

 腕を組み、一つ深く息を吸い込むと、ゆっくりと目を開ける。


「私は色彩魔導士……。まずはレッドライト」

 右手を掲げ、赤い光をその手に集中させる。

 次に「ブルーライト」

 まず、左手で青の魔法を発動し、右手に魔法を重ねていく。

 最後に「グリーンライト」

 同じように左手で緑の魔法を発動、右手に移す。


 全ての色が重なり白色となって輝きだす。

 信じられないぐらい明るい色だ。

 これでこそ、色彩魔導士。私はそう思って笑みをうかべる。


 でも……、まだ、罠は見えないようだ。

 明るさだけではダメ。この塔にはもう一つトリックが隠されているみたい。


 私は、赤を強くしたり、青を弱くしたりと、慎重に色を調整する。


 赤を強く、青と緑の光を少し弱くした時だった。

 地面の上のボタンがくっきり見えた。

 ボタンはたくさん配置されていた。

 これでは運だけでの攻略は難しい。


 感心した表情を浮かべていたTAKASHIがこちらを見る。

「すごい。全く見えなかった罠がはっきり見える。

 これなら大丈夫だ。よし進もう」


「あ、待って……。私、魔法の制御に集中していて動けない……」

 頭の中は、魔法の事ばかりでぱんぱんだ。

 さらに、地面を見て罠を避けて歩く……、少し難しい。

 このままでは、時間がかかってしまう。


 TAKASHIは頷いて、私を黙って抱きかかえた。

 お姫様抱っこだ。

 一瞬頭が真っ白くなりかけたが、なんとか魔法は保てた。


 TAKASHIは私を抱きかかえたまま、慎重に罠のボタンを踏まないように歩き出す。


 TAKASHIの体温が伝わってくる。

 まずい……、なんか緊張してきた。

 魔法が維持できなくなってしまう。

 何か気を紛らわせないと……。

 私は科学っぽいことを考え始めた。


 現代の科学では、目の網膜の光を感じる細胞からの電気信号が脳に伝わることで、人は物を見ることができるとされている。

 RGB――レッド、グリーン、ブルーを検知する細胞。

 それらの細胞からの電気信号の組み合わせを、七色のグラデーションとして認識する頭脳。

 この世界の仕組みは不思議だ。


 もしかしたら、私の頭の中での青のイメージと、他の人の青のイメージは違うかもしれない。

 私は青が好きだけど、赤が好きな人もいる。でも実は、頭の中でのイメージは同じかもしれない。


 そもそも、色の区別が困難な人がいる。

 誰がどんな風に見えているかなんて、やっぱり誰にもわからない。


 道具を使えば、誰でも多少の困難は修正できる。

 例えば眼鏡は、視力を補強することができる。

 でも、色の見え方に関しては難しいと思ってた。

 だけど、さすがは科学。多少の色の区別なら可能になったらしい。

 例えば、赤の感覚が弱ければ、青と緑の光を抑える眼鏡を身に着けることで、色の区別は可能になる。

 そんな眼鏡が作られていた。

 そう、ちょうどこのフロアーで、見えなかった罠を見ることができたように。

 多少の色の区別を現代科学はいとも簡単に乗り越えた。科学はとても進化している。


 そんなことを考えながらふと思う。TAKASHIは何色が好きなんだろう。

 同じ景色を同じように認識できて、同じように感じる事が出来たらうれしいな。


 二階への階段へたどり着いたようだ。私の体は下ろされた。

 私の魔法への集中力はぎりぎり持ちこたえたみたいだ。

「ありがとう」私は少し照れながら感謝を伝えた。

 TAKASHIは大したことなさそうに頷いて、二階への階段を上っていく。


 二階以降は、明るさを取り戻し、赤の塔らしく赤っぽい光で照らされている以外は、普通のダンジョンだ。

 前回の塔は、冷気のコールド魔法がよく効いたけれど、今回は思った通り炎のファイア魔法がよく効いた。

 冷気は青、炎は赤とこの手のRPGでは決まっているのだ。

 いつも通り淡々とモンスターを倒しながら塔を登っていく。


 どんどん上っていくと、最後は屋上にたどり着いた。

 この世界は暗闇に包まれているとは言え、外に出たら明るい。今はまだ昼間だ。

 陽の光を浴びて思わず体を伸ばすと、ドラゴンの咆哮が聞こえてきた。

「ぐぐぐぎゃーーうううう」この塔のボスに違いない。

 レッドドラゴンが襲い掛かってきた。


 TAKASHIは剣で、私は魔法で迎え撃つ。


 まずは、ファイア。この塔は赤い塔。

 さっきまでの雑魚キャラと同じようにきっとファイアが効くはずだ。

 と思ったけれど、前回時のコールド程の効き目はなかった。

 コールドやサンダー、他の魔法も試してみる。

 でも、効き目はほとんどなかった。

「う~ん。魔法は効果薄いのかな……」


 TAKASHIも前回より俊敏なドラゴンの動きに苦戦しているようだ。

「思ったより手ごわいな……」

「うん」

「でも、あのドラゴン……。レッドドラゴンというには少し色が薄くないか?」

「あっ。確かに」

 白い陽の光に照らされているせいか、色が薄い。

 赤というより、ピンクだ。


 ん?もしかして……。


 前回は塔の中、青い光にドラゴンは照らされていた。

 だから、コールドがよく効いたのかしら?

 試す価値はありそうだ。


「私は色彩魔導士」

 私は笑顔を取り戻して言ってみた。

 手を掲げ、魔法の詠唱を始める。

「レッドライト」

 強烈な赤い光でドラゴンを照らす。

 まごうことなき深紅。これでこそレッドドラゴン。


「よし……、ファイア!!」


 効果は抜群だ。

 再び大きな咆哮をあげながらレッドドラゴンは倒れていった。


「ナイス!」TAKASHIの声が聞こえた。

 私は少し嬉しくなった。


 塔は輝きを失っていく。

 塔の攻略が完了したようだ。


 ◇ ◇ ◇


 TAKASHIとの絡み、この日記はもう誰にも見せられないわね。

 ゲームにもお姫様抱っことかいうコマンドあればいいのに。

 ……。あるわけないか。


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