episode2
「お料理教室」
サーバーの存在は最近知った。
「今日の献立何にしようかしら。いつも悩むのよね」
いつものようにぼんやりと遊んでいると、全体チャットにそんなコメントが流れてきた。
わかるー、と思ってしばらく眺めていたら「お料理教室おすすめ」と返信されていた。
そして、何気なく入ってみたら……。
とても便利だった。
例えば…、今日の気分は和風で、冷蔵庫にジャガイモが余っていたとする。
そんな時は、このサーバーにログインして、「和の塔」に向かう。
そして入口のところで「ジャガイモ」を選択し、レシピは「おまかせ」として塔に入る。
一階では、包丁を使うようだ。
机に用意されている包丁を早速装備する。
一階を見渡すと、敵は4種類。
ジャガイモの形をした「じゃが」、ニンジンの形をした「にんじ」、玉ねぎの形をした「たまね」と、豚の姿をした「ぶた」が気ままに歩き回っている。
ちなみに、じゃがは3体、ぶたは2体、それ以外は1体ずつだ。
一階の扉はしまっている。すべての食材――もとい敵を倒さないと先に進めない。
敵にエンカウントして戦闘に入る。
包丁を装備した時の技はとても豊富だ。
みじん切り、いちょう切り、輪切り、くし切りなど数えていたらきりがない。
その技をこの塔の敵に合わせて選択する必要がある。
今回、「じゃが」と「にんじ」、「たまね」については、乱切り、「ぶた」については「一口大」という技を使ったらクリティカルとなって敵を倒せた。
すべての食材――じゃなかった、敵のドロップ品を回収してボールに納めると二階への扉は開いた。
二階では、火を使うようだ。
フライパンを中火で熱し油をひき、一階で集めたドロップ品を入れる。
あせって次の工程に移ろうとすると、「ぶー」という音と共にリセットだ。
ぶたのドロップ品の色が変わるまで、「炒める」という攻撃をしないといけない。
そして、全体に油がなじんだら、水と砂糖と醤油、料理酒、みりん、和風だしを入れて「煮る」という攻撃を繰り返すと完了だ。
三階のボス戦は、今までのおさらいだ。
いくつかの敵の中から、ぶたを二体、にんじを一体、たまねを一体を選ぶ。
じゃがは最初から選択されている。塔の入り口で選択したからね。
それらを適切に攻撃すると、ボスを撃破できる。
今回は簡単だった。一時間もかからずクリアできた。
そして、実際に店に行って、豚を200グラム、ニンジンを一本、玉ねぎを1個買う。
ぶたは一体100g、他は一体につき一つという計算だ。
それらを乱切り、一口大にカットして、煮る。
おいしい肉じゃがの完成だ。
今回はとても単純なレシピだったから三階までだったけれど、もう少し複雑な工程のレシピの場合、もっと塔は高くなる。
冷蔵庫に寝かせている間などに、別の工程、次の階が始まることはもちろんある。
それにしても、このゲームは、不思議だった。
ネットや料理本、SNS、多くのレシピとにらめっこしてきたけれど、すっと頭に入るのはこのゲームだけだった。
買い物リストが必要な私だったのに、気が付いたらメモを取らなくてよくなった。
レシピを見ながら作っていたのに、今ではゲームを思い出して作るようになってた。
気が付いたら、とても手際よく料理が作れるようになってた。
コマンド選択ではあるけれど、実際に手を動かして、攻撃モーションを見るってのがよかったのかな。
それとも、文字ではなく視覚的に見ることができるのがよかったのかな。
料理を作る動画もあるけれど、覚えるのならゲームの方がいいのかもしれない。
動画だと人や配置や照明など不要な情報がたくさんあるけれど、ゲームであれば見慣れた攻撃モーションを覚えるだけでいい。
なにより、レシピをランダムで選んでくれるのがいい。
最近、旦那の「なんでもいい」という言葉は、そこまで不愉快に感じなくなってきた。
最近、少し料理が上手になってきた気がする。
私って、料理の才能あったのかしら?
くすっ。そんなわけないわね。
このゲームが、私にぴったりだっただけだ。
ありがとうサーバー製作者さん。




