episode3
お料理を作る上で一番大切なもの――それはもちろんレシピ。
でも、レシピだけだと、なぜかうまく作れない。
そんな私に足りないものは、多分、下準備だ。
いくらお料理が苦手な私にだって、材料が目の前に用意されていたら短時間で料理を作れる。
そう「その通りに作ったものがこちらです」と渡してくれれば、私にだって3分間で料理できるのだ。
ん?3分間は放送時間であってお料理時間じゃない、って?
ふふっ。まあ例えってことね。
ただ、下準備が大切であるということを伝えたかっただけ。
そんな下準備のためにミニゲームが用意されていた。
お題が提示され、キッチンで料理して渡す、そんなミニゲームだ。
アプリの広告でよく見かけるようなゲームによく似ている。
ただ、このゲームでは、よく使う下準備の方法が実際に学べるようになっている。
例えば、豚肉がお題だったら、叩いて塩、コショウを振る。
大根だったら、桂向きしてから、いちょう切りみたいな感じね。
こんなお題が、レベルごとに複数用意されている。
上級になると工程が数日がかりになる。一般ピーポーの私には不必要ね。
一時期、暇さえ見つけてはこのミニゲームをやっていた時期があった。
単純で簡単なゲームというのは、気がついたら数時間経過しているから恐ろしい。
ただ、その代わりに、このゲーム、実生活に少し役に立ったみたい。
ある時、ふと気がついた。
料理の味付けに必要な調味料。この調味料には使う順番がある。
そして、このミニゲームに用意された調味料は、その使う順番の通りに並んでいる。
お料理のさしすせそと言えば、砂糖、塩、酢、醤油、味噌であるという事は知っていた。
けれど、この順番の通りに使用するとまでは知らなかった。
私は、全て同じ調味料としてあまり区別してなかった。
でも、実際の調味料は、それぞれ違う性質を持っている。
分子量の大きさが違ったり、味の感じ方が違ったり、蒸発したり……。
だから、調味料の使用には順番の考慮が必要らしい。
例えば、砂糖と塩の下味をつける場合は、分子量の大きい砂糖から染み込ませて、それから塩を振る、という感じだ。
分子量の大きさが小さい塩を先にしてしまうと、砂糖が染み込む隙間が無くなってしまう。
こんな具合に、調味料の使用する順番はある程度決まっている。
「料理は科学」という別のミニゲームで、もっと詳しく紹介されていた。
けれど、私には少し難しくてわからなかった。
料理は科学という言葉通り、とても奥が深そうだ。
結論として、味が染み込みにくい砂糖は下味として先に、そして、風味を活かしたいお酢や醤油、みそは後から使うのだ。
そんな使用する順番の通りに、ミニゲーム内の調味料は並べられていた。
もちろん、ミニゲームでの調味料の配置は設定によって変えられる。
けれど、「このデフォルトに合わせてお台所を整頓するのがおすすめです」
と記載してあったため、私はこの言葉通りに台所を整頓した。
それ以来、調味料は右から使うと、体が覚えている。
最近、友達の家に遊びに行くとき、お台所の調味料の配置を確認するようになった。
そして、私と同じ配置をしている人を見かけたら、
「もしかして、同じゲームをやっているのかしら」と思う。
ただ、言葉にはできず、思うだけだった。
この国では、ゲームは遊びと捉えられていて、オープンにするには少し抵抗がある。
だけど……、このゲームのおかげで、私のお料理スキルは確実に上達していた。




