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LAST GAME  作者: よむよみ
外伝2 でぃすとぴあ

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episode8

 相変わらず、国会ではスキャンダルの追求が行われているらしい。

 予算や法律を作る国会。数百兆単位の予算や法律の立法が行われている。

 些細な事でも、数億単位でお金が動くかもしれない。

 そんなチャンスを棒に振ってまで、スキャンダルの追求をする。

 それは、彼らの支持者の望みなのだろうか?

 選挙戦を長く争っていたけれど、政策や予算には問題を見つけられなかったのだろうか?

 問題ないから、人格攻撃しているということなのか?

 争っているように見えて、予算や法律の追求はしない。

 予算や法律は通すけれど、自らの自尊心のために意地悪する。

 俺なら、こんなツンデレには投票しない。

 ツンデレはアニメや漫画だけでいい。


 うんざりしつつPCを起動する。

 まだコアタイムまで時間がある。

 何をしようかと思っていると、TKGの誰かが「攻略サイト」と言っていたのを思い出した。

 このゲームの攻略サイトなんて見たことなかったけれど、少し気になった。

「LASTGAME 攻略」と打ち込んで検索する。


 確かに攻略サイトができていた。

 オリジナルサーバーの敵や武器の情報をはじめ、それぞれのサーバーの攻略情報まで記載されている。

 もちろん、俺が作ったディストピアサーバーについても記載されていた。

 他のサーバーと比べて、特別に記事が長くなっているようだ。


 俺は読み進めた。


「最高難度。現在攻略中。

 敵の姿がわからないことがゲーム性を変えた。

 時間制限RPGに、高難度のローグライクのような戦略性が加わった」


「戦略性??」

 攻略させるつもりなんて無かった。

 ただただ難しくしただけだ。

 だから意味が分からなかった。


 多くの記事が載っていたが、特に記事が長かったのは「北の古城」だ。

 それだけ、多くのプレイヤーが苦戦していたということかもしれない。


「強い敵が未判別の時は、防御に徹しよう。特にレベルが低いうちは硬化ドリンクを使おう」

 硬化ドリンクとは、店で売っているアイテムで、使うとしばらく体が固まり動けなくなってしまう。

 使い道の無いアイテムだと思っていたが、体が固まっている間、相手の攻撃を無効化するという効果もあるらしい。


「レベルが低いうちは逃げる事も考慮に入れよう。煙玉は必須」

 煙玉も店で売っているアイテムだ。

 戦闘で使うとノーリスクで確実に逃げ出すことができる。

 その場所での生存レベルに達していない時に、強敵に出会った時に使うと記載されている。

 これも普段使わないアイテムだ。


 さらに攻略記事は続く。

「獲得したアイテムによって、レベル上げの場所を変えよう」

 敵は時々アイテムをドロップする。

 その中には、特定の敵を無効化したり、特攻だったりするアイテムもある。

 特におすすめは、ラバーブーツ(雷攻撃無効化)や、水のお守り(炎攻撃軽減)、サンダーソード(飛行系の敵に強打)らしい。

 今までゲームしていて、獲得したことは何度もあったが、装備したことなんて無かった。

 レベルは十分でそもそも必要ない。

 普通は多くの敵に有効なアイテムを選択する。


 時間制限のあるRPGで、レベルは持ち越されない。

 けれど、ボスの攻略にはかなりのレベル上げが必須。

 どこかで鍛える必要がある。

 そのレベル上げを、手持ちのアイテムを考慮し、最適な場所を選択する。

 柔軟な戦略だ。

 そんなこと、考えたことなかった。


 その他にも「音響弾は経験値の高いモンスターに使おう」とか様々な攻略方法が記載されていた。

 音響弾とは、敵をしばらく行動不能にするアイテムだ。


 ボス戦についても詳しく書いてある。


「ここまでも高難度だったが、ボスはさらに高難度。

 ボスは3種類のうちのいづれか。もちろん初めはどのタイプか不明だ。

 相手の攻撃や相手へのダメージで判別する必要がある。

 獲得したアイテムを有効活用して、何とか勝利を勝ち取れ」


 防御や回復、攻撃のタイミングなど詳細に記載されていた。

 けれど、ボスの攻略自体はまだ出来ていないようだ。

「3種類いづれも、倒れる時に強力な攻撃を放つ。

 おそらくその攻撃に耐える事ができれば勝利となるはずだ。

 ……。攻略中」


 ボスの最後の大爆発を耐えるには、カジノに行く必要がある。

 カジノのコインに生き埋めにされた精霊は、近くのコインに祈りを込める。

 そのコインに触れたプレイヤーには、対爆の加護を受けられるという仕組みだ。

 何時間かカジノで入り浸れば自然と受けられるはずだ。

 あんなに大きなカジノだからとヒントは出さなかったが、不親切だったらしい。

 攻略のために何度も城に向かったプレイヤーたちは、まだ気が付いていないようだ。

 まあ、攻略させるつもりなんて無かったから、俺には関係ないことだ。


 きっと今回は「ごーや」というプレイヤーがその加護を受けていたのだろう。


「情報求む」と締めくくられていた。

 金曜日に攻略されたが、この記事はまだ未更新のようだ。



 作ったサーバーを思い返す。

 ゲームの難易度を高くしただけのはずだった。

 でも、それが、ローグライクゲームのような戦略性を生んでいた。

 普段使われないアイテムが活躍していた。

 多くのプレイヤーが協力し、何とか攻略しようと工夫していた。

 さらに、60分という時間制限も緊張感を高めているようだ。

 的確な判断が即座に求められている。


 ゲームは、今のゲームより昔のゲームの方が難しい。

 今のゲームは、多くの人が気軽に遊べるように作られているからだ。

 だから……、難しくしたら誰も遊ばないのではないかと思ってた。


 ただ、最近少しずつ変わりつつあるのかもしれない。

 配信サイトでは、ゲーム実況というジャンルがある。

 初見のゲームを楽しむ様子を配信する配信者も多いが、中には難しいゲームを攻略する様子を配信者もいる。

 そして、そういう配信者は、より高難度のゲームを探している。

 そんな配信を見る人たちも、難易度が高いゲームの方が見ていて面白いようだ。


 難しいゲームを攻略する、簡単なゲームでも最短時間で攻略する、そんな追求する人たちは昔からいた。

 そんなゲーム好きの熱が配信サイトの普及で一般人にも伝染しはじめていた。



 こんなゲームでさえ、本気で挑戦し、活路を探す。

 この国の人たちはとても優秀だ。

 若者はさらに優秀だと感じる。


 身の回りのツールが格段に進歩した。

 そろばん、電卓、電子辞書、PC、タブレット、AIとものすごいスピードで進化している。

 当然、そんなツールを若くから取り込んだ人たちの成長速度は速い。


 自分にはわかる。若い人たちは優秀だ。

 もし、AIの普及した今に幼少期を過ごせていたら、もっと違う自分になれたに違いない。

 それぐらいツール類の進歩が速い。

 特にAIは、数十年の労働で得た経験値など軽く吹き飛ばした気がしてしまう。


 この国で優秀な若者は、将棋や野球だけではない。

 サッカーだって力をつけている。

 この国のチームは、全体で共有する戦術、規律が優れていると言われているがそれだけではない。

 最後まで走りぬく持久力が特に素晴らしい。一朝一夕では身につかない。

 追いついたり逆転したり、最近では後半の方が見どころが多い。



 コアタイムが近づき、多くの人が集まっている。

 いつも通りカジノで全体チャットを見始めた。

 前日までに、4つの秘密の攻略と精霊の解放のイベントをクリアしていたことで、攻略確実と思っているのだろう。


 ただ、残念だが、ゲーム攻略にはもう一つ条件を課してある。

 もともとゲームの攻略なんてさせるつもりは無かったのだ。

 ノーヒントで複雑な条件がこのサーバには隠されている。


 ムービーが始まった。魔王の登場だ。

 クリア条件の事など全く知らずに浮かれたコメントが並んでいる。

 デフォルトサーバーと同じ映像、同じように四つの秘密が画面を埋める。

 ただ、魔王への攻撃は弾かれてしまう。

 ここから追加のムービーが始まっていく。


 四つの秘密で埋まった画面の中央に、助けた精霊の顔が浮かび上がる。

 目を閉じて手を組み祈りを捧げているようだ。


「まだ、俺たちのターンだ」

「カジノ攻略してなかったら、ここで撃退されてたのか」

「クリアした人ナイス!!」

 全体チャットがざわついていた。


 勇者が颯爽と画面上部から現れ、魔王に切りかかる。

 TKGのごーやだった。

 もちろん四つの秘密とカジノ攻略、全てを攻略したプレイヤーから選ばれている。

 ごーやは、精霊のご加護を受け、不思議なオーラを身に纏っている。


 勇者のコメントを見ようと全体チャットが少し静かになる。


「みんなありがとー。

 開発者さんもありがとー。

 楽しかった!!!」


 勇者につられ、全体チャットはさらに盛り上がった。


「やったー!!」

「おめでとう!!」

「よっしゃ!攻略だ!!」

「おめでとう!!!!!」

「ナイスゲーム」


 皆がゲーム攻略に歓喜のコメントをしている。

 全体チャットがものすごいスピードで流れている。

 そのまま、難なく魔王を切り裂きムービーが終わった。

「GAME CLEAR」という文字と共に、エンディングに移っていく。

 プレイヤーは皆、喜んでいるようだ。



 やっぱり、この国の人たちは素晴らしい。

 エンディングを眺めながらふと思った。

 気が付けば、多くの人がゲーム攻略に集まっている。


 このゲームだけではない。

 最近では、配信サイトに多くの人々が集まるようになってきた。


 配信サイトでは主として国産のものを紹介している。

 ゲーム実況でもそうだ。

 海外製のゲームなんて山のようにあるけれど、国産のゲームが多く選ばれる。

 報道や国は国民を向いているとは思えないけれど、ゲームは国民に向けて作られている。

 この国の人たちのために国の人たちが作ったゲーム。

 面白くないわけがない。


 数年前の奇病や金欠で孤立していた人たちが、配信サイトに集まる。

 そして、人が集まれば、いつか新しい文化が誕生するだろう。


 この国は、もともとこういう国だった。

 どんなに貧しくても、何かしらの喜びを見つけ、明日への活力としていく。

 そうやっていつも、海外とは一味違う文化を生み出してきた。

 配信サイトが海外のプラットフォームである点は少し気になるが仕方ない。


 この国はきっと大丈夫。

 こんな難しいゲームでさえ、攻略できるのだから。


 いつかその文化が海外へ波及する。

 その時、この国は世界から認められるに違いない。


 もともとは、国産の配信サイトだってあった。

 カラオケだってこの国から生まれた。

 外国人の「カラオキー」という発音は、どこかユーモラスだ。

 もし何かしら使用料をもらおう、とか考えていたらこの国はもっとずっと裕福だったはずだ。

 でも無料で提供したはずだ。他にも多くの文化を安く提供している。

 この国は自国の文化を軽視しがちだ。


 配信サイトを見ていても魅力的な人たちは多い。

 きれいな歌声、魅力的な配信、実験的配信、海外勢に負けているとは思えない。

 もっとこの国の文化を世界に届けるべきだ。

 この国にはまだまだ眠っている才能がたくさんある。


 配信サイトだって、AIだって、一番うまく使いこなすのはこの国だろう。

 この国は昔から、他国の文化を取り込んで、さらに独自に発展させることに長けていた。



 サーバー攻略の喜びを分かち合うコメントを見ながら、サーバーの設定画面へ移動した。

 俺は、理不尽なクリア条件を解除する。


「ずっとカジノに入り浸るキャラクターが100万ゴールドを手にした状態で、クリア時にナイスゲームとつぶやく」


 自分で設定しておきながら、わけのわからない条件だ。

 知らなければ絶対にやらないだろうし、知っていても退屈な時間が必要だ。

 もう二度と、そんな暇な人間は現れない。

 この国の人々は、未知の世界を楽しむことに夢中なのだ。



 さあ、次は何をしよう。

 もっと難しいゲームでも考えてみるか。


 自分自身が特別に優れているとは思えない。

 けれど、どこかいい所を見つけてくれるかもしれない。

 適当なゲームでも、このゲームの良さを見つけてくれたのだ。



「LASTGAME」


 ゲームの魅力は、集まってきたプレイヤーによって変わる。

 不思議なゲームだ。


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