episode7
報道は、あいかわらず重大なスキャンダルだと総理を批判している。
とある記事では、権力の暴走を防ぐために総理の力を弱める必要があると主張していた。
最近の報道機関はどこかおかしい。
公平性、中立性を求める放送法を守っているとは思い難い。
そもそも重大なスキャンダルかどうかを判断するのは視聴者のはずだ。
それに、小さい政府を求めることはあっても、弱い総理は求めていない。
むしろ今この国に求められているのは、閉塞感ただようこの国を一新できる総理だ。
なんのための選挙での大勝か。民意を味方につけたのだから思うように改革を進めればいい。
報道が、この国の最高責任者の品位を落としている。理解できない。
その判断は国民の権利であり義務のはずだ。
なのに報道機関が偉そうに政治を語っている。
国民に選ばれた政治家が言うのであればまだ仕方ない。
間違っていたら次の選挙で審判が下される。
選挙の審判を受ける事もなく、大きな顔をしている報道機関は傲慢だ。
テレビでは、ずっと捏造記事も多い週刊誌ネタをこね繰り回している。
新しい確度の高い情報やスクープもなく、延々と批判を繰り返している。
これでは、ただ権力批判するだけの居酒屋での井戸端会議と変わらない。
総理が各国首脳と会談を繰り返している話は、一切報道されない。
テレビはおかしい。報道に強い不信感を持つ。
けれど、一歩外に出れば……、いつもの通りごく普通の日常が続いている。
この感覚は以前から感じていた。
野党の連日による追及に対し、
「それ国会で議論するほど大事な事なの?この国平和なのか」初めは、それぐらいに思ってた。
ただ、何年も何年も続くようになっておかしいと感じるようになった。
「で、結局、与党の進めた政策は良かったの?成果はどうだったの?」
そんな疑問を持っても、野党のどうでもいい追及を報道してばかりだった。
しかし、どれだけ報道で叩かれても、与党は選挙では負けなかった。
むしろ大勝し続けた。不思議だった。
強い憤りを感じつつも、平穏な日常は続く。
人々はまるで無関心とばかりに楽しそうに暮らしている。
自分がおかしいのか?次第に強い違和感を感じるようになる。
海を越えた大国の大統領選だってそうだ。
奇病が流行した時の報道だっておかしいと感じた。
周囲の人たちとの感覚の大きなずれに、自信が無くなってくる。
疑問を解消しようとネットで情報を調べる。
すると似たような考えを持つ人たちがいた。
その人たちは総じて「ネトウヨ」と揶揄されていた。
そもそも、右翼とは、保守的な人々、国を礼賛する人たちだ。
国のアイデンティティーを維持しようとする集団だ。
先の大戦、戦争自体悪いと思いつつも、東アジアを大国から独立させるという大義を持ち、結果を導いた点は評価できると考えていた自分は、確かにネトウヨらしい。
自分の事をごく普通の人間だと思っていたが、いつの間にか普通じゃなくなっていた。
愛国心を持つことは右翼であり、今の世界では普通ではないらしい。
この国はいつの間にか、なんだか居心地が悪くなっていた。
今、世界では国連を中心に多様性という言葉が叫ばれている。
多くの人種や性別を受け入れようと、多くの国が推奨している。
ただ、そんな多様性は、俺の考えは受け入れてはくれなかった。
世界の多様性とは個人の自由の事で、集団の伝統や規律、地域性には不寛容みたいだ。
国連では西側諸国を中心に崇高な理念を作り、活動を広げている。
ただ、それによって伝統や規律が軽んじられている気がする。
各地から不満の声が上がり、徐々に不協和音の声が大きくなっている気がする。
世界平和を追求するはずの国連が争いの火種を生み出している気がする。
西側と東側での価値観の違い、これこそが彼らの伝統や規律だということに気付いていない。
西側諸国は、長い伝統を持っているのにもかかわらず、それが当たり前すぎて気づいていない。
なくなってから気づいても手遅れなのに。
政治家には、この辺りを期待したかった。
いつの間にかSGDsとして脱炭素やLGBTについて法律で決まっていた。
資源に乏しく輸入する必要があり、人口も多いこの国にとって、脱炭素の達成は難しい。
エネルギーが自然とわいてくる海外とは違って、外貨を稼ぐ必要があるのだから。
そんな地域性への配慮はされていない。
これでは、資源国ばかりに人が集まるようになる。人類の文化が大きな川のそばに誕生したように。
LGBTだって、この国では受け入れがたいと思っている人たちも多いようだ。
個人の自由と集団の協調性の両立、もっともっと議論が必要だろう。
さらに世界と調整する必要がある。政治家には、国民と世界の調整を期待したかった。
一旦、議論を巻き戻して、国家同士の戦争が起きないようにするにはどうすればいいかもう一度考え直した方がいい。
選挙の争点に経済政策が上がること自体、この国はおかしい。
ただ、昨今、経済政策で投票を決めざるを得ない。
それぐらいこの国は困窮している気がする。
政治はこの国の方向性を決めるもので、経済成長は前提であって欲しい。
経済に疎い政治家が選ばれたとしても、経済成長が続く、そんなシステムであるべきだ。
財源が無いからできません、それでは経済に強い人しか政治家になれない。
だから、官僚が経済成長を主導し、その経済成長分で政治家が理念を貫く、そんなシステムが望ましい。
そのためにはまず、なぜ経済成長が止まっているかそんな議論が必要なはずだ。
生産性が上がって生活水準が上がった分、お金の流通量を増やさないといけないはずだ。
なんなら、国民に直接配る、政府とは独立した組織があってもいい。
そしてその分、外貨を稼ぐ必要があるはずだ。
税制を調整し、より外貨を獲得し循環されるように整える必要があるはずだ。
そんな議論が必要なはずなんだ。
こんな事を考えている俺はやっぱりネトウヨらしい。
この国はどんどん居心地が悪くなる。
地動説を唱えたガリレオは偉大だ。
説を見つけた科学力だけではない。どれだけ世間から批判されようとも主張を続けた。
俺には自分の考えが正しいと思う確証も無ければ、主張し続ける気力もない。
ただただ、難易度の高いゲームを作ってばかりだ。
子供の頃、ぼんやりと夢見ていた事――想像すら許さない独創的で創造的で豊かで文化的な未来――はいつか訪れるのだろうか。
生産力が消費を越えた時、文化的な覚醒は自然と起こると思っていたが、まだまだ先のようだ。
余剰な生産力が、文化ではなく、対立や競争、戦争に向けられているように感じる。
今日もカジノにTKGのメンバーが訪れた。
昨日の言葉の通り、今日は4人組だ。
「よし、始めるか」TAKASHIの声でカジノのパズルを解き始めた。
このパズルを事前に調べていたみたいだ。
他のメンバーにも負けずに解いている。
「TAKASHI解くの早いね」
「うん。中学生の頃、パズルは雑誌買って解いてた」
今日初めて来たにもかかわらず、他のメンバーよりスムーズに解いているようだ。
パズル等、論理思考の必要とするもの全般的に、誰かが突出するようになると、解くことをあきらめる人が出てくる。
そう思っていたが、このチームには当てはまらないらしい。
他のメンバーも負けじと頑張っている。
時折、他のメンバーと解く場所を入れ替えている。
難しすぎて手が止まらないように、4人で工夫しているようだ。
順調にパズルが解かれている。
おおよその難所は終えて、あとは手を動かすだけだ。
TAKASHIは誤りが無いか確認作業に入っているようだ。
「よし、完成!」
ついに、マリオが最後の一マスを埋めた。
その瞬間、画面がムービーに切り替わる。
騒がしかった音楽がそっと鳴りやみ、辺りに静けさが訪れる。
騒がしく辺りを照らしていた照明がそっと暗くなる。
静寂に包まれたと思うと突然、パズルの置かれていた台が光り出す。
カジノのスタッフが「Congratulations」というメッセージとともに集まってきて祝福する。
コインの排出口から大量のゴールドがあふれ出す。
薄暗い店内、出てくるゴールドには照明が集まり光り輝いている。
そのコインのうちの一つがより強く輝き、うすぼんやりと人型へと姿を変えた。
小さい精霊のようだ。
「私はコインの精霊。
長い事、このカジノにため込まれていたみたい。
助けてくれてありがとう。
私は流通されてこそ価値がある。
お礼に、あなたたちに力を授けよう」
「なんとなくパズル解いただけだったのに……」
突然のムービーにTKGのメンバーも驚いたようだ。
ただ、驚いたのは彼らだけではなかった。
サーバーの全体チャットも突然の映像にコメントが増え始めた。
「あれっ。何かイベント起きた?」
「もしかして、カジノにも秘密があった?」
「そうか。カジノも攻略の対象だったのか。秘密は四つだと思って油断してた……」
「確かに、デフォルトサーバーにはないオリジナルの建物だもんな。
そりゃ、何か秘密はあるか」
「解いてくれた人、ナイス!」
「おい。号外、出てるぞ」
「何、本当か。ぜひ読んでみたい!」
皆、詳細がもっと知りたいと号外に群がり始めた。
ムービーが終わり、TKGのメンバーたちの興奮も落ち着いてきた。
「思わず叫んじゃった」
「やっと解けたね。皆ナイス」
「うわ。一億ゴールドも出てきた」
「もう秘密は解いちゃったし、今更、こんなお金あっても……。
お金の使い道って何かあったっけ?」
「どうせ使いきれないし、周りに配っちゃおうか」
「そだね。そうしよう」
彼らはカジノにいる人たちが大体100人ぐらいいると数え上げ、一人に100万ゴールドずつ配り始めた。
「おすそ分けです。どうぞ」
「見ていてくれてありがとうございました!」
ごーやにはすっかり顔を覚えられていた。
「ああ、おめでとう」俺はそうつぶやいた。




