episode1
自分が子供の頃、多くの製品が格段に進化した。
特にゲーム機だ。
多くはテレビ画面を利用し、テレビゲームと呼ばれた。
テレビは一家に一台、父親が野球を見るために使われていた時代、画面を別に持つゲームも作られた。
初期の携帯ゲーム機は、画面は白黒で、電池を大量に消費した。
テレビほど大きくない携帯機。電池も買う必要あって画面が白黒だとしても、仕方ない。
そう思っていたが、電池不要のアダプターが作られ、カラー画面もその後すぐに売られた。
進化したのは携帯機だけではない。
テレビゲームだって進化した。
始めて見たテレビゲームは、平面的で音も機械的だった。
それでも、子供心にわくわくしたのを覚えている。
しかしやがて、荒い立体のポリゴンを経由して、リアルでなめらかな立体的な表現が可能になった。
音だって進化した。実際の楽器を使用したなめらかな音だけでなく、声優だって起用された。
子供の遊びと思われていたゲームが、映画を越える迫力を持つようになった。
娯楽の一つとしてゲームも認識されるようになった。
ゲームが最も進化した時代だった。
ゲームはこれからも進化し続けるだろうと思っていた。
それは、ゲームだけじゃない。また新しいブームが起きると思ってた。
まだ見ぬ新しい文化に対して、俺は密かに心待ちにしていた。
――けれど……、それから20年。
「レジの改修に時間がかかるため、税率0%にはできません」
……。
( ゜Д゜)えっ?
「消費税を0%にはできません」
「事件は会議室で起こっているんじゃない!現場で起こっているんだ!」
懐かしの緑色の刑事が、パトカーの無線に向かって話す映像が、頭の中で踊りだす。
プログラミングが普及し始めてから、すでに30年。
以前は機械が人類を越えるのは難しいとされていた。
特に、囲碁や将棋は盤面が広く候補手も多くとても複雑で、機械が勝つにはまだまだ時間がかかるとされていた。
しかし今では、その囲碁や将棋だって、AIが人間を遥かに凌駕する。
AIは言語だって学習した。
難関大学の数学の問題ですら、最近のAIは満点回答するらしい。
こんなに機械が進歩したこのご時世において、機械のせいで消費税下げられません、とは?
要因の一つとして、0%と無税は違うという事があるらしい。
年々理解不能になっていく税制に対しても嫌悪感を抱くけれど、それ以上になさけない。
どんなに複雑な税制だって、ゲーム制作の方がはるかに難しいだろう……。
税率を設定できない。
プログラミングの世界では、間違いなくこれはバグと呼ばれる。
そして、バグがあるとわかったら、すぐに修正するのがこの業界の常識だったはずだ。
なぜ今まで放っておいた?
なぜまだ修正しない?
大丈夫か?この国は?
こんなんだから年々増税が必要になるのではないのか?
こんな国に税金を払っていていいのか?
この国は、海を越えた大国よりも、国民負担率は高い。
多くの税を集めておきながら、数字の変更もろくにできないという。
本当にこんな国に税金を納める意味はあるのか?
納税は国民の義務と定められている。払わなくてはならない。
でも……、せめて、税金を払う先を決めさせてもらいたい。
そう……。ふるさと納税のように。
こんなシステムにお金を払うぐらいなら、小学校の給食に税金を払いたい。
数字の変更に労力がかかるとかいうやつには、税金を一円だって払いたくない。
それに、議論されるべきは、まずは経済論のはずだ。
減税の議論の方が大事なはずだ。
なぜこの国の経済成長は止まったのか?
減税はどの規模で必要なのか?
そんな議論が必要なはずだ。
レジの改修にかかる期間などではない。
そんな思いと裏腹に、国会では今、首相のスキャンダルの話題で盛り上がっているらしい。
決定的な証拠は乏しく、悪魔の証明に時間ばかりかかりそうな気配だ。
以前の長期政権の言い争いを思い出す。
山、盛、梅?だったか?
やたらと野党が、首相の細かい責任追及を日々繰り返した。
そりゃ多くの仕事を抱えていれば一つか二つぐらい過ちは起こるだろうよ。
そんなことより、政策の議論を進めてくれよ……。
国会でのくだらない言い争いは時間の無駄だ。
この国はどうかしている。
夢や希望の持てた時代はとっくに終わっていたようだ。
これが大人になるということなのか?
ああ、憂鬱だ。
そんな気分を晴らしたくてゲームを作った。
サーバーの名前は、ディストピア。
絶望するほどゲームの難易度を上げた。
ゲームの攻略なんて許すものか。
減税に一年もかかるこの国にはぴったりだ。




