episode4
開戦時、資源備蓄量は当然確認済みだ。
戦況もふまえ、当面の間、問題ない。
備蓄量は例年変化ないが、消費量は減っている。
その分より長い期間持ちこたえることができるだろう。
ただ、私としては消費量が減っていることの方が気になった。
もちろん、省エネなどにより効率化が進んでいるかもしれない。
しかし、それ以上に経済活動が落ち込んでいるように思える。
最近生まれた新しいサービスを思い返す。
中古品売買ツール、退職代行、人材派遣サービスばかり思いつく。
皆が使う景気のよいサービスは皆、海外製だ。
他にも多くの事を考えたけれど、この国が景気良くなっているとは思えなかった。
私は、ため息をつき、いつも通り新聞を読み始めた。
◇
ミロは18才。初めての冒険から10年。
今日も仕事を探しにギルドにやってきた。
大きな街のギルドとはいえ、10年も使っていると知り合いも増える。
軽く挨拶を交わし、掲示板を見始めた。
「兵士の護衛」不思議な依頼に目が留まる。
普通は兵士が護衛する側のはずだ。
守る立場の兵士を護衛する依頼なんて珍しい。
俺は依頼を受けることにした。
依頼当日。
この街から一つ山を越えたところで作業するらしい。
大き目の馬車が二つと兵士10人と依頼を受けた冒険者10人で目的地へ向かう。
初めての冒険の時に通った道だ。
以前は馬車なんて通れる道ではなかったが、今では整備され通れるようになった。
ただ、人通りは少なく、歩いても人を目にすることは無かった。
見つかるのはモンスターばかり、冒険者たちと協力し撃退していく。
兵士たちは馬車の中から冒険者に指令を出していた。
「よし、ようやく着いたようだ」兵士の一人の声が聞こえる。
懐かしい、10年前、初めての冒険で訪れた村が目的地だったようだ。
兵士たちは早速村の人々に何かを説明し始めた。
兵士たちが村で作業する間、俺たち冒険者はモンスターを警戒し周囲を見張っていた。
こんな何もない村で何をするんだろう。俺は兵士たちの様子を遠くから見てた。
村人は、兵士たちに誘導され馬車へ入っていく。
村人の一人、おばあさんが振り返って、声にならない声を上げ泣いていた。
全員が馬車に入ったことを確認すると、兵士たちは予定の作業を開始した。
兵士たちの目的は、村の破壊だったようだ。
兵士たちは村にある家を一軒一軒を壊し始めた。
馬車の中から時々、泣き声が聞こえるが、兵士たちは気にせず作業を続けた。
全ての家が壊されたとき、兵士の一人が火をつけた。
行きは兵士が載っていた馬車には村人を乗せ、村を後にする。
振り返るとまだ赤い炎が立ち上っている。
俺は思わず、兵士の一人に声をかけた。
「今回の仕事はこれだったんですか?」
「ああ、見張っているだけの、簡単な仕事だっただろ。
そこそこ報酬が稼げていい仕事だろ」
違う…、そんなことを聞きたかったわけじゃない。
俺はもう一つ気になっていることを聞いてみた。
「これは、王様の指示ですか?」
「ああ、もちろんそうだ。コストが高くて効率の悪い村を捨てることにしたそうだ」
俺は耳を疑った。
簡単な警備の後、一人一人に声をかけた王様を思い浮かべる。
こんなことをいう王様ではなかった。俺はもう一度訪ねた。
「本当に王様がこんなことを言ったんですか?」
「ん??ああ、もちろんそうだ。今は効率化に夢中だからな。
城の中の仕事だって、徐々に安い労働力に変えている。
それに海外から安い製品を輸入することにしたようだ。
国内品は高すぎるからな。
それに、それが今の世界の流れとのことだ。
我が国も追いつかなくてはならない」
兵士は自信満々に笑顔で答えてくれた。
俺は、あまりの驚きに足を止めそうになったが、なんとか頑張って歩いた。
10年前、あれほど大変だった道、今では簡単に往復できる距離。
ただ、それ以上に気が重くて、大変な道のりだった。
街に戻ってくると、兵士の一人から依頼書に記載通りの報酬を受け取った。
もし、以前の王様なら、労働力が増え、生産力が増えた分、お金を配ったはずだ。
その増えたお金が消費を刺激し、増えた生産力を支えていた。
この国は大丈夫だろうか……。
俺は遠くに立ち上る黒い煙を眺める事しかできなかった。




