episode3
残念ながら国内で若干、混乱が生じている。
備蓄を放出し問題ないと何度も政府として発信するも、買いだめにより資源の偏りが生まれた。
以前のオイルショックほどではないが、緊張が生まれてしまったのは事実だった。
人の心理は難しい。ある程度の混乱はやむを得ない。
国として資源の偏りを解消するべく、不足の情報を人々から集め調達している。
おかげで、だいぶ混乱は収まってきたと思われる。
ただ…、ふと思う。
不足している資材を調達するのは、商売の基本。
本来であれば、情報収集や調達は国がやるべきことではない。
これは、近年の増税による効率化の悪影響が出ているのではないか。
効率化は平常時には利益を生みやすい反面、異常時に対応するゆとりを奪っているのではないか。
世界では戦時中の緊張感が漂っているが、私たちの国では日常が続いている。
まだ始まったばかりの政権。なんとしても混乱を抑えて乗り越えなくてはならない。
さて、今日の公務も終わり。
家に帰ると、いつもと同じようにログインし、物語の進行を確認した。
◇
ミロは14才。この世界では、立派な一人前だ。
初めての冒険の日から父さんにしつこく冒険譚を聞き出し、知識は十分なはず。
だから、あとは経験を積むだけだ。
そう考えて初めて一人で、ギルドから依頼を受ける。
といっても、受けた依頼は城の防衛。
集まった他の冒険者と共に城の外を見張る、そんな簡単な仕事だった。
「たった3日間、城の安全を守る仕事です。
僕も合わせて5人もいる。見張りと休憩を交互に繰り返せばいいですね。
まずは僕が見張りますから、他の人たちは休憩していてください。
敵が来たらたたき起こしますよ。お互い様だと思って協力してください」
僕の言葉に、黙っていた他のメンバーも頷いた。
城の外を眺めるだけの簡単なお仕事。
ただ、僕は何度かたたき起こされて、戦闘に加わった。
多少睡眠時間が少なくても、これぐらいであれば問題ない。
普段、父さんと二人での冒険よりはだいぶ楽だった。
仕事が終わる最後の日、国王に呼び出された。
直々に報酬を渡してくれるらしい。
父さんからのお話に何度もでてくる立派な王様だ。
少しだけ緊張した。
「ご苦労。では、報酬を渡そう」
ずっしりと重い袋を手渡される。重すぎると感じた。
不思議に思った僕は、袋の中身を確認した。
ギルドで書かれていた報酬の2倍はあるようだ。
「王様。報酬が多すぎます」俺は思わず口にした。
「ああ。そう思うのであれば、城下でお土産でも買ってくれればよい。
近頃、作物の生産性が格段に高まってな。
代わりにお菓子やら工芸品やらを作るようになったのだ」
「し、しかし、この報酬は……」
「生産性が高まった分、買ってくれる人がいないと困るのだ。
買う人がいないと、作り甲斐がないからな。
それに、いづれ皆が気に入る商品が生まれよう。
そうなれば、大量に生産され、海外にまで売られるだろう。
そうやってこの国はまた、豊かになっていくのだ」
国王は上品な笑顔を浮かべた。父さんに聞いていた通りの人物だと思った。
「なるほど。僕たちが買うことによって、この国の豊かさのお役に立てるのですね」
国王はにっこり笑って頷いた。僕はずっしりと重い袋を笑顔で鞄にしまった。
「そういえば、その方の持つ雰囲気……、どことなく見覚えがあるな。
もしかしてミロではないか?」
「はい。僕の名前はミロです」
「やはり、あ奴の息子でやったか。これはめでたい」
王様は笑顔で僕の事をじっくりと見ると、ふと何かに気付いたように、僕に尋ねた。
「とすると……。今回は敵の襲撃は少なかったと兵士たちから聞いておる。
もしかして、ミロが何かやったのではないかね?」
「…?ああ。遠くにオオカミや熊の群れが見えましたから、嫌がるお香を焚いて追い払いました」
「なんと。ふふ。ふははっはっは。
父親そっくりの立派な冒険者になったものだ」王様は楽しそうに笑っていた。
「いつも何らかの依頼を出しておる。また何か仕事を受けるがよい」
王様に気に入ってもらえたようだ。
僕は上機嫌でたくさんお土産を買って、家に帰った。
父さんは僕の話を聞いて嬉しそうにしていた。




