第七十二話 最終日
今日は最終日。
私は、頭の中で昨日までの状況を思い返す。
他に攻略の条件になりそうなものは思いつかない。
無い……、と思う……。
塔は無事4つ攻略したんだ。きっと、今日こそ、クリアできるはず。
皆、集まってゲームを開始した。
とあるテーマパークの広場に観客のNPCが集まり始める。
「あっ、なんか雰囲気変わった」「何かはじまるのかな?」「あっち行ってみよう」
「5」「4」「3」「2」「1」
他のサーバーと同じように、NPCがエンディングを盛り上げてくれる。
現実世界を映す写実的な世界の中に、幻想的なアニメーションが動き出す。
少し変わったムービーが始まった。
辺りは急に暗くなり、観客たちも静まり返る。
周囲の空気を響かせ轟音を轟かしながら“何か”が静かに降臨した。
「あっ。この間の魔王だ!」観客のNPCが声を響かせる。
「さて、十二分に回復したようだ。それでは続きを始めよう」
全ての塔を攻略し、古から伝わる秘宝、秘術をうけついだ私たちは魔王の前にすっと立ち上がる。
「おっと。そういえば、お前らもいたな。まずはお前らから血祭りにあげてやろう!」
迫力のある魔王の声が、そこら中に響き渡る中、NPC達が集まってくる。
「おぉ。魔王もかっこいい!」「頑張って!」観客たちの応援が聞こえる。
その声が私たちの心にも、ちゃんと届く。
今日こそは、今度こそは勝つ……。私たちの集中力が研ぎ澄まされていく。
魔王は左手を振り上げる。短い詠唱を唱えると左手にどす黒い魔力が集まる。
「はぁぁぁあああ!」魔王は勢いよく魔力の塊を投げつけた。
だめだ……。大きすぎてかわせない……。
避けるのは難しいと判断し私は、防御姿勢を取った。
大きなダメージを予想したその瞬間、画面が切り替わり右側から鎧のカットイン。
古の技術でつくられた英知の鎧は赤い光を放つと魔力の塊を無効化した。
「なに、こしゃくな。ならこの攻撃はどうだ」
今度は、魔王は右手を振り上げる。風が渦となって魔王の右手に集まり空気が圧縮されていく。
「破壊しつくせ」魔王は出来上がった空気弾を投げつける。
避けられないと思い、盾をかざすと、左側から盾のカットイン。
英知の盾は緑の光を放つと空気の塊を上空へ弾き飛ばした。
「次は私たちの番だ!」マリオの機械音声が響き渡る。
再び画面が切り替わり下から呪文取得のカットイン。
「ドラゴラム!」
私たちは魔王よりもはるかに巨大なドラゴンとなって魔王に襲い掛かる。
しっぽやかみつきによる攻撃に加え、青い高温の炎が魔王に大きなダメージを与える。
あまりの破壊力に魔王はしばらく動けないみたいだ。
「よし、とどめだ!」KOJIの機械音声に皆が反応する。
上から剣のカットインが現れ、4つのピースに画面がついに完成した。
動きのにぶい魔王に私たちは四人で剣を振りかざす。
魔王に四人の剣を突き立てると、私たちはジャンプして飛びのいた。
剣が魔王の魔力を封印し、体をむしばんでいく。
魔王の体は静かに消えていく。
魔王は時々「なぜだ…」と声を上げるも、体は朽ちていく。
そして魔王は、音もなく消滅した。
あんなに強かった魔王が、古の力の前にあっさりと敗れ去った。
私は古の技術、秘術の強さに感嘆し「ありがとう」とだけつぶやいた。
「やったーー」ごーやの声が聞こえる。
「やったな!」皆の歓喜の声が続く。
「お疲れ様!」ちょうどAYATOさんとケータさんも現れたみたいだ。
私たちの攻略を一緒に喜んでくれた。
「楽しかった?」
「昨日のボスとの戦い。KOJIが手を上げてオフサイドにかけた瞬間がすごかった」
「それを言うなら、お前のカエルの歌の方がすごかっただろ」
AYATOさんの声に、ごーやがKOJIを、KOJIがごーやをほめたたえた。
確かに、急いでいる局面、完全に槍兵を封じ込めたのはとても大きな活躍だった。
「でも、やっぱり……、今回の一番の功績はマリオかな。移動呪文は考えてなかった」
ごーやが私をほめてくれた。それからも誰がすごかったのお話が続いた。
AYATOさんもケータさんも楽しそうに聞いていた。
「サーバー全体的にどうだった?」
「全体的にいろんな世界観が楽しめて楽しかったですね」
AYATOさんの問いかけに、私は純粋に思ったことを口にした。
「ただ……」
「ただ……?」
「私、まほうつかいなのに、剣や盾、鎧の獲得はちょっと違うかなって」
あっ。そういえばそうね……。AYATOさんからそう聞こえた気がした。
私の「ん?」という声が聞こえると「いや、何でもない。こっちの話」とAYATOさんは言った。
それから、しばらくの間、皆の活躍の話で盛り上がった。
だから、ゲームのエンドロールに知った二つの名前が製作者として出ていた事には誰も気づかなかった。
ちょうど終わったタイミングで現れた事や会話、私たちの反応を喜ぶ様子を考えれば、気が付けてもよかったのにね。
楽しい談笑も終わり、私たちは解散する。
私は、解散後も今回の冒険について振り返ってた。
前半から活躍し、最後の戦闘で槍兵を無効化したKOJI。
前半は活躍しなかったものの、最後の戦いで槍兵二体を無効化したごーや。
二人が大きな活躍した中、TAKASHIは職業選択のせいかあまり活躍しなかった。
でも……。もしかしたら……。
私はTAKASHIが選んだ職業をインターネットで調べてみた。
TAKASHIが選んだ職業は“シーフ”。
シーフは、ダッシュ、けいかい、とんずらといったアビリティを覚えるらしい。
私は、今回の冒険を思い返す。
塔の攻略では、ひたすら上るばかりで、敵は少なかった。
特に罠もなくひたすら塔を登るばかりだった。
敵と遭遇しても、敵から先制攻撃を受けるようなことは無かった。
途中から慣れたおかげか移動速度が上がったように感じた。
やっぱり……。……。もしかしたら、シーフのおかげかもしれない……。
確率で起こる敵の先制攻撃がなかったのは“けいかい”。
途中から移動速度が速く感じたのは“ダッシュ”。
罠が無かったのは、もしかしたらシーフの隠された能力のおかげかもしれない……。
それに……。
一週目TAKASHIは探検家だった。他の職業はモンク、そうりょ、黒魔導士。
一週目の北の塔。二週目と比べて敵が少なかった。
一週目、敵が少ないと感じたのは“探検家”のおかげだったのではないだろうか。
今回、TAKASHIは口数少なめだった。
大活躍のごーや、KOJIに影であまり活躍できなかったと思っていたのかもしれない。
でも、もしかしたら、見えないところで私たちを支えてくれていたのではないか……。
いつでも“とんずら”で逃げられると知っていながら、ごーやや私が魔法で活躍するのを見守ってくれていたのではないか……。
「それに……。そうだあの時も。」
二週目、都庁の屋上でのTAKASHIのセリフを思い出す。
「最低限、一つはクリアしよう」
この盟主の言葉に私たちは、気持ちを切り替えて塔を攻略することができた。
あの一言が無ければ、私たちはその時、攻略をあきらめていただろう。
そしたら、私の活躍はもちろんなかった。
ごーややKOJIの活躍ももちろん無かった。
私は、暖かい気持ちに包まれて眠りについた。
「また、ひとつ、助けられちゃった……」
また、ひとつ……。
◇
ふぅ、と一息ついた。
ようやく書き終えた。
一週目、〇んでしまった時はどうしようかと思った。
無事、攻略する形で話を終えられて、本当に良かった。
二週目の最後、槍兵の攻撃で転ばされて、倒せなかった時は少し焦った。
ただ……、ふと思いついたんだ。
負傷者の手当ての時間など、競技時間に勘定しない時間。
そう、ロスタイムだ。
ドォォォォーーン。
↑ 特に意味はありません。 ↑
本来であれば、これは小説だからね、こんな効果音はわざわざ書かない。
ただ書いておくと、次からそれっぽいところに読者が、自然と付与してくれるんじゃないか。
そう思ったんだ。
アニメや映画、漫画ばかり、効果音を自由に追加できるのはずるいよね。
古を唄うこのサーバーの締めになら、使ってもいいだろう――。
今では、アディショナルタイムと言われるのが一般的なのだから。
ちょうど今回、彼らは、南の塔で天井に頭をぶつけて、予期せぬ怪我をしてたんだから。
そう考えて、職業としてサッカー選手を選択したKOJIのスキル欄に急いで追加した。
間に合ってよかった……。
同じ話、もう一回書くのは疲れるもんね……。
それにしても、今回は少し出しゃばりすぎた。
まさか古のコマンドの罠に引っかかってしまうなんて――。
今後は登場するのは控えないといけないな……。
といっても、何が起こるかわからない小説の世界。
なかなかプロット通りに進まない物語の世界。
もともとマリオというキャラクター自体、もともとは想定していなかった……。
だから、保証はできないね。
「LASTGAME」
油断していると作者が〇んでしまう――
ちょっとおかしな――いや、不思議なWEB小説だ。
↑ ドォォォォーーン。 って聞こえた?? ↑
そんなことよりも……。大事な事、書き忘れた。
サッカー代表選、期待しています。
あるよ。 あるぞ!




