第六十七話 二日目
二日目。ログインするとすぐに画面が暗くなった。
オープニングが始まったようだ。
前回と同じように何もない空間から、空気を震わせて魔王が現れる。
実写の世界の中でも、二本の角に黒いマント、周囲を圧倒する強い魔力、相変わらずの存在感だ。
私たちは前回と違って、初めからその場に立ち会っているようだ。
ムービーの中に少しだけ、私たちが映ってた。
「ほう。悪くはなさそうな場所ではないか」
魔王は辺りを見回すと、そう声を上げた。
「まずは、じゃまなあれをつぶそう」
マントから手を出し、指を鳴らす。
人工的に作られた山の頂上に大きな炎が上がる。
――でも、だいぶ前回と様子が違った。
魔王はいつも通りなのだけれど、それを見守るNPC達の様子が変化していた。
前回、NPCの小人達は不安そうに見守っていた。なんなら逃げ惑う人もいた。
でも今回は……。NPCの人たちは、逆に集まってきている。
一部「うぉー」と歓声があがり、拍手が広がっているようだ。
特に、茶色をした山の頂上に炎が上がった時の盛り上がりはすごかった。
「いつもより激しい炎だ!」という声に、皆が高揚しているようだ。
同じNPCであるこのアトラクションのスタッフたちは、
「あれっ?少し時間違うけど……、まあいっか」と観客を盛り上げていた。
私たちは、前回と同じように「何事だ!」と魔王と対峙する。
それを見て、やっぱり、NPC達は、拍手している。
私たちを応援してくれている。
「ほう。我の邪魔をしようとするか。
ならば、まずはそなたからつぶしてくれようぞ」
強制的に戦闘が始まった。
昨日、たくさんレベル上げをしたけれど、今日はまだレベル上げをしていない。
冒険ごとにレベルが下がる仕様のため、結局、前回の時と同じようなレベルだ。
魔王の強さにかなうはずがない。私たちはあっさり敗れた。
でも、これは仕方ない。これは想定通りだ。
「ふふふ。我にかなうわけなかろう。
ふむ。気に入ったぞ、この時代。
我はこの時代の覇者となろう」魔王は手を振り上げ、高らかに宣言した。
このテーマパークは音響までしっかり考えて設計されている。
魔王の声が辺りに響き渡り、観客の拍手を誘う。
「ただ、少し魔力を使いすぎたようだ。
これが時空酔いというやつか。
ふむ。落ち着くまでしばらく見て回ることとしよう」
魔王はそう言い放つと、体を浮かせて遠くに立ち去った。
NPC達は、この様子を見て拍手喝采だ。
「でも、へんなショーだったね……。〇〇〇ーも出てこなかったし」
「それに、なんか、サッカー選手っぽいのもいなかった?」
「あー、いたいた。でも今回は魔王に負けちゃったんでしょ。
うーん。なんか続きが気になるね!」NPCは呑気に盛り上がってるようだ。
スタッフNPCは「こんなショーだったっけ?ま、いいのかな?盛り上がったみたいだし」
と笑顔で観客NPCに接客してた。
それから、私たちはいつも通りレベル上げをして、解散した。
翌日まで引き継がれるレベル上げには上限があるみたいだけれど、全く無意味なわけではない。
次の日は確実に、前日の開始時よりは高いレベルで始められるはずだ。
ログオフして一人になって、今日のNPC達の様子を思い出す。
今日のNPCは不思議だった。
でも実際、現実世界でも、魔王が出現した場所によっては、その魔王がどんなに恐ろしい様相だとしても、今回のように拍手が起こるんだろうな。
リアルなショーだなって思うんだろうな。
もしかして、既に現実世界にも恐ろしい魔王が紛れ込んでたりして……?
「そんなわけないか」つぶやいて少し笑みを浮かべる。
最近私、実写のゲームに触れて思考が少しされている気がする……。
少し落ち着いてストーリーを思い返す。
ゲームの中のこの国では、魔王の出現を異常事態とはとらえていないようだった。
前回は魔王を打倒すために塔が解放された。
今回はどうなるのかしら?このままで、物語進行するのかな……?
私は少しだけ、心配になってきた。




