第六十六話 初日
次の日のコアタイム。皆が集まってきた。
私たちは、職業を選択しログインする。
画面が切り替わった時、私はとても驚いた。
今までと画面が大幅に変わっていた。
先週は幻想的だったが、今回は実写のような画面だった。
振り返ると、遠くに赤レンガ造りの建物がある。
見覚えがある。あの建物は東京駅だ。
とすると目の前は、皇居――のはずだけれど、そこは代わってギルドだった。
先週のギルドと同じだ。ギルドはいつも通りゲーム特有の明るい色で構成されている。
だから、少し実写の世界の中で浮いている雰囲気が漂っていた。
それに、NPCも小人ではなかった。この世界に合わせて実写だった。
私はごーややTAKASHIの姿を見て、少し笑ってしまった。
まるで、ゲームの世界のキャラクターがそのまま現実世界に現れたみたいだ。
「あれっ…。ということは、私も……?」
自分自身も当然、ゲームの世界の住人の姿だ。
私は急に笑いが冷め、恥ずかしくなってきた。
まるで現実世界に実在するかのようなNPCが、私たちに話しかけてくる。
「わぁ~、きれいなコスプレですね」そう言って、携帯をこちらに向けている。
この国ではコスプレする文化が浸透しているみたいだ。
そう、私たちはコスプレなの。だから普通なの……。
そんなこと考えて少しだけほっとした。
もしかして、現実世界のコスプレの人たちの中にもそんなこと考えている異世界人がいるのかな?
そんなこと考えて、私は少し可笑しくなった。
「あれっ?そういえば、KOJIは?」ごーやの声が聞こえた。
確かに、さっきからKOJIは見かけない……と思っていたら、いた。
普通に、この現実世界に溶け込んでいた。
最初、ゲームの世界のキャラクターを探していたから、見つからなかった。
コスプレをしている事には違いないのだけれど、実写だったから気づけなかった。
そう。KOJIは実写だった。KOJIは“サッカー選手”を選んでいたようだ。
「もしかして……、キャラクターに合わせて、世界が作られているのか?」
「あー。前回の小人は、TAKASHIが探検家だったから、NPCは小人だったのか。
それに、街並みは俺たちのキャラクターに合わせてって事か!」
TAKASHIの疑問に、ごーやが豪快に納得していた。
このサーバーはどうやら選択した職業によって、ゲームの世界観が変わるらしい。
とすると……、さっきから感じているこの恥ずかしさは“KOJI”のせいか。
“KOJI”が現代の職業を選んだから、実写のような世界になり、私は恥ずかしいという感覚に陥っている。
……、これはゲーム。楽しまなくちゃ…。私は深く考えることはやめた。
コスプレなんて、私には恥ずかしくてできない。
そんな私にはできないことを、ゲームの中で体験しているって考えよう。
皆が揃うと、今日の方針を決めた。
前回は、毎日のようにレベル上げをしていた。
そのレベル上げの時間を短縮出来たら攻略できるはず、と考えたみたいだ。
初日のうちにできるだけレベル上げしようということに決まった。
皆が決めた方針、私は静かに頷いた。
皆はすぐに北の平原でレベル上げを始めていたが、私は少しだけ他の場所に立ち寄ってから参加した。
「マリオ、どこ行ってたの?」
「あ、少しだけ寄りたいところがあって」
幸い前回と同じ北の平原に高経験値を持つカオナシお化けがいた。
前回は確か、たくさん探索し、全ての塔を巡り後、いつも通り20分間、レベル上げをしたはずだ。
最初からレベル上げをした今回はとてもレベルが上がった。
これならうまくいくかもしれない……。
そう思っていたけれど、結論を先に言うとそんな簡単ではなかった。
翌日ログインすると、高レベルになった分レベルが落ちていた。
前回と同じレベルまで落ちていた。
サーバー製作者は、この方法での攻略を認めないということだ。
レベル上げが終わってログオフすると今日の出来事を思い返していた。
前回と比べて世界観が大幅に変わった。
背景の変化にも驚いたけれど、特に、NPCの変わりようがすごかったと思った。
前回のNPCはこちらから話しかけないと、お話が始まらなかった。
でも今回は、NPCから会話が始まった。
それに会話がリアルだった。現実でもありそうな会話だった。
明日は、魔王が登場する。
「魔王に対して、NPC達、どんな行動をとるのかしら……?」
私は、塔の攻略だけでなく、そんなことまで想像しながら眠りについた。




