第六十八話 四日目
「木曜日から土曜日までは健康促進デー。
普段は有料だったり、禁止されている階段での上り下りを開放します」
四つの塔は無事に解放された。
昨日までギルドに動きが全くなくて、物語の進行を心配していた私は胸をなでおろした。
「まさか……、健康促進として開放されるなんてね」
安心したのもつかの間、笑みがこぼれるのを感じる。
それにしても、やっぱりこの国には、魔王が出現したという危機感が無い。
「大丈夫かしら?この国」
でも、それだけ普段から準備していたということかもしれない。
どんなに恐ろしい事が起こっていても、日常を保とうとする国民性に力強さを感じる。
ちなみに、昨日――三日目についてはレベル上げに徹していて特に記載することは無かった。
そして、残念ながらそのレベル上げの効果はほとんどない。
想像していた通り、日ごとにレベルの上限があるようだ。
ちょうど先週実施していたぐらい、一日20分ぐらいが、このサーバーでは適当だったみたい。
今日から、塔の攻略が始まる。三日で四つの塔を攻略する必要がある。
「足は引っ張らないようにしなくちゃ……」私は少し緊張してた。
「今日はレベル上げを10分だけしてから、塔に向かおう」KOJIの声が聞こえた。
レベルの上限ぎりぎりまで、レベルは上がっている。ならレベル上げは少なくても攻略できるはずだ、と考えているようだ。
「うん。そうしよう。いろいろ試した方がいい」「そだね」ごーやとTAKASHIは頷いた。
私は、皆で決めた方針にいつも通り笑顔で従った。
決められた方針の通り10分だけ北の平原でレベルを上げて、東の塔に向かう。
二日目に魔王が出現した場所は、ギルドからだいぶ東の海沿いだったけれど、今日の塔はそこまで遠くない。
だいたいギルドから6kmぐらいの位置にある。
時々、敵シンボルをよけきれず戦闘することになる敵に、口が緩む。
敵は、交通規制を強化している警察官だった。
私たちは、自動車にも自転車にも乗っていないけれど、加速ドリンクで自動車並みの早さで走っているため、時々捕まってしまうようだ。
そんな一生懸命の警察官をなんとか説き伏せて、私たちはものすごい速さで東の塔にたどり着いた。
魔王の出現したテーマパークは、恐ろしくて口にできないけれど、東の塔は口にしていいはずだ。
東京駅すぐ近くのギルドから見てほぼ東に位置していて、この国で一番たかい建造物。
もちろんスカイツリーだ。
スカイツリーを見上げるムービーが流れる。
実写のスカイツリー――つまりごく普通の写真のスカイツリーなのだけれど、東の塔としてわかるようにするためか、赤いオーラを放っている。
「よし、急ぐぞ」KOJIの言葉に、私たちは駆け足で建物に入り階段を上った。
ひたすら階段を上っていく。これはゲームだから、実際にはぐるぐると回っているように見える。
今日は、走ったり上ったり、まるで筋トレしているみたい……。
画面を操作しているだけなんだけれど、気分がどんよりと疲れてくる。
時々、敵にエンカウントすると、サッカー選手のKOJIがボールで攻撃して撃破する。
流石、サッカー選手。走って、上って、攻撃して、めちゃくちゃ体力ある。
ぐるぐると階段を上って、ようやく最上階だ。
黒光りする丸い塊を見つけた。
急いで触れ、塔の守護神の元へと移動する。
守護神は、前回と同じ、赤く光るドラゴンだ。
前回はあっさりと倒したはずだったが今回は苦戦した。
レベル上げが十分ではなかった。
アイテムもだいぶ消費して、ぎりぎりドラゴンを倒せた。
「塔の守護神を倒した者よ。我が英知の一つ、鎧を授けましょう」
英知の鎧が手に入る。
塔の最上階に着いたのは25分。ドラゴンの討伐完了は45分。
結局前回より塔の攻略は遅い。
これだったら、レベルを上げていたほうがよかった。
私たちは、二つ目の塔の攻略は断念してレベル上げに向かった。
「でも、本命は明日だから」
「だよな」KOJIの言葉にごーやが頷いた。
二人は攻略について認識合わせをしていたみたいだ。
私は、明日の攻略を楽しみにしながらログオフした。




