↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LAST GAME  作者: よむよみ
第七章 光の世界 テストプレイ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
103/105

episode05

 五日目。


 現実世界での時間とゲームの中の時間の流れは異なる。

 精神と〇の部屋のように、現実世界の一日はゲームの中では数年経過していたりする。

 映画だって人の一生を二時間にまとめていたりするのだからいいわよね。

 だからきっと、あの子は卒業している頃じゃないかしら。


 前回研究者が見つけた魔力の強いオッドアイの女の子。

 私は何となく研究者として迎い入れることを回避する「いいえ」を選択した。

 彼女は、好奇心旺盛で冒険者になりたいと言っていた。

 あれだけ強い魔力を持った女の子、きっと冒険者として活躍しているに違いない。

 どんな成果が上がってくるだろうか、そう思ってログインする。

 ……のだけれど……。

 それは、報告書を手に取った瞬間だった。


 地面が揺れている。

 私はとっさに周りを見た。でも揺れていない。

 揺れているのは、画面の中のゲームの世界のようだ。

 ゲームに入り込みすぎだ。現実世界と錯覚している。


 激しい揺れだった。

 私の城は、とても頑丈に作ってあったから無事な様子。

 しばらくして、揺れはおさまってきた。

 代わりに城の中はどんどん騒がしくなってくる。

 大量の報告がひっきりなしにあげられてくる。

 私はすぐに、対策本部を設置した。


 震源はこの街の西、この国で最も高い山の辺りとされた。

 ここからはとても距離がある。

 にもかかわらずこんなに揺れた。地震の規模がうかがえる。

 残念ながら被害は甚大だ。

 ここから西に位置していた都市がまるごと壊滅状態との報告だ。

 私は即座に兵士の派遣を決める。

 目的はもちろん人命救助。まずは一人でも多くの命を救う事が優先だ。

 私は城に残り、食料や薬、飲料水、毛布などの手配を進めていた。


 あーだこーだ不足しているものが無いか考えている時だった。

 必要な物資が整ったようだ。

 城の警備として最小限の兵士だけ残して、私も現地に向かう。

 兵士の一番の目的は私の護衛なんだもの。

 私が現地に向かえば当然、私の親衛隊もついてくる。


 現地は悲惨な状況だった。

 家は倒れ、建物は崩壊していた。道も塞がれていた形跡がある。

 第一陣として派遣した兵士たちは、人命救助の傍ら、急ぎ道の最低限の復旧をしてくれていた。

 兵士たちはよく働いてくれている。私は唇をかみしめた。


 頑丈に作られていた臨時の避難場所に訪れると、多くの被災者が食事をとっていた。

 ちょうどお昼時だった。

 幸い近くの貯蔵施設は無事で、食料の心配は当分無いみたい。

 被災者たちは大きな騒ぎを起こすことは無く、落ち着いて避難していた。


 野営テントを張り、私たちも簡単に食事を済ませた。

 兵士たちに復旧のお手伝いはまかせて、私は少数の護衛を連れて辺りを見回りに出る。


 公園の水飲み場に、行列ができていた。

 水回りにも大きな被害が出たらしい。ここは、数少ない水の確保場所の一つのようだ。

 食事を終えた女性が、子供と一緒に洗い物に来てた。

 子供が一生懸命にごしごしと金属製の鍋を洗っている。

「あら、そんなにごしごししなくても大丈夫よ」女性は後続の行列を気にして、急がせるように言った。

「でも、ほら。まだ、汚れが落ちなくて。こびりついてなかなか落ちてくれないの」

「ふふ。大丈夫よ。今はお水も大事だから、大事に使わないと」

 そう言って母親は子供からお鍋を受け取って軽く洗い流して「お待たせしました。どうぞ」と蛇口を後続に譲る。

「いつもはピカピカにしてるのに……」と子供は不服そうだ。

「ふふ。“落ちない汚れは汚くない”って言葉もあるぐらいだから大丈夫よ」

 子供は納得したのかすぐに笑顔になって、母親を引っ張って戻っていった。


 きっと、こうして少しずつたくましくなっていくんだ。

 災害は悪い事ばかりではないはずだ、私はそう思うことにした。


 一通り見回りが終わった後、兵士たちに復興を任せて私は城に戻った。

 水、食料、生活場所、最低限は揃っている事は確認できた。

 復興の青写真は伝えてある。

 後は迅速な復興を待つばかりだ。


 城に戻ると、大臣が待ち構えていた。

「予算が必要なのではないですか?復興のために増税をしましょう。

 国民だって、復興のためであれば納得してくれるはずです」

 思った通り、増税の話だった。

 私は軽く必要な予算を計上する。


「ほら、復興のために必要でしょう。

 国民も急ぎの復興を望んでおります。

 増税し、いち早く復興しましょう」


「あら、思ったよりも必要な予算は少ないみたい」


「えっ。これだけの規模の災害ですよ。そんなわけありません。

 ほら、復興予算は、想定しただけでも、こんなに必要じゃないですか」

 とても優秀な大臣は既に見積もりを作っていた。それを私に見せた。

「あら、さすが大臣。早いわね。

 でも、やっぱり、増税するほどではないわね」

「そんなわけありません。これほどの予算をどこから用意するのですか」


「ええ、今年予定していた他の予算をここに充てるわ」

 私は、自信満々に答えた。


 このゲームでは、私が女王になった時からずっと、二人のプレイヤーが兵士をやってくれていた。

 言い換えれば、人口のおよそ2割を兵士として雇ってきたという事だ。


 とはいっても、国が経済成長していることもあって、この国の治安は安定している。

 本当は、兵士はこんなに必要ない。

 多くの兵士たちは日々、任務に就くことも無く、単調な訓練をこなしてばかりだった。


 そんな彼らのために、私は時々彼らに密命を与えている。

 私は彼らのために、彼らの退屈しのぎのために、仕事を用意してあげる。

 硬貨製造のために鉱石の発掘を依頼したこともあったっけ。

 そう、これは私がしたいからではない。退屈な彼らのためなのよ。

「まーた、無茶な要求来たぜ」

「まーた、女王様の思い付きかよ」

 そんな言葉が聞こえてきた事もあった気がするけれど、もちろん私は覚えていない。


 彼らは私の言葉なら何でも喜んで引き受けてくれるはず。

 だから、私は彼らのため思って、仕事を用意する。

 そして、多くの場合それは道の整備だった。


 この国の研究・発展は素晴らしい。

 どんなものでも、20年もしたら古くなってしまう。

 道路もその一つだ。

 20年前に作られた道路は少しみすぼらしい。

 それだけならまだいい。

 雨が少しでも降ると、すぐに道がダメになってしまう。

 新しい道は、そんな問題点も改善されているのに。


 私は、道路を20年に一度ぐらい、最新の道路で作り替えるようにお願いした。

 その時の気分に合わせて、道やガードレールの色や木の種類も変えた。

 ゲームだしー、それになんてったって、私は女王様なんだもの!

 道路が新しくなると、国民の気持ちも少し変わるようだ。

 景観に合わせて、家を建て替えようとする人も多かった。


 もちろん、今年だってそのお願いをしていた。

 けれど、今回の地震でそれを延期することにした。

 各地から、道路の張替えを切りのいい所で切り上げた兵士たちが集まってきてる。

 予算も同じ。各地で使うはずだった予算を復興に充てた。


「なるほど……。であれば予算は問題なさそうですね」

 私の言葉を聞いて納得したのか、大臣はしぶしぶ頷いた。


「でね。さらに早く復興するように、お金を配ろうと思うの」私は勢いにのって言葉を続けた。

「えっ?なぜですか?」

「被災者にお金を配って、使ってもらう方が早く復興するでしょう。

 きっとそのお金目当てに人が集まってくるでしょう。特に建築業界かしら」


 私の言葉を聞いて、急に大臣は険しい顔つきをすると言い放った。

「それには、断固、反対です」


「国民は、お金を十分に蓄えています。

 本来ならもっと市場に回ってもいいはずのお金を、蓄えている人がいるはずです。

 だから、他国と比較してこの国は財政が悪いのです」


 彼は、私が女王になる前から大臣を続けている。

 そんな彼は、ずっと、まわっていないお金のありかを気にしていたようだ。


「配ったお金が、必ずどこかにあるはずなのです。

 お金をたくさん隠し持っている人たちに配っても効果はありません。

 少なくとも……、お金が無い人、お金に困っている人だけに絞るべきです」


 お金が無い人に配る。一見、簡単そうに聞こえる。

 けれど、お金を持っていない事を示すのは大変だ。

 見つからないお金を探すってことだ。悪魔の証明が始まる。

 これでは、いつまでたってもお金を配れない……。


「でも……、ずっと見つからなかったのでしょう」

「はい。長年調査を続けているのですが、なかなか見つからないのです」


 被災者の様子を思い出して、私は決断した。

「いいえ、やっぱりお金を配りましょう」

「で、ですが……」


 大臣は、まだ納得していないようだ。


「このような事態に対応が遅れるから、蓄える必要があると考えているのかもしれません。

 蓄える必要なんてないと思えば、使ってくれるかもしれません。

 いざという時に助けてくれるとわかれば、貯金の必要性も薄まるでしょう」

 私は、さらに言葉を続けた。

「それに、お金は実際に無くなっているのかもしれません。

 この国には地震だってあれば、火事だって起こる。

 お金を紛失する場合だってある。

 お金を拾ったりすることもあるでしょう。

 多分、見つからなくなったお金だって多いはずです。


 見つからないお金は既に燃えていたりと、なくなっているのかもしれません。

 もしかしたら、メスを研ぐために紙幣を燃やしちゃう人だっているかもしれない。

 そんな把握は出来ていないでしょう?」


「えっ?紙幣を燃やす?もったいない……。そんな人いるんですか?」


「あら。これはある漫画の中のお話だったわね……。

 どちらにしても、見つからないお金を探すのは時間がかかりすぎます。

 今までできなかった事を続けていても効果が薄いのは明白です。

 今の経済を考える事、今の労働者の事を考える事を優先しましょう。

 被災場所でお金を使う人が増えれば、早く復興するのは間違いないのですから」


 大臣は、少しうつむいて黙っていた。


「大丈夫。きっとうまくいく。

 それに、見つからないお金は悪さしないわ。

 見つかった時、市場に戻った時に、対応を考えましょう」


「お嬢様」大臣のつぶやきが聞こえた。

 懐かしい言葉に幼少の頃の記憶がよみがえる。

 まだ子供だった頃から、私は彼の事を知っている。

 私が幼いころ、彼は私の事をそう呼んでいた。

 でも、今は、今の私は……。

「女王様とお呼び」と彼をたしなめた。

 あっ、失礼しました、と執務室から去る彼を、私は見送った。


 “見つからないお金は悪さしない”いい言葉ね。

 あの親子に感謝しなくちゃ。



 私は、落ち着きを取り戻して、報告書を読み始めた。


 これは歴史家の本の報告ね。

 今回は地震で忙しかったから、本自体はまたいつか読もう。

 要約すると……。


 世界が暗くなる現象には2種類あるらしい。

 一つはもちろん日食。この星の衛星が太陽に重なっておこる現象。

 地上が暗くなると聞いて、私も真っ先に日食を思い浮かべた。

 でも、違うみたい。

 過去の人々が恐れた日食はもう一つ別にあった。

 それが始まると、数か月単位でこの世界が暗くなるらしい。

 そして、その時を狙って魔王が現れるとの事だ。


 魔王…。全く、物騒な話だ。

 研究者はすでに調査を進めてくれているとの報告だった。


 そして、最後にもう一つ。

 今回の地震の影響で新しく洞窟が見つかったみたい。

 活躍目覚ましい魔力に長けた若手冒険者が早速向かっているらしい。

 きっとオッドアイの彼女の事だ。私は嬉しくなった。


 時計を見ると、もういい時間だった。

 今日はこれくらいにしよう。

 私はゲームからログアウトした。



 以前、復興のために増税を決めたことがある。

 復興増税なんて言われた。

 私にはとても不思議だった。

 この国には10年に一度ぐらいの頻度で大地震が起きている。

 そのたびにこの国は増税するつもりだろうか。


 でも、今回、わかった気がする。増税はやっぱり間違いだ。


 ゲームの中で、日ごろから道の敷設含め土木要員として兵士を使っていた。

 たまたま始めていたけれど、それが功を奏して、特に増税することなく復興できそうだ。

 日々道の張替えを積極的に進めていたから、災害時にそのまま対応できた。


 現実世界でも同じはずだ。

 日頃から、人材や資材を確保しておけばいい。

 そして、大地震の際にそれらの人材や予算を被災地に集中させるんだ。


 この国は地震が多い。台風だってある。大雪だって降る。

 平時からそれらに備えるための人員を確保しておくんだ。

 そうすれば、復興だってきっとより早く進むはずだ。

 普段用意しておかないから、人材も資材も特別に集めるのに余計にお金がかかるんだ。

 ある程度、復興にかかる人材、予算を想定しておいて、平時から組み込んでおくことが必要なんだ。


 だから、この国には、災害に対応するための土木作業員が必要なんだ。

 その人材が不足しているから、復興時に余計なお金が必要になるんだ。

 急に集めようとするから、人件費だって、資材だって高くつくんだ。


 それに……。

 10年に一度、地震が来るとわかっているのならば、先手が打てるはずだ。

 私の頭の中では、いつもの空想が始まっていた。



 配信サイト。

 ここには、デジタル化によってテレビ業界が目指していたはずの双方向の世界がある。

 仮想世界にふさわしい姿をしたキャラクターが、配信を取り仕切っている。


「こんにちわー。こんばんはー。

 今日のテーマは、海岸沿いですよー。

 それでは今日も、皆で一緒に考えていきましょう!」


 画面を見ると、下側が海に面したのっぺりとした地形が映っている。

 まるでSim〇ityのようなゲーム感覚で、司会が線路や道を敷設していた。


「さて、何が必要かなー?」

 司会の声にコメントが一斉に増える。

「遊園地行きたい」「カラオケさえあればOK」「映画館必須」

 皆、思い思いのコメントをしている。

 中には、漁港、消防署、交番と、きっとベテランの社会人だろうと思われるコメントも増えてきた。


「駅前のこの一等地、まずは商業用地かなー。

 きっとこの土地はお高く売れるわよ」

 土地の価格を想像して、バーチャルなはずの顔がにやりと笑う。

 仮想姿の中の人はきっと、お金好きだ。


「予算はいくらですか?って。いい質問ですね。

 一旦予算は気にしなくていいですよ。

 普段の土木工事の予算を組み替えるだけなので。

 一旦、皆の理想とする街を作りたいなー」


 皆の意見を集約させながら、的確に街を作り上げていく。

 時々、ガードレールや信号機のお値段が表示されて、そのたびに「結構お高いのね」というコメントも見える。


「あら、無電柱。いいわね。

 それに、ごみの自動回収。

 考えた事無かったな。実現できるのかな。

 ちょっと、こちらでも検討してみますね」


 街づくりシミュレーションのように、のっぺりとした土地に次々と建物が増えてくる。


「道路の色、薄い緑にしたいかあ……。

 それは多分、タイヤの色も変えないといけないから難しそうね……。

 道路はどうしてもタイヤの色が付いちゃうから……」

 時々、無茶なコメントもあるみたいだ。


「ちなみに、プロの人たちに作ってもらったのはこんな感じ」

 そう言うと、街設計を本業とする人の絵を画面に映した。

 とてもきれいな街だ。「すげー」という声が上がる。


 ゴルフ場なんて声もある。

 体を動かせる運動場が欲しいという声だってある。

 たくさんの声が上がっている。


 もちろん全部を反映する事なんてできるわけがない。

 適度に聞き分ける司会の力が試されてる。


 平坦だった土地はやがて、立派な地図になっていた。

 住宅地や工場、商業用地の他に、市役所、神社などが描かれている。

「カラオケや映画館は、商業用地にお店が入ってくることを期待しましょう。

 なかなか住みやすい街になったんじゃないですか?」


 おそらく実際に地震が起きたら、地形も異なるだろうし、線路の位置だって違う。

 これと完全に同じ復興はまず無理だろう。

 でも、ここにきた人たちの復興に対する期待値は高まったはずだ。

 次回の復興は、この通りとは言えなくても、かなり理想に近い街に生まれ変わるだろう。

 復興への期待の高さが、復興の道しるべになるはずだ。


 そろそろ、配信の終わりの時間が近づいてきたようだ。

 司会は今日のお話をまとめていた。


「

 この国には10年に一度、大震災が訪れています。

 とても悲しい出来事であることは間違いない。

 きっとまた多くの涙が流れるに違いない。


 けれど……。

 だからこそ、次の震災は希望に変えたいのです。

 皆の希望のつまった街を作りたいのです。

 悲しみを希望へ変えたいのです。


 そのために、ぜひ、皆もどんな街にしたいか考えてみてください。

 それでは、皆さん。また次回!シーユー!

 」


「乙でしたー」

「お疲れ様ー」

「またねー」


「おやすみー」

 私もコメントして眠りについた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。