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LAST GAME  作者: よむよみ
第七章 光の世界 テストプレイ編

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episode03

 さて、今日は三日目。


 徐々に女王様という職業にも慣れてきたはずだと思ってログインすると、そんなことはなかった。

 机の上にはぎっしりと報告書が縦積みされている。

 人口が増加し職業が多様になると、報告書も比例して増えるようだ。

 一行一行空想しながら読んでいたらいつまで経っても終わらない。

 空想は控えめにしよう。文字数が増えすぎると作者が大変なのだ。

 私は一度目を閉じ気合を入れなおしてから、再び報告書に目を向ける。


 特に大きな問題は無かったようだ。

 人口も順調に増え、国はどんどん豊かになっている。

 集計(サマリー)を軽く読み飛ばし詳細に移る。


 まずは冒険者の項目。

 前回出した報奨金の甲斐あってか、古墳を見つけていた。

 そして、その冒険者のうちの一人が見つけたアイテムに強い関心を抱き、研究を始めたようだ。

 その研究の成果が本として出版され、国内で噂になっている。


 古墳から見つかった品々。とても興味深い。

 私はすぐに、城の図書室に向かう。

 城の図書室にはこの国の全ての本が一通り保管されている。

 私は対象の本を見つけ出し、早速手に取り読み始めた。

 タイトルは「この国の歴史」。

 王女としてこの国で流行している本は読んでおく必要がある。

 この国の流行りを知ることも私の重要な役目なのだ。


 前半はよくある冒険譚だった。

 報奨金目当てで王国から西側の方向へ、道なき道を超えモンスターをなぎ倒し、古墳を見つけ古墳を探索する。

 こわー。つよー。いたいー。俺すげー。と緊張感あふれる?書きっぷりで描かれていた。

 私の空想を交えてゆっくり読み進めかったが、今は公務中。さっと読み飛ばす。


 後半には、見つかった出土品の内容が記載してあった。

 太陽を模したお皿やアクセサリ。

 一見、何の役に立つかわからないようなものも、古墳に納められていたのだ、きっと当時は大切な宝物だったに違いない。

 私の国は太陽を信仰する宗教を持つ。

 この古墳は私たちの国のルーツをなのかもしれない。


 私が特に興味を引いたのは古文書だ。

 たくさんの出土品の中から本のように書き記されたものが見つかっていた。

 作者は研究を重ねついに解読に成功したようだ、その内容が記載されていた。

 私の国には1000年という長い歴史があり文献となって残っている。

 でも、それ以上昔の出来事については調べようも無かったし、気にもしていなかった。

 もしかしたら、その過去について、記載されているかもしれない。

 私は注意深く読み進めた。



 豊かさ、平和、日常、光ある世界。

 時々、闇訪れる事、知っていた。

 けれど、すぐに光戻る。

 大したことない。


 それは、豊作の祭りの時。

 闇訪れた。

 光、すぐもどる安心。

 皆、そう思ってた。

 けれど、光、戻らない。

 さらなる闇、訪れた。


 魔王、現れ、街、襲われる。

 皆、逃げ惑って、散り散りに散っていった。

 残った装備、集めて、一人の男に託した。


 彼は勇者になった。


 勇者曰く、また、闇の訪れとともに、魔王現れる。


 私たち、もっと、発展しないといけない。

 荒れ果てたこの街、あきらめる。

 太陽の出る方向へ、私たち旅建つ。


 主よ、眠る者の魂を、導き給へ。



 短い文章だった。片言なのは、解読の結果だからなのだろう。

 作者の文才が無いからではない、よね?作者のユーモラスよね?


 太陽の出る方向、つまり、東の方向へ向かったと書いてある。

 彼らはきっと私たちの祖先に違いない。

 けれど、少し不穏ね。再び魔王現れる、だって。


 最後は「これらの古文書に惹かれ、この国の過去を探求することにした」と締めくくられている。

 興味深い本だった。もっと研究を進めなくてはならない。

 でも、今は公務中。私は記憶にとどめ、報告書を読み進めることにした。


 次は鍛冶屋の報告。

 武器を依頼したこともあり、急速に発展していた。

 片手間にナイフやフォークなどの日用品も手掛けているようだ。

 そういえば、私の部屋にも金属製の調度品が増えていた。

 鍛冶屋の安定に私はほっと胸をなでおろした。

 技術が失われたり他国に安く買いたたかれるようなことはなさそうだ。


 最後は農家の報告。

 肥料の発明により、生産性が急拡大した。

 人口増に伴う消費増を軽く上回る成長速度だ。

 食料も余り気味で、安く出回り始めた。

 そのため、いくつかの農家では、余った食料品を使ったお酒の生産に本腰を入れ始めたようだ。


 私は、適度に食料の備蓄が集まると、以前農家へ転職させた人に声をかけた。

「ええ。喜んで。

 農家も改善の余地があって楽しかったですが……。

 私はやっぱり自由に研究がしたいです」

 農家の生産性の拡大の多くは、彼の改善の成果のおかげのようだ。

 肥料や農具、水路など効率化が随分と進んでいた。

 私は、彼に気にかかっていた古文書の事を伝えた。

「過去の歴史から皆既日食については知っていましたけれど、そんな過去があるとは知りませんでした。

 興味深いですね。」

 彼も、強い関心を持ったようだ。

 まだ不明瞭ではあるが、国の存亡にかかわることかもしれないのだ。

 民間だけに任せず、国としても研究しておきたい。


 そして、このタイミングで私は税率を40%へ上げた。

 民間から国へと一人移動している。

 税率は労働人口における民間人の割合にしておくとバランスがいいと知っている。

 多くの反発もあったけれど、生産力が急拡大していたこともあり、みんな最後には納得してくれた。


 国王  1

 兵士  2

 研究者 1

 農家  2

 冒険者 2

 鍛冶屋 1

 歴史家 1


 一通り報告書に目を通し終わると、私は目を閉じてふぅっと伸びをする。

 報奨金によって冒険者たちは探索場所を変えてくれたように、補助金や助成金には国が思うように労働人口を変える役割がある。

 そして、投資の拡大は、新しいサービスの誕生と定着のために必要なようだ。

 たかだか10人程度のゲームの世界だけれど、経済の知識なんて知らないけれど、私はそう感じた。


 私が一息ついた事を知ったのか、大臣が声をかけてきた。

「この間使った予備費の分が戻っていません。

 国民にはさらに増税しましょう。

 それに兵士の給料を上げすぎです」


 冒険者に報奨金を出すようになって、兵士たちは不公平に感じていた。

 中には冒険者になろうかな、とか、妻に日用品を買いたいとせがまれる人が増えてきた。

 もともと、民間が豊かになって税収が上がった分兵士の給料も上げるのが自然だと思っていた。

 税率は官民の割合に定めていたのだから。

 だから、私は躊躇なく兵士の給料を上げた。

 税収が上がった分も結局全て使い切って、大臣の言うように予備費は使い切ったままだった。


「ほら、考えてないで、すぐに増税です。減給です。

 なんたって、予備費がないんですから!」大臣の声が荒立たしくなる。


 想像してみる。

 生産性が向上し、日用品が普及し、生活水準が上がってきた。

 もし今、予備費を元通りにするため増税、減給したら、買えていた物が買えなくなる。

 売れなくなったら、鍛冶屋が廃業してしまうかもしれない。

 それに歴史家が誕生している。歴史の探求の結果を本にしようとしている。

 その本が買われなかったら、彼はまた冒険者に戻ってしまうかもしれない。


「お金を増やすという事は、お金の価値が下がるという事ですぞ!」

 ここで私は反論した。

「いいえ。お金の価値より大切なものがある。

 国民が日々、働くためにはお金が必要なの。

 お金を減らすと、その生産力を減らすことになる。

 その方が問題よ」


 生産力さえあれば、国民は生きていける。

 お金の価値がなくなったとしても、生産力さえ残っていれば国は立て直せる。

 そしてお金は、生産性を高めるために必要なのだ。


 通貨が例え国際的に無価値になろうとも、生産力さえあれば簡単に自立できる。

 ――国債の完全償還は国民の生産力が無くなった時、国が滅んだ時で十分だ――


 私は、さらなる発展のため、新しい通貨の発行を決めた。

 けれど、通貨の製造にはまとまった金属が必要だ。

 冒険者の報奨金だけでは、お金がかかりすぎるし、量だって不足する。

 私は、直属の兵士長に声をかけた。

「鉱石の採掘ですね。わかりました。

 日々の訓練がてら、軽く大量に採ってきてやりますよ」

 兵士長となっていたケイは、いつも私の雑用を引き受けてくれる。



 過去の歴史、新通貨。

 新しい問題が出てきたけれど、一通り解決への道筋が見つかったようだ。

 私は安心して、今日のゲームを終えた。



 眠りにつこうと目を閉じる。

 ゲーム終わり間近の大臣とのやりとりを思い出し、少し考え込んでしまった。


 ゲームの中では、ゲームだからこそ資本主義になっている。

 労働の対価はお金で支払う必要がある。

 子供たちの世界で起こるお願いや物々交換は、資本主義の世界では成り立たない。


 お金が不足していたら当然、お金のあるところにプレイヤーは集まることになる。

 結果的に、官民の構成人数の比は、税率に収束していく。

 単純なゲームだったけれど、私はそんな事実に気が付いた。


 お金が無ければ労働は生まれない。

 お金が不足したら、資本主義の労働は成り立たない。

 きっとこれは、労働の対価としてお金を用意するという資本主義の落とし穴だ。


 税率を上げて生活に苦しくなればなるほど、それは顕著になる。

 人は生活が苦しくなると優しさをお金に変える。


 昔は憩いの場だったデパートの屋上は、収益が見込めるフットサルコートになった。

 無料で体を動かせる公園を少なくして収益源に変える、国や大企業のやることはえげつない。

 それに、ポイント活動なる言葉が生まれた。

 少しでも広告を見てくれる人にポイントという形で対価を渡す、そんな労働が国内に蔓延している。

 味や機能性、耐久性という品質などでは、購入につながらない。

 国民が本来なら提供できるサービスに、国民の消費が追いついていない。


 今まで、人口が増加し消費が拡大していたから問題は無かった。

 今まで、生産力が通貨に対して不足していたから問題に気が付きにくかった。

 今まで、生産性が急拡大することは無かったから問題に気が付けなかった。

 でも、人口増加に歯止めがかかり、AIや機械化・自動化によって生産力が急拡大した現在になって、それが可視化された。



 昨今、自国では物価高が叫ばれている。

 国民が嘆いているのは主に食料品や生活必需品の高騰だ。

 原因は人件費の高騰や通貨安に伴う輸入価格の上昇と言われている。

 食料品や生活必需品の値段が上がれば、当然、また人件費も上がる。

 そしてまたつられるように物価が上がる。

 物価はいつまで上がるのだろうか。

 増税による影響だという話は一向に聞こえてこないのが不思議だった。


 生活水準や生活コストはお金の総量や税率によって定まる。

 不足分は価格を上げたり生産性を上げたりするしかないが、成長が追いつかない企業はやむなく倒産することになる。

 労働者は増税や物価高の影響を受け、より給料の高い職業を探す。

 中には、国に頼って生活保護を受ける人だっているかもしれない。

 生をあきらめる人だって現れるかもしれない。


 結果、国の生産力は低下し、社会保障費は増え、民間で働く人の割合は減っていく。


 この国の税率は、46%。

 残りの54%という値になるまで、民間で働く人の割合は減り、物価は上がり続けるのかもしれない。

 その間、国内の生産は必要なものや人気のあるものばかりに限られていく。

 新しいサービスなんか定着するはずがない。


 富裕層が海外へと投資をするたびにこの流れは加速する。

 物価はおそらくまだまだ上がる。

 国がお金を絞れば絞るほど、食料品や生活必需品の値段は上がる。

 これが、国の定めた税率に近づくまで続く。


 いや、そうはならないかもしれない。

 生活水準を下げて無理に働くことをあきらめる人だって増えるかもしれない。

 だからきっと、その前に物価高は落ち着く気がする。


 そして、そうなったら国の勝ちだ。

 安く働いてくれる労働者が増えたのだから。


 ……。でも……。でも……。

 私はそんな国は嫌だ……。


 私は目を開いて再びゲームにログインし、清掃員の給料を衝動的に上げた。

 オープニングにも登場する清掃員が、笑顔でお酒を飲んでいる姿が思い浮かぶ。

 新しく開発されているお酒、おいしいでしょ。


 国家に必要なインフラ。それを黙々支える仕事。

 誰にでもできる仕事だからと軽んじられていいわけがない。

 彼らだって、彼らだからこそ、この国の成長を感じてもらいたい。

 全員で支え合って私の国は成長しているのだ。


 私は再び静かに眠りについた。


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