閑話休題:「ごせんえん」ご声援
「あれさぁ、ご声援じゃなくって、五千円に聞こえてこない?」
スーパーの外で選挙カーが行きかっているのか、ふいに聞こえてきた鶯嬢の声に、来栖が可笑しそうに口元を隠しつつ言い出した。
たしかに、外で繰り返し「ご声援ありがとうございます」の声。スーパー前だから、人はさぞ多かろう、立候補者の名前を呼ぶより、ありがとうございますの声の方が圧倒的に多いようだ。
「五千円ありがとうございます……か」
私の本日の軍資金は三千円、五千円なんて入っていない。
まぁ、買おうと思っているものだって、ノートや鉛筆程度だし、問題ない金額ではあるのだが、五千円あるのなら新しいスカートが欲しいところ。
いや、欲しいものがなかったとして、見知らぬ立候補者にほいほい五千円あげたりはしないが。
「言ってる分だけ五千円をもらってるんだったら、すごい金額だな、いったいいくらになるんだ?」
思わず、一日の概算だとか選挙期間とか計算しかけてしまうものの、さすがに選挙カーが毎日何回「ご声援ありがとうございます」と言っているのかわかりはしない。
「っつか、五千円どころか、ああいうのはパーティーチケットとか、支援金とかで、巨額の富を得ているもんでしょ」
まぁ、もちろん、それでもって事務所の運営とかしているわけだから、富を得ているいうのは違うのだろうが、私じゃ想像もつかないような金額がやりとりされていることだろうなぁ程度には思っている。
「いやいや、五千円も侮れないと思うよ、全国民から五千円づつ巻き上げていったら、一兆円いくでしょう」
「一兆円もあったら、日本の借金が返せてしまうじゃないか」
「バカだなぁ、借金は信用度合だから、ゼロにするのはむしろダメなんだよ」
それ以前に、五千円五千円騒いでいるのは選挙前の立候補者であり、日本国ではないあたりで、借金はなかなか減らぬが現状だろう。
「ってか、日本の借金って、一兆円どころじゃなくあるんじゃなかったっけ?」
「いくらだよ……千兆円?」
思わずスマホで調べて、その金額に驚いた。
一兆円もの金額でも、はした金にしかならないらしい。全国民から五百万円は巻き上げなくては、借金返済は無理なよう。
お年玉貯金も合わせたところで、私にそんな金額はありはしないので、どうやら日本の謝金は、まだまだ減りようがないようだ。
「まぁ、そんなバカ話はおいといて……」
「ちょっと待て、来栖とは馬鹿話以外の話をした覚えがないぞ」
「えっ、ひっどいなぁ」




