第二話 「ボランティア」
そこら中に捨てられた煙草の吸殻、踏み潰された空き缶、その風景を見るだけで治安が窺える澱んだ場所に、一人の女神が下僕達を連れてやってきた。
「さぁみんな!今日は掃除しがいがあるこの場所で頑張りましょう!」
全員を鼓舞した成未は、背中に竹で作られた籠と右手にはトングを持っている。
ボランティア活動の一環でゴミ拾いに来ていた彼女たちは活動を開始した。
魔法を使ってゴミを集める者もいれば、地道に腰を下ろしてゴミを拾う者などその方法は人によって違うが成未は後者だ。
彼女の魔法は治癒魔法なのでこういう場面ではあまり使い勝手が良くないが、成未は募金活動や医療活動よりもこういった清掃活動の方が好ましいので魔法が役に立たなくてもそれなりに身が入った。
成未にとって今住んでいる世界は自分が目指した世界。
天空の管理者が全天統一を果たしてから、世界には真の平和が訪れたと言っても過言ではないだろう。
人によっては完全に全国が加盟した訳ではないのでまだまだ油断はできないと言うが、そんな言葉を寝転がりながら居間で吐いている時点でその平和を享受していることになぜ気づかないのか成未は不思議でならなかった。
先人たちが命を賭してこの世界を作り上げたというのに、これ以上を求めるのは強欲というものだ。
まあ人は失わないと幸せを感じることはできないとよく言うし、理解できないわけでもあるまいが。
そんなことを考えながら作業をしていると背中の籠が拾ったゴミでパンパンになってしまった。
「業羅先輩!こっち、新しい籠ありますよ!」
「うん!ありがとう!」
数時間後、一通り掃除を終えた成未は参加してくれた後輩達をその場で解散させて、一人で回収業者が来るのを待っていた。
すると、傍らにまだ残っていたのか一人の男子後輩が話しかけてくる。
「業羅先輩、中学時代に生徒会の役員やってたんですって?」
名前の知らない子が急に話しかけてきて、成未は正直気まずかった。
この子だけではなく、基本的にボランティアに参加する時は全員が初めまして同士のことが多い。
しかしこの子は、なんだか見たことがあるような......?
「あぁ、すみません。前回と前々回のボランティアにも参加して、今回も業羅先輩と一緒だったのでつい......」
(えぇー!私のファン!?)
確かに成未は口元の痣以外はそこそこの容姿をしていたので、そんな後輩が出てきてもおかしくはなかった。
痣も彼女自身が気にしているだけで、恐らく成未に恋心を抱く異性が現れればむしろチャームポイントと捉えてくれるだろう。
「あぁ、そうなんだ!そうそう、中学の時に書記だけどね」
「凄いじゃないですか!実は俺も来期の生徒会役員に立候補しようとしててーー」
別述の通り、中学と高校では生徒会役員になるハードルの高さが段違いなので成未はあまり参考にならないと思うと言うが、それでも彼は成未の忠告を聞き入れずグイグイと話を聞いてきた。
成未も次第にそんな彼に話を聞かせることが心地良くなっていた。
誰かに気にかけられることがこんなにも喜ばしいことだとは、それまで思いもしなかったのだ。
成未はまた、普段何気なく感じていた幸せを噛み締めて日々を生きる。




