第一話 「流星」
これはまだ、星導千宙がUnderworldに入る前の物語。
「え!今日、流れ星見えるの!?」
「そうみたいよ!屋上、一緒に行こうね!」
そんな話を体育館の端に座って同じ部活のミルキーとしていた。
いつもだったら苦痛に感じる体育の授業。
その跳び箱の順番待ちだが、千宙にとっては突然飛び込んできた朗報に胸が踊る。
何時に集合して、どの望遠鏡を持っていこうかと浮かれている間に自分の番が回ってきて教師に名前を呼ばれた。
至って普通の高校生活を送っていた千宙。Underworldに入ってからは自分の実力の無さと突如として陥れられた絶望的な状況を悲観していたが、自分の世界ではしっかりと生きる意味を持っていた。
その日の夜、千宙はミルキーと一緒に学校の屋上で夜空を見上げていた。
まだ流れ星は見えないが、天体観測の醍醐味とも言える友達と寝転がって夜空を見ている今の状況がすでに楽しい千宙だった。
「はぁ〜あ、隣にいるのが千宙じゃなくて彼氏だったらな〜」
余計なお世話だ、ミルキーも彼氏はいないくせに。
「ねぇねぇ、私思ってたんだけどさ」
「ん?」
「千宙の名前って、数字の『千』に宇宙の『宙』って書くんだよね」
「そうだけど?」
「めっちゃ良いよね、苗字も『星』を『導』くって書くしさ。天体観測冥利に尽きるって感じ」
「天体観測冥利って何よ」
千宙は結構自分の名前が好きだ。
ミルキーの言う通り、自分が好きな星にまつわる意味をいくつか持っている。
「でもミルキーだって、良い名前じゃん。天の川って学名で『ミルキーウェイ』って言うし、私はそれも羨ましいと思うけどな」
「まあね」
「あ、もしかして言ってくれるの待ちだったでしょ」
「バレた?」
こんな話をミルキーとは日常的にしている。馬が合うのだろう、とても心地の良い時間だ。
「でも不思議よね、私とミルキーって名前の響きがちょっと違うじゃん?」
「確かにね、字で書いても私はカタカナで千宙は漢字だしね。そっちの方がちょっとカッコイイけどね」
「そう?今はもうなんとも思わないけど、子供の頃は結構悩んだよ。自分と同じような名前の人があんまり周りにいないからね」
「なんか意味あるのかね」
「どうだかね〜」
そんな話をしているととても大きな、まるで、否ーー本当に夜空全体を覆うほど巨大な流れ星が煌々と夜空をまるで昼間かのように照らした。
一瞬の出来事だったので、声すら上げることができずに唖然としてそれに見入ってしまった。
「み、見た......?今の......」
「見なかった方がおかしいでしょ......」
望遠鏡が要らなかったと口にはしてみるが、そんなことなど全く不満に感じないほど千載一遇の体験だっただろう。
あそこまで大きな流れ星を見ることができるのはきっと今後の人生で二度もない。
そして巨大流星の後に続いて、普通の、とは言ったもののさっきの流れ星を見た後だとどうしても小さく見えてしまうような流れ星が幾重にも夜空を駆け出した。
「なんか、さっきの見た後だとこの子たちがしょぼく見えるよね......」
「うん......」
あの流れ星の余韻が残る中、二人はそっと願い事を繰り返した。




