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鋼鉄の赤いメシア~100万人を粛清した独裁者、転生して理想の国を作る~  作者: 葉月双
二章

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28話 好きな道具を使おう


 とある日の夜、ニーナの家はチンピラたちの襲撃を受けた。

 騒々しい音と声に、ニーナは跳ねるように飛び起きる。ニーナの部屋は二階だったので、急いで一階へと駆け下りた。

 そこでは3人のチンピラが店舗を破壊しているところだった。

 ニーナの家はパン屋なので、一階が店舗、二階が住居となっている。


「何してるんですか!?」


 ニーナが叫ぶと、チンピラたちはニヤッと笑った。


「犯せ犯せ! このガキを犯せ!」


 チンピラの一人が叫んで、残りの2人がニーナに飛び掛かる。


「恨むならセルナ・アルカサルを恨みな嬢ちゃん!」


 チンピラの1人がニーナを掴もうと手を伸ばす。

 ニーナは右掌をチンピラに向けた。


「【マナアロー】」


 容赦なく躊躇なく、ニーナは魔力の矢を撃ち込んだ。それは正確にチンピラの心臓を貫いて、チンピラは何が起こったのかも分からないまま絶命した。

 それを見て、残りの2人が驚愕の表情を見せた。


「私はアカデミーの生徒ですよ? そんなことも知らずに襲ったんですか?」


 ニーナは酷く冷えた声で言った。

 あまりにもバカバカしい襲撃。計画性も隠密性もないお粗末な夜襲。SIUならもっと上手にやる。

 以前のニーナならチンピラたちに怯えたかもしれないが、今のニーナは数多の任務と粛清を経て鋼鉄の心を持ちつつあった。この程度のハプニングでは動揺しない。


「ニーナ大丈夫か!?」


 両親が二階から駆け下りてきて、ニーナは一瞬そっちに視線をやってしまう。

 その隙にチンピラ2人が逃げ出した。

 ニーナは追うかどうか一瞬迷ったが、今は両親を宥めて治安維持隊を呼ぶのが先決だと判断した。どうせ2人の顔は覚えたのだから。


◇


「なるほど、私を恨めと言ったんだね?」


 セルナが淡々と言った。

 ここはニーナの家のニーナの部屋。治安維持隊の聴取と現場検証が終わった真夜中。

 ニーナはチンピラを殺害しているが、正当防衛ということで罪には問われなかった。


「はい。共鳴の指輪で報告した通りです。というか、同志セルナ、わざわざ来るほどのことでは……」


 ニーナは少し申し訳なさそうに言った。

 この部屋にいるのはセルナ、カルラ、ニーナの3人。今は3人とも床に座っている。


「いいんだ。私が君の様子を知りたかったんだ。同志が襲われたのだから」


 セルナは手を伸ばしてニーナの頭を撫でた。

 ニーナは照れたように頬を染める。


「顔は当然覚えていますよね?」とカルラ。


 ニーナが頷く。


「では明日にでも似顔絵を制作しましょう」


 絵を描くのはカルラではない。そういうのが得意な子が孤児院にいるのだ。


「SIUの総力を挙げて犯人を見つける」セルナが言う。「そして誰に雇われたのか吐かせる」


 ほぼ間違いなく黒幕がいるとセルナは思っている。


「それで分かる程度の黒幕ならいいですけど」とカルラ。

「やっぱりあいつらは雇われですよね……」とニーナ。


「ああ。大方、金を渡されてあの店を襲え、できれば女は犯せ、とでも言われたのだろう。私の名前を出したことから、本当の標的は私である可能性が高い」

「なぜお姉様が標的なのにニーナを狙ったのです?」

「たぶん私の友人を攻撃して私を動揺させるとか、そういう感じじゃないかな?」


「バテリアン商会でしょうか?」とニーナ。


「どうかな。可能性は低そうだけどね。個人的にはこういう陰湿なのは貴族令嬢がやりそうな気がするよ。メリッサの取り巻き連中とかね」


「だとしたら孤児院も狙われそうですね」カルラが言う。「でもチンピラ程度なら心配する必要はないでしょう。もし襲われたら必ず相手を拘束するよう言っておきます」


「そうだね。とにかくまずは実行犯を捕まえることだ」


 セルナが言って、ニーナとカルラが頷く。


「ところでお姉様、気付いていると思いますが……」

「ああ、またヴォルフが監視しているね。おかしいな、クヌートは確かに圧力をかけたし、1日は外れたんだけどね」


 一体どうして未だに監視されているのか見当もつかない。


「消しますか?」


 そう言ったのはニーナ。


「いや、なんでもかんでも消せばいいわけじゃないよ」


 セルナが苦笑いしながら言った。


「それよりニーナ、このまま泊ってもいいかな? 帰るの面倒だし」

「ええ。もちろんです。予備の布団を持ってきますね!」


 ニーナが笑顔で言った。


◇


 2日後には孤児院が襲撃されたと報告があって、セルナはカルラとニーナを連れてモニカの孤児院へと向かった。

 モニカたちは襲撃者を拘束したので、セルナはこれから尋問を行う。

 ヴォルフが監視しているので、セルナは普段通りに孤児たちにお菓子を配った。それから尋問室へと足を運ぶ。

 尋問室の前でセルナたちは立ち止まる。


「モニカ、2人選んで連れてきたまえ。拷問のやり方を教える」

「はい同志。1人は私でいいでしょうか? 前から拷問に興味がありました」

「いいだろう」


 セルナが言うと、モニカはもう1人を呼びに言った。

 セルナは尋問室のドアを開けて中に入る。カルラとニーナも続いた。

 尋問室はセルナが金を出して改築した部屋で、壁や天井が分厚く、窓もない。泣き叫んでもその声がほとんど外に漏れない造りになっている。


 尋問室には3人の大人が拘束されていた。男が2人と女が1人。全員が後ろ手に縛られて椅子に座った状態で拘束されている。

 口にも布が当てられていて、喋れない状態だ。


「あ、この2人です。うちを襲った奴です」


 ニーナが男2人を順番に指さして言った。


「そりゃ手間が省けていいね」


「失敗した奴をまた使うとは間抜けですね」とカルラ。


 セルナは自分が責められたのかと思ってドキッとした。アンシェル一家のことを言われたのかと思ったのだ。

 拘束された3人は怯えた様子でセルナたちを見ていた。


「君たちはまさか孤児にボコボコにされるとは思ってなかっただろうね」


 3人はそれぞれ怪我をしていて、それが戦闘によるものだとセルナはすぐ分かった。


「うちにも少し被害が出ました」戻って来たモニカが言う。「まぁ掠り傷ですが」


 孤児は元々よく喧嘩をするし、気の強い者も多い。その上で、セルナが護身術を覚えさせている。

 正しくは、セルナはカルラに護身術を教え、カルラがこの孤児院で現場指揮官をやっていた頃にみんなに教え、今はみんながそれぞれ空いた時間に稽古している。


「どうも同志」


 モニカと一緒に来たのは15歳の男子工作員。


「それじゃあまずは拷問の基本について話そう」セルナが言う。「拷問は相手によっては何の意味もない場合がある」


「はい」モニカが手を上げて言う。「死んでも屈さないという人間ですね?」


「その通り。いるんだよね、そういう面倒な奴が実際に。でもそれって強い信念を持っていたり、訓練を受けた者だったりするわけで、この3人は該当しない」


 拷問という言葉を聞いて、3人はブルブルと震えていた。

 セルナは3人に【記録詠み】を使用。それで黒幕が誰か分かった。彼らに金を渡したのはメリッサの側仕えだ。つまりメリッサが黒幕ということ。

 だがそれはそれとして、セルナはこのまま拷問の授業を続ける。


「じゃあ色々とやってみようか」


 セルナは視線を部屋の隅の棚へと向ける。そこには色々な道具が置いてある。人間を痛めつけるための道具だ。


「その男からにしよう」


 セルナが言うと、カルラが男の口の布を外す。


「や、止めてくれ! なんでも話すから! 何でも言うから止めてくれ!」


 男は泣きながら言った。


「止めるも何も、まだ何もしていませんよ」モニカが薄暗い瞳で男を見た。「これからするのです」


「ワクワク」と工作員男子。


「さぁみんな、好きな道具を持っておいで」セルナが事務的に言う。「実際に使ってみよう」


「なんでだよぉぉぉぉ!! 話すって言ってるだろうがぁぁぁぁぁ!!」

「でも君、ニーナの家を襲ったし、ここも襲っただろう? だから、ね?」

「違うんだぁぁ!! 頼まれただけなんだぁ! そうだ! 治安隊にオレを突き出してくれ! 頼む!! 拷問なんかしないでくれぇ!!」


「でもあなた」ニーナが冷たい声で言う。「私を犯すつもりだったじゃないですか。私が止めてって言ったら許すつもりだったんですか?」

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