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鋼鉄の赤いメシア~100万人を粛清した独裁者、転生して理想の国を作る~  作者: 葉月双
二章

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7話 恐るべき騎士


「メリッサお姉様!?」


 ルビィは酷く驚いた様子で立ち上がった。同時に準備していた【マナアロー】を消す。

 セルナも同じく【マナアロー】を消した。今の時点で第一皇女を撃つわけにはいかない。


「はーい、メリッサお姉様ですよー!」


 メリッサは軽い足取りで室内に入った。ドアは閉めなかった。


「公務はどうされたんですか!?」とルビィ。


「体調が悪いのでー、早退しましたー!」

「で、でしたらお部屋で休んでいないと!」


 ルビィは慌てた様子で言った。


「だけどルビィちゃんがぁ、噂のセルナ嬢とお茶をしていると風の噂で聞きましてー」


 言いながら、メリッサはセルナを見た。

 セルナは立ち上がり、カーテシーで挨拶。


「初めまして、皇女殿下」

「メリッサと呼んでくださーい」

「分かりましたメリッサ殿下。体調が優れないなら、私の席にどうぞ」


 セルナはテーブルから離れ、自分が座っていた椅子を右手で示した。


「わー、優しいですねー! それじゃあ遠慮なくぅ!」


 メリッサは笑顔のままでセルナの席に座った。


(ああ、私の席がなくなった……)


 自分で言っておいてなんだが、セルナは少し悲しかった。


「セルナ、こっちに座っていいわよ」


 言いながら、ルビィは化粧台に移動してスツールを持ってきてその上に座った。

 それを確認してから、セルナはルビィが座っていた椅子に腰を下ろす。

 メリッサと対面になったので、セルナは【記録詠み】をメリッサに使用。


(なんだこいつ!? 街のチンピラか!?)


 メリッサの不正はかなり多かった。

 脅迫、強要、精神的暴行、殺人教唆、暴行教唆、凌辱教唆、強姦教唆、などなど。

 セルナは念のため、殺人教唆に意識を向ける。そうすると、内容が開示される。件数が4件もあって、そのうちの1件はこの前のクヌートとセルナを狙った暗殺だった。


(お前か……必ず報復してやる)


 セルナはテーブルの下でグッと拳を握った。できるなら今すぐ消してやりたいが、ルビィの前で第一皇女を殺すわけにはいかない。

 ひとまず犯人が分かったので、どうやって消すかは後で考えることにした。


「どうしたんですー? そんなにわたくしを見詰めてぇ! 照れちゃいます!」


 メリッサは両手で自分の頬を挟んで、困ったわーという風に小さく首を振った。明るく可愛い感じの仕草だが、メリッサの本性を知ったセルナとしては普通に気持ち悪い。


「申し訳ありません。あまりに美しかったのでつい」とセルナ。


「あらー、お世辞が上手ですねー!」


 メリッサはずっとニコニコしている。とっても無邪気な笑顔に見える。少なくとも、セルナにはそう見えていた。もし【記録詠み】がなかったら騙された可能性が高い。


「それでお姉様」ルビィが言う。「セルナに挨拶したかっただけですか?」


「そうですよー。悲劇のヒロインにして、クヌートお兄様と内々に婚約が決まっている子ですものー。気になりますよぉ。将来はわたくしの義妹になるわけですし?」


 それはない、とセルナは心の中で思った。なぜならメリッサもクヌートも死ぬからだ。メリッサは報復のため、クヌートは目指す理想の違いのため、それぞれ消えてもらうことは確定している。


「不束者ですが、よろしくお願いします」とセルナ。


「あらあら、思ったよりずっと大人しい子なのですね」メリッサが言う。「アカデミーでは王様みたいに振舞ってるって聞いたのだけどー?」


「そ、そんなことは……」


 もちろんある。セルナは指導者なのだ。メリッサ相手に下手に出ている方がおかしいのだ。つまり、今の社会は間違っている。自分が一番上でないのは心から間違っているとセルナは思った。


「二面性があるってことですぅ?」


 ニヤニヤしながらメリッサが言った。

 セルナは(お前にだけは言われたくない)と強く思った。もちろん表には出さない。


「お姉様、セルナはアルカサルですよ?」ルビィが言う。「アカデミーで偉そうなのは当然かと思います。あたくしだってアカデミーでは皇族として振舞っていますもの」


「あらー? わたくしは学生時代もずっとこんな感じだったけれど?」メリッサが言う。「まぁ、身体が弱くて卒業に6年もかかりましたけれど」


 アカデミーは2回までなら留年が可能だ。どの学科も基本は4年制で、最大6年まで滞在できる。7年目はなく、退学となる。


「今は元気そうに見えます」とセルナ。


「ふふっ、だんだんと良くなっているのですよー。子供の頃なんてほとんど部屋から出たことなかったですねー」

「体調が悪くて早退したのでは?」


 セルナが小さく首を傾げた。


「ふふっ、そうなのですけど、セルナちゃんとお話をしていると気分が良くなったみたいですぅ」


 だったら私に感謝しろ、とセルナは思ったが言わなかった。


「とはいえ、そろそろ休みますねー」言いながら、メリッサが立ち上がる。「また今度、お茶会でもしましょう」


「ええ、喜んで」とセルナは微笑みを浮かべた。


 メリッサも微笑み、それから踵を返した。

 その瞬間、メリッサが崩れ落ちた。

 けれどメリッサが床に倒れる前に、突如出現した男がメリッサを抱き留める。

 セルナは驚いて跳ねるように立ち上がり、椅子が引っ繰り返る。それに驚いたルビィも立ち上がった。


「我はメリッサ様の護衛です。ルビィ殿下とは会ったこともあるはずですが?」


 男が淡々と言った。

 男の髪色はスチールグレイで、髪型はショートストレート。やや前髪が横に流れている。

 瞳の色はマゼンダで、顔立ちは可もなく不可もない。見た目の年齢は20代の半ば。


「バルドメロ・カステド卿……でしたか?」


 ルビィは恐る恐るという雰囲気で言った。

 男――バルドメロが頷いた。

 バルドメロは筋肉質で体格が良く、蒼い騎士服を着用している。当然、腰には剣を装備。


「いつからいた?」


 セルナが酷く警戒して言った。


「ずっとだ。我はメリッサ様から離れることはない」


 言いながら、バルドメロはメリッサをお姫様抱っこした。


「いつもすみませんねぇ……」


 メリッサが申し訳なさそうに言った。

 どうやら本当に体調が悪いらしい、とセルナは思った。

 バルドメロが首を振る。


「問題ありませんメリッサ様。このままお部屋まで運びます」


 そう言って、バルドメロが歩き始める。

 メリッサが小さく手を振った。

 二人が部屋を出てから、セルナは大きく息を吐いた。全身から冷や汗が噴き出していて、セルナは一度目を瞑って心を落ち着ける。


「セルナ、大丈夫ですの?」


 ルビィが寄ってきてセルナを支えた。セルナは思いっきりルビィに身体を預けた。


「あれは何者だ?」とセルナ。


「元竜絶ですわ」

「……なるほど……。正直、殺されるかと思った……」

「あの方は怖い顔をしていますが、優秀な護衛ですわ。いきなり斬りかかったりしませんわよ」

「だといいけどね……」


 セルナは驚きと警戒で【記録詠み】を使うことさえ忘れていた。正直、アレシアと初めて会った時よりも恐ろしかった。


「とりあえず一人で立てる?」

「ああ、ありがとう」


 セルナが感謝を述べると、ルビィがソッとセルナから離れる。それからルビィはセルナがひっくり返した椅子を元に戻す。


「あいつがどうして消えていたのか分かる?」


 セルナは質問しながら椅子に座る。

 バルドメロは完全に姿を消していた。気配すらセルナは感じなかった。


「確かギフト持ちだったはずだわ。公開していたけど……何だったかしら?」

「そうか、ギフトか……ならあとで調べるよ」


 セルナは残っていたお茶をゆっくりと飲み干した。

 それからルビィと軽い世間話をしてから解散した。

 セルナはその足でアンシェル一家に会いに行き、メリッサの暗殺を頼んだが1億リブラと言われて諦めた。さすがに払う自信がない。


「これだから貨幣制度は……」

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