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鋼鉄の赤いメシア~100万人を粛清した独裁者、転生して理想の国を作る~  作者: 葉月双
二章

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34/69

1話 裏切り者は死ぬべきだ、そそのかした奴も死ぬべきだ


 ここはセルナの出身地であるシェナイズの街、タッカーの屋敷の応接室。


「久しぶりだねタッカー」


 高価なソファに座って、優雅に紅茶を飲みながらセルナが言った。

 セルナの背後にはメイド服を着たカルラが立っている。


「僕は回りくどいのが嫌いだし、時間の無駄も嫌いだ。知ってるはずだろう?」


 セルナの対面に座っているタッカーがやれやれと肩を竦める。


「おいおい、私が実は公爵令嬢だと知ってるはずだろう? その態度はない」


「まさかの直系だとはね。傍系だろうとは予想していたけどね」タッカーが足を組んでから自分の紅茶を飲む。「やっぱりエスアイユーは公爵家の組織なんだろう?」


「どうかな? そこまで話してやる義理はない。君との契約では確か、何か君のために情報を調べてやるって話だったはず。それともエスアイユーの正体が君への報酬でいいのかな?」


「それはまだ保留。いずれ何か困ったら君を使うよ、ご令嬢」

「そうかい領主殿。君が何を頼むのか今からワクワクするよ」

「ワクワクと言えば、酷い目に遭ったそうだね?」

「……嬉しそうじゃないか」


 セルナが目を細めると、タッカーはあからさまに楽しそうに笑った。


「フレット君と恋仲だったって?」

「わぁお、ここまで噂が広まってるとは。誰かが故意に広めたのかな?」


 セルナは床に転がっている縛られた男に視線を向けた。

 彼は30代の男性で、見た目に特徴はない。どこにでもいる男性という感じ。

 変わった点と言えば、領主の家で身動きできないように縛られ、猿ぐつわをかまされているということだけ。

 彼は酷く怯えた様子でセルナを見ていた。なんせ、彼を見るセルナの瞳に慈悲がまったくなかったから。


「ご令嬢、君の望み通り捕獲しておいたんだ、お礼があってもいいのでは?」

「ありがとう領主殿。とっても助かったよ」


 セルナは座ったままで優雅にお辞儀をした。


「さすが公爵令嬢。ここで暮らしていた時とは比べ物にならないぐらい気品がある」

「ああ、なんなら頭に本を乗せて歩けるよ。そこの本を取って」


 セルナが本棚を指さした。


「見せてくれなくていい」タッカーが言う。「それより、例のイカレ令嬢にフレット君の生首を見せられたって?」


「さすがの私も漏らしたね」


 セルナは肩を竦め、冗談っぽく言った。


「ご令嬢にも人の心があって安心だね。フレット君は可哀想だったけど」

「私ほど心が温かい人間もいないだろうけどね」


「ああそう……」タッカーが呆れ気味に言う。「それより、君のメイドがさっきから睨んでくるんだけど、エスアイユーの子だよね? メイドにしたの?」


「そうだよ。またアレシアみたいなのに狙われたら怖いからね。側にいてもらうことにしたのさ」


「ご安心を。自分が必ず守ります」カルラが自信満々で言う。「望むなら一緒に眠りますよ」


「いいね」セルナが言う。「子供の頃を思い出す」


 寒い夜はカルラを湯たんぽの代わりに抱きしめて眠っていたのだ。

 カルラはセルナより体温が高くてちょうど良かったのだ。


「さぁ本題に入ろう。僕はできれば誰とも話さず延々と魔法の研究がしたい」


「さっさと帰れってことだね」セルナが言う。「分かった。まず私の近況から。アカデミーの前期が終わって、後期からBクラスに昇格する」


 帝都アカデミーは前期と後期の2期制で、それぞれの間に長期休暇がある。今がまさにその長期休暇中である。

 セルナが街に戻った最大の目的は裏切り者がいないかのチェックだ。なんせ、セルナは裏切られるのが世界で一番嫌いだから。


 もちろん、孤児院に裏切り者はいなかった。16歳を超えて孤児院を出た者たちの中にもいなかった。

 安心安全のSIUにセルナも満足した。


「また筆記で満点、実技はほどほどかい?」


 タッカーが聞くと、セルナが大きく頷いた。


「僕の弟子にしては微妙だけど、まぁ仕方ないか。君はそもそも魔法にそれほど興味がないようだし」

「卒業までにAクラスに行きたいけど、たぶん無理だね」


 Aクラスには第三皇女ルビィがいるので、今より近づけるという理由。Aクラスにならなくても接触することは可能だし、一応は友達だ。少なくとも、セルナは友達だと思っている。


「頼むから僕の名声を落とすようなことだけは、やらないでくれよ?」

「善処する」


 セルナは魔法使いとしては酷く凡庸だ。実技はCクラス相当だが、筆記がAクラス相当どころか学年トップだったので、来期からBクラスになるというだけ。


「さてそれじゃあ」タッカーが床の男を見る。「こいつの話をしようか」


「私と一緒に帝都から来たらしい」セルナが言う。「白き翼ならコソコソする必要はないから、ディープアイズだろうね。だろ?」


 セルナが男に視線をやったが、男は何も言わなかった。


「ふむ。とにかくこいつは、この街で私の周囲を嗅ぎ回っていた。泳がせても良かったんだけど、SIUの仲間を懐柔しようとした。セルナ・アルカサルについて知ってることを話せば金を積むって」


「その仲間はどうなった?」とタッカー。


「何も言わなかった。素晴らしいことだ。本当に素晴らしい。だがこいつは私の仲間に私を裏切るよう持ち掛けた。どう思う? 同志カルラ」

「はい同志セルナ。裏切り者は死ぬべきで、裏切りをそそのかした者も同じく死ぬべきだと自分は考えます」


 カルラが男を見ると、男が何かを言いながら首を横に振った。


「カルラ、喋れるようにしてやれ」


 セルナが言って、カルラが男の猿ぐつわを外す。


「エスアイユーって何だ!? 俺はただ孤児院のガキにあんたの話を聞こうとしただけだ!」


 男が必死な様子で言った。


「なぜ私の話を?」

「あんたは今、帝国中で話題になっている中心人物だぞ!? 誰だって秘密を知りたいと思うだろ!? 俺は新聞記者なんだ! ディープアイズなんかじゃない!」

「カルラ」


 セルナが言うと、カルラが男の顔を蹴っ飛ばした。


「暴力はあまり見たくないんだけど?」とタッカー。


「私だってそうさ。平和な世界を夢見てるんだからね」セルナが言う。「でも時には仕方ないこともある」


「まさかとは思うけど、死体の処理も僕がするんじゃないだろうね?」


 タッカーがセルナを睨むので、セルナは小さく溜息を吐いた。


「安心したまえ。孤児たちがやるよ」

「待ってくれ! 殺さないでくれ! 話す! 話すから!」


 男は自分が本当に命の危機に瀕していると心から理解した。


「では話せ」とセルナ。


「俺は確かにディープアイズだ。うちはエスアイユーの正体と、あんたとエスアイユーの繋がりを追ってる。あんたは白き翼やアンシェル一家とも繋がっている公爵令嬢だ。その上あの騒動の中心人物。ちょっとでも情報が欲しい。だから俺があんたに付いてここまできた」


「違う違う。私が話せと言ったのは、私の仲間に私を売るよう話したことだよ」

「……俺たちは情報ギルドだぞ? 金で買える情報なら買うだろう? あの孤児院の子たちはあんたと繋がりが強そうだったし……」

「深い意味はないと?」

「ない。白き翼でも同じことをするだろう。あるいはもうしているかもな。帝国情報局は権力で吐かせるだろうが、俺たち民間は良心的だ」


「分かった。まぁ事実だろう。深い意味はない。ないだろう。でも私にはどうしても許せないことが3つあるんだよ」セルナが言う。「1つは、私を裏切る者。2つ目は私の決めたルールに従わない者。そして3つ目は、私の仲間を裏切らせようとする者だ。カルラ」


「はいお姉様」


 カルラは4本の【マナアロー】で男を貫き殺した。


「わぁお」タッカーが感嘆の声を出す。「前から才能がありそうだと思ってたけど、君、今の時点で3星……いや4星魔法使いかい? 僕の弟子にならない?」



「なりません」とカルラ。


 そもそもカルラの実力はギフトによって底上げされたものだ。


「残念だなぁ、君なら僕を超えられそうなのに……」

「悪いけどカルラは私と一緒に帝都に戻る」


「いつ?」とタッカー。


「明日すぐにでも。なんせ私、第一皇子のお茶会に誘われてるんだよ。帰って色々と準備をしないとね」



2章も毎日更新します!


サブタイトルを分かりやすいものに変更しました。


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